63. 剣聖トール
ふぅ。
バレットを干支の一員にしておいた。
ちょうど酉が空いていたからな。
干支はキメラ以外でも問題ないだろうしな!
ふははは!
金と権力があればなんでもできる!
やはり貴族は最高だぜ!
「ガルム伯爵。少しお時間よろしいですか?」
王子に呼ばれた。
くそっ!
油断していた。
この街にはいまオレよりも偉いやつらがいる。
マギサと王子とヴェニス公だ。
まさか王子から声をかけられるとは思っておらず、油断していた。
ていうか、パーティーのとき話合わなかっただろ?
なんで話しかけに来るんだよ。
嫌がらせなのか?
クソ野郎だな。
騎士団の駐屯地に呼び出された。
面倒だ。
オレは観光に来たのだ!
偉いやつに会うなど苦痛以外の何物でもない!
が……くそっ。
さすがに断れん。
強制参加なのは間違いない。
面倒だが駐屯地に向かった。
「はあ……。なんで赤髪がいるんだよ」
赤髪野郎もいやがった。
あいつ、普通に騎士団溶け込んでやがる。
なにしてんだよ。
「おー。貴殿がアーク殿か!」
騎士団の中でも一際でかい女が話しかけてきた。
2メートルはゆうに超えている。
赤髪パーマ女だ。
スルトが燃えるような赤髪なのに対し、こいつはくさんだ赤髪だ。
「私はトールである!」
あー、うるさいやつだ。
オレの嫌いなタイプ。
「ああ。よろしく」
「うむ! よろしく頼む!」
「それで今日はどんな用なんだ?」
「知らん!」
ガーッハッハと笑う女。
やっぱり、こいつは苦手だ。
直感でわかる。
オレの権力が通じなさそうな相手だと。
「申し訳ありません。ガルム伯爵。クロノス殿下はもうすぐ到着なされます」
「そうか」
騎士団の一人が教えてくれた。
オレを待たせやがってと、文句を言いたいところだが……。
まあいい。
「アーク。ちょっといいか?」
「なんだ?」
赤髪野郎のスルトが話しかけてきた。
「稽古に付き合ってくれ」
「は?」
なんでお前に付き合わねばならん。
ちらっと他のやつらを見る。
騎士団に付き合ってもらえばいいだろ?
まあさすがに学生の相手をするほど暇じゃないか。
それなら、オレだって暇じゃないが。
そもそもオレは伯爵だぞ?
平民の訓練など付き合っておれるか、馬鹿野郎。
まあいい。
「面倒だから一瞬で終わらせるが良いが?」
「構わない」
なるほど。
「フハーッハッハ! 模擬戦か! なら儂も参戦するぞ!」
もじゃもじゃ女が乱入してきた。
ヒゲモジャ野郎が大暴れしたせいで、スルトが一瞬で倒された。
弱すぎるだろ。
はあ……モジャ女と一対一かよ。
「おいモジャ。目障りだ」
「わっははっー! ならば倒してみせろ! 英雄よ!」
「はっ! 英雄なんてガラじゃないが……。誤って息の根を止めてしまっても文句は言うなよ?」
「がーっはっは! 戦いで死ぬなら本望というものよ! では、全力で行くとしよう!」
モジャ女の体がバチバチと電気を帯び始めた。
「――――」
モジャ女が瞬間移動したかのように、オレの前に現れた。
と、そのときだ。
「やめい!」
駐屯地に王子の声が響く。
「街を崩壊させるつもりか、馬鹿者が」
王子がモジャ女の前にまで行き、一喝した。
あーあ、怒られてやんの。
モジャ女め。
◇ ◇ ◇
剣聖トール。
口調は年寄りくさいが、まだ20代と若く、美しい女性だ。
そして雷神とも呼ばれる女で、原作にも登場するキャラクターだ。
騎士団最強の人物であり、北神騎士団の
その実力は、”理不尽”と呼ばれるほどである。
身体能力のみで、騎士を圧倒する実力を持っている。
そこに
しかし、トールの理不尽さは、そこからさらにもう一段階ギアを上げられることだ。
雷魔法により、反射神経を強化することで大幅に反射神経を上げることができる。
だが、最強にもかかわらず、トールは副団長にとどまっている。
その理由は、2つ挙げられる。
1つ目はトールが女であることだ。
騎士団というのは男社会であり、その中でいくら実力があろうとも女では出世が難しい。
そして2つ目が彼女の性格にある。
トールは自由気ままな騎士であり、その行動から団長を任せられないと判断されている。
さらに剣士であるにも関わらず、なまくらの剣しか使わない。
トールは常日頃から「棒ならなんでもいい」と言っており、それが原因で騎士から嫌われている。
それにも関わらず圧倒的なまでも理不尽で暴力的な才能は、団員が嫉妬を抱くには十分であった。
それが女であればなおさら騎士たちの心象は良くないだろう。
つまり、トールは人望が全くないのである。
アークの配下であるランスロットとは真逆のような存在だ。
ランスロットの場合、件の才能は皆無だが部下からは信頼を得られている。
と、余談はさておき。
この剣聖であるが、実は本編で早々に死亡するキャラクターである。
圧倒的な強さを持っているものの、闇の手の策略によって殺されてしまう。
そしてトールが死亡するのは、このヴェニスである。
剣聖すらも葬ってしまう策略が走っている。
果たして観光に来ただけのアークは無事生き残れるのだろうか?
それは誰にもわからない。
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