第49話1 鳳蝶とラブホ
土曜日の朝だ。俺は今日もバイトに張り切る唯彩とそんな元気な唯彩に喜ぶコンタロウとのジョギングを終えて、早めに家を出る。そんなに早くバイトなの? と家族に聞かれたが、単純に友達と会ってくると答えた。
電車は遅延もなく淡々と俺を繁華街のある駅へと運ぶ。
改札をくぐり、彼女との待ち合わせ場所へ向かった。
これまで会ってきた
黒と深藍で背中と肩が出てボディラインがしっかり出たドレスのようなワンピースに、初夏の季節の気温対策も兼ねた透け感のあるレースのショート丈カーディガンを羽織っている。
色っぽすぎる格好をした
これが例えば夕方であれば、どこか高級なディナーなどに参加するのだろうという考えも湧くだろうが、比較的朝の早い時間に待ち合わせに立つ姿は年齢とも似つかわしくなく、はっきり言って場違いだった。
俺があっけに取られていると、俺の姿に気づいた
「おはようございます、尚順さん」
「ああ、おはよう。
「その、偶にはこのような格好でもどうかと思いまして」
「そう、なんだ。どうして?」
「あの、男の方はこういうのが好きと雑誌を読んでいたらお見かけしたので、尚順さんの好みをしりたくてお試し、ですの」
恥ずかしげにそんなことをいう
俺がそうなんだと言って、どこに行くべきか少し考えると、
「尚順さん、どうですか?」
「ごめん、綺麗すぎて口に出せなかったんだ」
「よかったですわ!」
「でも、これまでの私服も可愛かったよ」
「ふふ、ありがとうございますの。そう言われると、これからも尚順さんと会う時の服装、たくさん迷ってしまいそうですわね」
カーディガンを羽織っているとはいえ、透け感のある物であり
「とりあえずどこか入ろうか。あまり
「まあ! ふふ、じゃあ、こちらへ」
ぐいっと手が引かれる。無理やり力で振り払えば引きはがせるが、
慣れた道だった。
違う。
「どちらの部屋が良いでしょうか」
「ああ、どれでも良いんじゃないかな。
「そうですか? それではこちらで」
値段が一番高く、一番広く大きい部屋を選び彼女がお金を払えば自動でカードキーが吐き出される。
「こちらですわね」
二人きりのエレベータ内は無言だった。
部屋に入ると、見慣れた光景が俺を出迎えた。備え付けのソファやベッドの寝具などが白と黒を基調にしており高級感を演出している。
「こんな感じですのね」
問題はこの一室のように風呂の設備などを除けば、この部屋よりも
彼女が興味深そうに一室をきょろきょろと探し回るのを一緒に付き従い、満足したあたりで彼女は時間を確認した。ベッドをポフポフと
「でも、少々品質が物足りませんわ」
「ラブホテルの内装で
「ふふ、尚順さんは私の部屋のベッドの感触、知ってらっしゃるものね」
「……部屋の香りも
逃げるように前に部屋に連れ込まれた時の部屋の印象へと話題をかえるが、それでも
「そうなんですの。前はもっとさっぱりした香りの物が多かったんですけれど、……その、男性は甘い香りの方が女性らしさを感じてもらえると見かけて」
「ああ、そうかもしれないね」
嬉しそうに
「ああ、いけませんわ。少し目新しくて興奮しすぎたみたいですの」
「
「尚順さん、ありがとうございます」
ラブホに来た目的を鳳蝶は時間を浪費すること無くしっかり思い出した。ソファの近くにあった棚に
「尚順さん、こんなところに来たらすることは一つですの」
「……
唇が触れ合って、甘い香りがする。彼女は朝に会う時には探るように香水を変えながら、俺に近づいていた。バレてしまったようだ。好きな香りだった。
まだ、一番好きな香りがバレていなくてよかった。
舌が情熱的に絡む。彼女の舌が俺を襲う。
顔を興奮で赤くした彼女が俺を見つめていた。ゆっくりと唇が離れる。
パサリと服が落ちた。
「この下着、どうですか?」
また見たことがない下着だ。いつもは青や緑など、装飾はあるが視覚的におとなしい色を選んでいる
今日の朝は下着報告が無かったが、きっと俺をドキドキさせるためだろう。気づけばよかった。そうすれば心の覚悟もしっかり出来ていた。
「可愛いよ、
「喜んでもらえて、嬉しいですの」
「また、撮ってください。貴方の思い出に、してほしいですの」
下着姿の美しいお嬢様を写真に残す。これから貴方に身を捧げますと宣言するような表情をした
下着も完全に取り払われ、真っ白で研ぎ澄まされた乱れもない
「……また、
「ふふ、尚順さんに見てもらうんですもの」
自撮りだけでは分からなかったが、テスト期間前に見た彼女の体よりもさらに綺麗になっていた。
「ねぇ、尚順さん、してほしいですの」
俺は
こんな風に一度してほしいですのと、長文で長々と文章が送られてきたことがあった。
俺はそのメッセージを読んだが、返答はできなかった。
してあげると肯定したら、恋人がいるのに女友達にそんな内容をすると宣言することになってしまって、その関係はおかしい。
出来ないよと言ったら、泣いて通話が来る。俺には無理だ……。どうして無理なのか俺にはまだ分かっていなかった。
だが、ちゃんと読んで覚えて実践できたせいで、
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