196. 再戦
ふははははっ!
三途の川を渡りかけた気がするぜ!
一回死んだ気がしたが、どうやらオレは復活したらしい!
死すらも乗り越える男。
さすがはオレだ。
神に愛されている。
「ありがとな、マギサ」
あれ?
敬語抜けてたわ。
まあいっか。
もうなんかそういうのどうでもいい。
気にすることじゃない。
それよりもなんでオレは復活したんだ?
マギサが救ってくれたことだけは理解できた。
やはりマギサにこび売っといて良かったな!
ふははははっ!
「アーク様!」
マギサが叫び、抱きついてきた。
「良かった。本当に良かったです……」
「ああ」
オレはマギサを剥がすと、よっと立ち上がった。
「ヘルを倒しに行く」
逃げても良い。
あいつから逃げて、今まで通りの生活をすればいい。
貴族として豪遊し放題な生活に戻ってもいい。
それでもいいし、それこそが貴族だ。
ノブリス・オブリージュってやつだ。
でも、オレは嫌なんだ。
あいつに負けたままでいるだなんてオレがオレを許さん。
逃げたままってのはオレのプライドが許さん。
オレを殺したがったクソ野郎をぶっ殺しにいく。
そしてここにある財宝を全て奪ってやる!
ふははははっ!
オレは悪徳貴族だからな!
容赦はせんぞ?
「生きて……絶対に生きて帰ってきてください」
「はっ、当たり前だろう? 死んでも帰って来る」
あいつに会うとゾワッとする。
あの死の気配は気持ちが良いものではない。
だがオレはもう死を乗り越えた。
二度も死んで、蘇った男なんて世界中どこを探してもいないぜ?
死なんて怖くない。
ヘルなんて余裕で倒してやるぜ!
ふははははっ!
さあ、ヘルを倒して秘宝をゲットしにくぜ!
◇ ◇ ◇
王都では悪夢のような光景が広がっていた。
内戦によって死んだ者たちが復活し、魔物と成って守るべきはずであった市民たちに襲いかかっていく。
いまや内戦で敵対していた者たちが一緒になって魔物を倒している。
無限に湧いてくる魔物たちを前に兵士たちの疲労はピークに達しようとしていた。
そもそも、これまでも連戦で消耗していた兵士だ。
戦い続けるのにも限界がある。
さらに、死んだ兵士たちが魔物になることで兵士の士気を大きく下げていた。
終わりが見えない戦いに、彼らは精神的にも限界を迎えようとしていた。
「まだだ! まだくたばるでないぞ!」
第一王子の
しかし、些細なことですぐにでも瓦解してしまうような危険な状況にある。
「ワーッはっは! 戦いだ! 戦いだっ! 戦いだあぁァァ!」
トールだけはウキウキしながら魔物たちを奢っていく。
トールのような戦好きでない限りは、この状況を喜べる者はいない。
兵士の士気は下がり続ける一方。
と、そんなときだ。
「援軍だっ! 援軍がきたぞぉぉぉ!」
吉報が届けられた。
ようやくアーク軍が到着したのだった。
さらにアーク軍の士気は異様に高く、最初から魔物と戦う気満々だった。
というのも、アークから「敵は魔物だ」と言われていたのが大きかった。
加えて指揮を取っているランスロットが泰然自若としていた。
それもアーク軍の士気を高めるのに一役たっていた。
アーク軍の到着により、王都で戦っていた兵士たちの士気も復活する。
こうして王都は最悪の事態を防ぐことができた。
しかし、戦いが終わったわけではない。
さすがにアーク軍といえど戦い続けることはできず、戦いが長引けば総崩れする危険があった。
時間との勝負である。
諸悪の根源、つまりヘルを倒すまでこの地獄は続く。
鍵を握っているのは、やはりアークであった。
国のゆく末はアークに託されたのであった。
◇ ◇ ◇
オレはヘルのもとにたどり着いた。
「なぜ生きている……?」
ふんっ、驚いた顔をしてやがるな。
オレはガルム伯爵だぞ?
不可能を可能にする男なのだ!
ふははははっ!
「蘇ってきた。貴様を倒すためにな」
「無意味なことを……。ならば何度でも殺してやろう」
「やれるもんならやってみろ、クソ野郎」
今は不思議と力がみなぎっている。
死ぬ前よりも魔力が溢れている気がする。
なんでだ?
そうか、わかったぞ!
オレが特別だからだ!
オレは世界に愛されてるからな!
ふははははははっ!
「ヘルヘイム」
ヘルが魔法を放ってきた。
黒く暗い闇がやつを中心に膨れ上がり、オレに迫ってきた。
ふははははっ!
そんなのオレには効かんぞ!
「ニブルヘイム」
貴様を氷漬けにするときは近い!
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