第28話 二股疑惑
「もっとお声をかけるべきではありませんの?」
そんな事を俺に相談した
確かにクラス内だけで見ると一人に見えてしまうかもしれないが、体育でもハブられているわけでもなく、
「彼はそんな孤立しているというふうには見えないから、大丈夫だよ」
「そうですか。良かったですの」
俺が他のクラスメイトと話している姿を見ていることなどを語ると、
そして
「まさか私が男子とプリクラを撮ることになるとは」
「はあ、気にしすぎですよ。ゲーセンに遊びに着たらたいてい男女混じりで友達と撮ったりが多いですし」
そんな事を言うが、俺の経験は中学時代の物だ。そして、中学時代の俺が男女混じりになるのは、
「……まるで普通の女子学生みたいだ」
俺が撮った何気ない写真。そして、一緒にスマホで撮った写真を見て、彼女がそんな事を言ったので、俺は笑ってしまった。高校三年生が何をもってまるで普通の女子学生だと感じたのか、面白かった。
俺はたまに場所の選択をミスしながらも、少しでも彼女と仲良くできるように、仲良くできる写真が残せるように努めていた。
俺は順調に高校生として、過ごしていた。
「お前、大丈夫か?」
俺が
「ちょっと今日の午前にあった体育に頑張りすぎて疲れたかな」
「そういうことじゃなくて、折川さ、今クラスと茶道部女子から結構、厳しく話を聞かれるぞ」
「え! 俺、何かしたか?」
「……いや、お前、女子たちから
「えぇ、何だそれ」
「自覚なしかよ。お前、
「デート? いや、バイト前にお茶しませんかと言われて会ってるだけだな」
「いやまあ、それが、な?
「うーん、でも放出を誘いたくても放出はバスケ部があるし、彼女持ちを彼女無しで女子と一緒に連れ回すとかちょっと無理だろ。
それに土日会うのもお茶を飲んで雑談軽くするぐらいだ」
「はは、たしかに俺も彼女いるのに流石にそういうの呼ばれるのはちょっとな。でも、その後は?」
「いや、その後って。俺はバイトがすぐ後に開始するんだ。
「ああ、もう、お互いそういうのが距離感なのな。分かった、なるほどな。じゃあ、噂の三年生の丸宮先輩とは」
「あれは写真部の部長だから俺が少しでも部活仲間から友人になれるよう努力してるだけだ」
「ってことは、丸宮先輩が本命ってことなのか?」
「本命って」
あまりにも率直に答えるには重い言葉が出てきて、俺は口を閉じた。放出との距離感の相手にどんな内容であれ答えるのに躊躇する内容だ。
俺の態度を見た放出は、そっかそっかと少しだけ安心したような反応をして、俺の肩を叩く。
「いやまぁ、丸宮先輩が本命なら、
「まあ、友人としての距離で勘違いされないようにしているつもりだけど」
「あ~、まあ。うちのクラスにもいるだろ、
「デートって、あれはほとんど写真部活動だな。他の先輩が本当に居てくれなくて……」
「まあまあ。それに校内デートとか揶揄される割には、困ってる人がいたら先輩放り出して助けてるんだろ?」
「助けるって行っても、一年の俺にできるのは物を運ぶのを手伝うぐらいだよ。写真部で校内を回ってると、文化部系統の部活で良く困ってるのを見かけるのは」
「ははっ。そいうことにしてやるよ。まあ、
「私がどうかされましたか?」
ちょうどそこへ
「
「おい! お前!」
放出がどう答えようか迷っている時に、たった二週間程度前だというのにいやに懐かしい顔の男子学生が強い声を上げて俺たちに近寄ってきた。
確か、
「棚田さんだっけ?」
「そうだ、折川! お前、聞いたぞ!」
「棚田さん、尚順さんに何の御用ですの?」
「
「ですから一体」
「折川! お前、
「いきなり言いがかりはやめてくれ」
俺がきっぱりと突っぱねると、棚田が一瞬怯む。だが、キッと睨み返して、殊更大きな声を上げて廊下や近くの一年の教室にも聞こえるように響かせる。
「お前、この前の土曜日の朝に
「おやめなさい!」
俺はため息が出た。棚田は
だって、
「棚田さん、ここはそういう話をする場ではない。棚田さんがどんな気持ちだろうと勝手だが、今、君が話そうとする内容は
「お前! 図々しいことを!」
「君は
「なっ! どうしてそんな事を。
「尚順さんはどうしてそのような事を?」
どうして知っているかの質問に俺は沈黙して答えず。
彼の肩に俺の手を置いて、百八十度向きを変えさせてぐいぐいと押す。棚田は俺が急に冷たくしかもそんな事を行ったことに驚愕したような表情を向けた。しかし、棚田は中学の頃の人間と比べれば遥かに紳士だった。ここで逆ギレされない点で、だ。
懐かしい作業だった。
『尚順、面倒くさい、置いてきて』
『ああ、ちょっと行ってくる』
高校で変わろうとしているのに、
思い出された内容に、俺はひどくみっともない気持ちになった。
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