10. 魔鉱山

「さすがはアーク様だ」


 ランパードはのどかなガルム領を見て感慨深く頷く。


 少し前までは考えられなかった光景だ。


 たった数年で領地は大きく発展した。


 まだまだ発展登場であるあるものの、先代の治めていたときのガルム領とは比べ物にならないほどの進歩だった。


 特に領民を困らしていたのが山賊だ。


 以前までガルム領の兵士の質は低く、山賊が好き放題暴れていた。


 領民からしたら大きな悩みの種となっていた。


 アークの軍改革によって軍の質は上がったが、並行して軍縮も行っていたために依然として山賊が暴れまわっている状況が続いていた。


 それをアーク自らが危険を顧みずに山賊討伐を行ったことで、山賊はその数を大きく減らした。


 またアークの山賊刈りは苛烈を極めており、山賊は逃げるようにガルム領から去っていった。


 今では山賊を見かけることがほとんどなくなった。


 さらに領民からのアークの評価はうなぎ登りに上昇した。


 これまでの領地発展も相まって、アークは領民からまるで英雄のような存在として崇められるようになった。


 またアークの活躍を見た兵士たちのやる気があがり、士気が向上するとともに兵力も充実した。


「鳶が鷹を生む、とはこのことですな」


 アークがガルム伯爵になってから、領地は発展を続けている。


 ランパードは年甲斐もなく、これからの未来に胸を弾ませた。


 余談だが、アークの討伐した賊の中には闇の手の者もいた。


 アークは図らずも闇の手の拠点を潰していたのだ。


 さらに余談だが、闇の手の者は魔鉱山を拠点としていた。


 魔鉱山は闇の手の者たちが資金源にしていたのだ。


 山賊を潰せただけでなく、魔鉱山まで得られたアークは大きな資金源を得ることができた。


 ちなみにだが、この鉱山で見つけられる赤い魔石が主人公を強化するキーアイテムになる。


 原作では、主人公が物語の中盤でガルム領に訪れ手に入れることになるのだが、この世界ではアークが手にすることになった。


 と、それはさておき。


 今までにアーク――正確にはランパードだが――の実施してきた領地改革は、出血を抑えることがメインだった。


 無駄なコストを抑え、余剰資金を投資に回したいたものの、肝心の資金源がなかったために領地改革は難航していた。


 しかし魔鉱山の発見によって大きな資金源を得たガルム領は、今後目覚ましい発展をしていくこととなる。


 原作開始時には、荒れ果てた状態で闇の手の者が蔓延っていたガルム領だが、アークの介入によってその運命は大きく変わろうとしていた。


 こうしてアークの介入のせいで原作シナリオが少しずつ変わっていくのであった。


◇ ◇ ◇


 鉱山見つけたら、あくどい奴が近づいてきた。


 顔がいかつくて額に傷があり、如何にも悪党って感じのやつだ。


 武器商人らしい。


 武器商人ってたしかあれだよな。


 死の商人ってやつだよな?


 つまり悪い奴だ!


 ふむふむ。


 これは使えるな。


 こいつにオレの魔鉱山から採れる魔石を売りさばかせてやろう。


 もちろん利益はガッポガポもらうがな!


 ふはははは!


 他にもオレと取引したいってやつらは来やがった。


 どいつもこいつも真面目そうな奴らだった。


 高級な服を来て、見るからに誠実そうなやつらだ。


 だが、ダメだな。


 そんな真っ当な取引では稼げない。


 だからオレは一番悪そうな男と取引することにした。


「貴様の商会に優先的に魔石を売ってやろう」


「ヒッヒッヒ。ありがとうございます。旦那」


 悪徳商人が悪い笑みを浮かべた。


 きっとオレも同じような顔をしているのだろう。


 稼がせてもらうぜ?


 武器をたくさん売りさばいてオレを金持ちにさせてくれ!


 ふはははは!


◇ ◇ ◇


 アークに悪徳商人と言われた男の名は、タマギレ・ウェポン。


 ウェポン商会のトップだ。


 ウェポン商会は原作にもよく登場してくる。


 主人公たちに武器を売ったり、逆に主人公たちから素材を買ったりする組織だ。


 このウェポン商会だが、物語に大きく関係してくる。


 というのも、この時代は魔物が大量発生しており、武器の需要が日に日に高まっているからだ。


 今後さらに武器の需要が高まることが予測される中、魔石不足が問題となっていた。


 ウェポン商会にとって突然出てきた鉱山というのは、金の山同然だった。


 噂を聞きつけたウェポンはすぐさまアークのもとに向かい、取引を成立させた。


 ただし、アークにとっても価値のある取引だった。


 ウェポンは拙速を重視していたため、どちらかというとアークにとって有利な条件で取引を持ちかけていたのだ。


 また、ここ数年で少しはマシになったガルム領だが、まだまだ商人たちからしたら旨味のない土地である。


 今後またいつ荒れるかもわからない。


 そんな状態でアークと取引をしようという者はほとんどいなかった。


 いたとしても、本物の・・・・悪徳商人だ。


 実際、アークに寄ってきた商人のうち、ウェポン以外は、


「どうせ商売も知らん餓鬼だ。搾り取ってやろう」


 と考えてる連中だった。


 そういうやつらに限って、真面目そうで人が良さそうな顔をしている。


 悪い奴らというのは、むしろ悪くなさそう見た目をしているものなのだ。


 多くの大外れがある中で、アークはウェポン商会という大当たりを引いたのだった。


 こうしてアークは、無自覚にも良い取引条件と取引相手を得たのであった。


 そして、ここで得られた資金をもとに、ガルム領は今後ますます発展していくのであった。

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