100. ロストの確信
シャーフが奪ってきたものを見る。
どれもこれも、高級品だ。
だが、あまり使う気にはなれん。
やはり、あのフレイヤが使っていたものだからか?
そもそもオレは高級品に興味がない。
オレ自体が高級な人間だからな!
ふははははっ。
とりあえず、適当に部屋に放置しておくことにした。
そのあと、なぜかロストが大量の装飾品を大事そうに抱えてやってきた。
「アークくん、ありがとう。君のおかげでボクの目的は達せられたよ」
とか言ってた。
なるほど、嫌がらせはうまくいったようだ。
そんな笑顔でアクセサリーを持ってくるなんて、お主も悪よのぉ。
オレと一緒に悪徳貴族でもやるか?
「オレは何もやっていない。貴様が勝手にやったことだ」
まあ、オレは関与してないがな!
悪いのは全部、ロストですぜい?
ふははははっ。
「君ならそういうと思ってたよ。ほんとに謙虚だね」
オレが謙虚だと?
こいつは、目が節穴なのか?
まあいい。
「それで、アーク君。君は彼女らをもとに戻す方法を……いや、なんでもない」
彼女ら?
まさか、こいつ。
アクセサリーのことを彼女らと呼んでいるのか?
どれだけ愛着が湧いているんだ。
他人から盗んだものなのに。
というか、もとに戻すって何だ?
まさかアクセサリーが壊れたのか?
「もとに戻したいのか?」
「ああ」
なるほど。
すでに盗んできた物なのに、愛着湧きすぎだろ。
「もとに戻す方法か……」
「術者が死んでも魔法が残り続ける。現代の魔法技術では解呪できない」
やべー。
言ってることがわからん。
つまり、なんだ?
アクセサリーが壊れたのは誰かの魔法のせいってことか?
で、その魔法かけたやつが死んじゃったから、やべーってことか?
なるほど、なるほど。
理解できたぜ。
ていうか解呪か。
そういえばシャーリックの講義でも解呪がなんとかって言ってたな。
たしかオレが「万能な解呪魔法なんて存在しない。それなら全く新しい箱を用意すればいいだろ!」みたいなこと言ったな。
そしたらシャーリックから褒められたな。
ふはははっ!
こいつにも、オレの天才的なアイデアを教えてやろう!
特別だぞ?
「理論上、万能な解呪魔法は存在する」
ロストが黙ってオレを見る。
うん。
なるほどな。
この反応は知らんようだな。
まだまだのやつめ。
マウントを取ってやろうじゃないか!
「クローン……つまり、新しい箱を用意すれば良い」
うん。
クローンって表現はちょっと違うな。
まあでも、そういうことだ!
わかったか?
「はは。たしかに。新しい器を用意すれば万能な解呪魔法の完成だ。理論上は、ね。でも、それができたら誰も苦労しない」
「はっ。安心しろ。だったらオレが見つけてきてやるよ」
「……君が? できるのかい?」
「ああ。ちょうど今からバベルの塔に登るつもりだったからな」
たしか、バベルの塔は知恵の塔とも言われてる。
オレは99階まで登れるんだ。
アクセサリー直す程度の解呪魔法なんて余裕で見つけてきてやるぜ!
そしてマウント取りまくってやるぜ!
ふははははっ!
「ははっ。そうだね。君ならひょっとすると、本当に見つけてくるかもしれない」
はっ、当たり前だろう?
「たかがアクセサリーの修復だろう? オレならできる。任せておけ」
最悪、新しいアクセサリー買えばいいだろう。
なんたってオレは伯爵だからな!
アクセサリーの1つや2つ、余裕で買える!
領民共の血税でな!
ふはははっ!
新しい物を用意してやれば、文句もなかろう?
「ありがとう……。ありがとう、アーク君。本当に……」
どんだけ装飾品に愛着湧いてんだよ。
ビックリだわ。
それも
ロストはアクセサリーをオレに預けてきた。
とりあえず部屋に置いとくことにしといた。
◇ ◇ ◇
ロストはアークと別れてから、
アークならひょっとすると、本当に解呪方法を見つけてくるかもしれない。
森の一族の呪いを解いてくれるかもしれない。
いや、森の一族だけではない。
ルサールカが魂を抜き取った人たちは森の一族以外にも大勢いる。
ルサールカを倒して魔法が解けるなら良かったが、そんなに簡単な話ではなかった。
もしかすると、ルサールカなら解呪方法を知っていたのかもしれない。
しかし、ルサールカはもういない。
ルサールカの扱う魔法は、精霊が何百年もかけて編み出した魔法だ。
さらに精霊魔法は普通の魔法と違って、成り立ちも特殊だ。
現代の魔法技術では解呪不可能な魔法なのだ。
もしかすると、ルサールカ自身でも不可能だったのかもしれない。
もうルサールカはいないから、考えても仕方のないことだが……。
「でも、アーク君なら本当にやりかねないね」
アークなら本当に解呪の方法を見つけるかもしれない。
新しい箱を用意するのか、はたまた神頼みでもするのか。
どんな方法かはわからない。
それでも、アークができると言ったのだ。
そうロストは確信している。
アークはきっと、すべてを知った上で「できる」と言ったはずだ。
ロストはアークの言葉を信じようと思った。
「君に、期待したい。ボクは。また彼らに会えると思って良いんだよね?」
ロストは祈るようにバベルの塔を見つめた。
もちろん、アークは何も知らない。
ロストの祈りがアークに届くことは絶対にない。
ロストはアークに対して、バベルの塔よりも高い信頼感を抱いている。
だが、もしアークの本当の姿を知ってしまったら、信頼が崩れ落ちてしまうだろう。
知らぬが仏というやつだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます