枯れた紫陽花は縋り
プロローグ 枯れた紫陽花は縋り
その日、私は見てしまった。間抜けな声が私の口から漏れ出してしまう。
「はえ?」
咄嗟に口を両手で塞いだ。隠れなくてもいいはずなのに、咄嗟に体を廊下の柱の陰に隠す。目の前の光景が信じられない。学校の廊下でなんてことをしているんだろう。
着物を着込んだ美しい少女が、激しく彼と舌を絡めてキスをしている。私はその光景が理解できなくて、手で塞いでも口から声が漏れてしまう。
「はえ?」
どういうことだろう。どうしてこんなことが起きてるんだろう。
彼女と彼はどうしてこんな事をしているんだ。私はわからないまま、目の前の光景を見守るしか無くて、彼らはこそこそ何事か話して、そのまま戻っていってしまった。
どれぐらい時間が立ったのか分からない。私は、そのまま不安を無理やり心の奥底に誤魔化すように押し込んだ。
「……行かなきゃ」
自分も行ってやることがある。私は彼らが向かった先と同じ場所に向かった。
φ
着物が畳の上に落ちる。本当はもっと丁寧に扱わないといけないけど、私は彼が視線をそむけた瞬間、チャンスが来たのだと思って立ち止まれなかった。
目の前には大きな姿見鏡がある。着物の着付けのために用意された物だ。
長襦袢をはらりと落として、さらに下着も脱ぐ。真っ白な下着が、さらりと着物の上に落ちた。
彼の方へ身体を向ける。正面を向く。手は、羞恥が襲うが、決して隠さない。
「着替えられた?」
「はい、こっちを見ても大丈夫です……」
制服を着ると言ったのに、嘘をついてそう応えた。心臓が緊張でドキドキと激しく鼓動する。彼はどう思うだろう。思い出すのは彼に激しく求められたあの動きだ。私を蕩けさせる彼を私は求めてる。
「どう、ですか?」
立ち上がり、私の方を振り返った彼がはっきりと私の裸体を捉えて、硬直した。でも、彼の目が背けること無く、私を見てしまうのを感じられる。求められてる。その喜びを私は彼の視線という形で全身で感じていた。
「なん、で」
「綺麗、ですか?」
私の問に彼は――。
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第二部プロローグ的な何か
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