92話 華実「夜、楽しみだね?」
浜辺には通常の観光客も居る。そこへ俺たちは水着を着て降りていった。今日は撮影のスケジュールは無い。
観光客が居るためカメラの持ち込みも禁止だ。男の場合はスマホを持って撮影の動作をするだけで、しょっぴかれるだろう。女性は自撮りなら、なんとなく許される風潮だ。
暑い太陽光が照りつける。
ホテルでどうぞと割り当てられたパラソルがあるエリアに荷物を持ち込む。持ち込むと言っても、日焼け止めなどの小物ぐらいだ。
「ほら、海に行くよ!」
恋人が俺の手を取る。小柄だがしっかりと女性の体つきをしている
せんりと
「
「部長~自分だけズルくありませんか?」
「むぅ、恋人を誘って何か悪いのかな?」
「写真部の~、みーんーなーで、旅行に来てますよね?」
「井場ちゃんはしっかりものだね」
「ふふふ、
「確かに
「……みんな可愛いからそりゃ不安ですよ」
「そうだよね、君の物を取られたくないよね」
「あははは」
硬い笑い声しか出せなかった。笑みで誤魔化そうとした。
確かに、自分のモノではないが、彼女たちが他の男達を優先する姿を見せられると、心がズキッと痛むだろう。
……なんて自分自身がみっともない人間なのか、度々考えてしまう。
だけど、そんな自分を、彼女たちは笑顔で見つめている。笑ってごまかせることではなく、俺はしっかりと答えざるをえなかった。
きっと俺が手放しても良いとあけすけに言うと、せんりも
「写真部の仲間だから、みんなには離れてほしくないですね。可愛いみんな好きなので。
「……うーん、ひどい男だね。ま、人がいるビーチでは撮影は禁止だから! 遊ぼうか!」
φ
時間的には夕方となった時間、徐々に浜辺から人がはけていく。俺たちも海で遊ぶのに満足しつつ、近くに設置されているパラソルの下で戻る前に一休憩をしていた。
せんりと
「みなさんご機嫌よう」
日傘を差して、優雅に砂浜をサンダルで踏んで歩く。ハーフアップの髪が夏の風に揺れていた。ワンピースはうっすらと淡い青色に染められており、夏らしく爽やかで美しい。
「
俺は立ち上がり、彼女に近づく。
「
「こちらこそ、撮影旅行の場所も悩んでたから、
「そうですの。
「いやいや、こちらこそ、想像よりも素敵な場所にかなり都合を付けてもらってありがとう」
しぶしぶと言った具合で
「夕食は別邸のスイートルーム内にあるキッチンを使い自分たちで作るでも、ホテルのレストランでもどちらでもご利用くださいですの。
「
「申し訳有りませんの。
「あー、それは大変そうだね」
「そうですが、
「
「そうですわね。けれど、夜はそちらへお邪魔いたしますから」
「うぇ!? な、なんで?」
「申し訳有りませんの。事前に話しがいってませんでした? 私の利用する部屋に余裕があるので皆さんを呼んだ関係で、お話した値段で呼べてますの」
「いや、そういうのは申し訳ないよね。だったら、別の」
「申し訳有りませんの。もうホテルも他も空きがなくて」
「そ、そう。……わざと?」
「どうかしまして?」
「いいや、何でも無いよ。……こちらが相部屋にしてもらった関係というなら、まあ、大人しく利用させてもらうよ。でも、
「まあ、そんな事言ったら、皆さんがいらっしゃるから大丈夫でしょう?
「
「ええ、わかりましたの。そちらの、」
「
ふんっと手短に挨拶するだけの
「ああ、
「
「
「うぅぅぅぅ、そうだけど!」
「ほらね」
「まあ、そうなんですのね。嫌われているのかと思って驚きました」
「なれるまではこんな感じだから」
「そうであれば、
「違う!」
ふんっとそっぽを向いてしまった
「申し訳ございません。また次の集まりの準備をしないとダメですので、この辺で。本当に挨拶だけになってしまい申し訳ありませんの」
「ああ、いや、
「それでは夜、またお話しましょうね」
「
「ええ!」
「
「なんでもないよ。もう少ししたら日もどんどん傾くし、部屋に戻ろうか」
「はい、楽しかったですね。みんな可愛いかったし」
「もう!
「言い方、ひどい言い方をするのは辞めてください」
「え、
「私はそのつもりで着てきたので、
「井場ちゃんもそういう冗談辞めるように~」
「はーい。
「あ、あ、待ってってば」
砂浜を荷物を持ってすいすいと歩き出した俺たちの後を
彼女たちが水着になるのも、俺が撮影したいと言った場合だろう。俺は一応水着姿を撮影したいとは言っていないが、
「夜、楽しみだね?」
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