51. 大罪
闇の手の者たち。
その中でも特別な力を持つ者たちはナンバーズと呼ばれている。
さらにその中でもさらに上位の七人が存在する。
序列七位以上。
彼らは大罪と呼ばれている。
首領ヘルから神の力を授かっている。
神の力は魔法とは別の原理が働いており、詠唱や術式が必要なく、その上で強力な力を持つ。
彼らの使命はヘルに死を届けることだ。
原作では、多くのキャラクターが大罪に殺されている。
そんな大罪たちは、普段はめったに顔を合わせることがない。
しかし、
「んまー! 憤怒ちゃん。今日も眉間に皺が寄ってるわよ? 皺は美容に大敵よん」
暴食と憤怒が会っていた。
「黙れ。貴様は図体同様、主張がうるさいから敵わん」
「もう~。ひどいわね~」
暴食は3メートルを超える巨漢の女である。
それに対し、憤怒は一般的な成人男性と同じ身長であり、憤怒からすれば見下されているようにも感じるのだ。
「私のようなレディーに向かって身長聞いちゃダメよ。間違って食べちゃうわ」
「レディーとは面白い冗談だ」
「あらら? いいのかしら? 本当に
暴食がどすの利いた声を出す。
「やれるものならやってみるがいい」
「ふふっ。冗談よ。あなた、特別にまずそうだもの。さすがに食べる気にならないわ」
憤怒は鼻を鳴らす。
「ふんっ。それより依頼だ」
「誰からかしらぁ?」
「俺たちに命令できるのはあの方しかいないだろう」
「うふふ。聞いてみただけよん」
暴食が茶化すように憤怒にウィンクした。
憤怒は無視して笑う。
「ヴェニスを落とす」
「へぇ」
暴食は頷くものの、あまり関心をいだいていないようだ。
そもそも、大罪たちは誰かに命令され動くのを嫌う。
たとえそれがヘルからの指示であろうと。
「油断するなよ、暴食。今回は厄介な相手も来るらしい」
「あら? 誰かしら?」
憤怒は暴食に写真を見せる。
アークの顔写真だ。
「アーク・ノーヤダーマ。こいつはかなり厄介だ。油断すると
「うふふ。それは楽しみだわぁ」
写真の下には
暴食は写真を
「この子、大好物だわ」
◇ ◇ ◇
原作では、もちろんアークは
それもそのはずで、アークは闇の手の一員でもあったのだ。
しかし、この世界でのアークは、彼の意思とは関係なく、常に闇の手の邪魔をし続けてきた。
実際にアークによって潰された拠点は数しれず。
いくつかの計画も潰された。
味方陣営のみならず敵陣営からもアークの名前は広がっているのだった。
原作は壊れ、徐々にアークを中心とした物語へと変わり始めていた。
◇ ◇ ◇
明日からヴェニス観光だ。
やはり観光はワクワクするな。
カミュラとラトゥに調べさせてから、ヴェニスについての予習は完璧だ。
だがあいつら、ちょくちょく変な情報を入れてきやがった。
カミュラの資料には”闇の手”が関わっているという記述が多かった。
「アーク様。やはりあなたの読み通り、闇の手の者たちがヴェニスに向けて動いているようです」
なんてことをカミュラが言ってきやがった。
いや、いまはそういう情報いらんから。
今でもオレの命令を忠実に守ってくれてるのは感心する。
お遊び部隊とはいえ、指としての仕事を全うしてくれているのはありがたい。
だが、オレは普通にヴェニスのことが知りたかっただけだ。
まあ面白かったから放っておいたが。
もちろん、資料は軽く目を通した。
内容はほとんどわからんかったがな!
頑張ったことは褒めてやろう!
「ご苦労」
とだけは言っておいた。
ラトゥの資料は面白かった。
ヴェニスの歴史。
ヴェニスはもともと古代文明人の土地だったらしい。
それをヴェニス人が奪ったとされる。
ヴェニス人は古代文明人から奪った
しかし、未だに使えない
パンドラの箱と呼ばれる
と、大まかな歴史はこんな感じだ。
なかなかに面白い話だった。
「アーク様。ヴェニスには深い闇があるように感じました。どうかお気をつけて」
とラトゥが言ってきた。
まあ前世でも観光土地ってのはスリとか詐欺とかの軽犯罪があるって聞くもんな。
だが、そんなに気にするほどでもないだろう?
オレには権力も権威も金も魔法もあるしな。
「心配無用だ。何があろうと、オレの障害にはなりえん。そもそも小悪党にビビるほどオレは小さくはないぞ?」
「
ふっ、小悪党など灰にしてやろう。
それにしても貴族というのは最高だな。
前世では旅行行くのにコスパ重視で考えていたが、この世界なら金を気にする必要がない。
ふははは!
この世は金で買えないものはない!
それに鉱山という金の山のおかげで、ガッポガポ稼がせてもらっている。
ウェポン商会も大量の魔石を買ってくれるしな。
さすがは悪徳商会。
やばいルートで武器を売っているんだろう。
ふははははは!
良い取引相手だぜ!
オレは取引相手にも恵まれたようだ!
ヴェニスでは散財してくるつもりだ。
カジノなんかもあるらしい。
前世ではカジノなんか行ったことがなかった。
クソ真面目な会社員だったから、パチンコすらしていなかった。
だが、もうオレは真面目に生きるのを卒業した。
カジノでもなんでも好きなように金を使ってやる!
今回の旅では、お供には干支の
フントはいつもピエロみたいな仮面つけてる。
たしかカミュラが調べてくれた資料では、ヴェニスではピエロのような男が出没するらしい。
つまり、今の流行りはピエロというわけだ。
よし、それならフントを連れて行こう、という流れだ。
それにヴェニスには仮面の土産がたくさん売っている。
「フント。貴様も来い。ヴェニスには貴様の望むものがあるだろう」
フントは、尻尾をパタパタと振りながら喜んでいた。
やはり、フントは仮面が欲しいようだ。
オレが観光に行くといったら、妹のエリザベートもついてくると言ってきやがった。
まあ別に構わんが、妹の相手をしている暇はない。
オレには観光を楽しむという大義があるのだからな!
さあ、ヴェニスで遊び尽くしてやろう!
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