第66話 万能薬3


 ワイバーンで北に進んでいる俺たちはダンジョンがあると言う近くに降り立ってダンジョンを探した。

「ここじゃない?」

「草ボーボーで入り口が隠れてるよ」

「だな、ここがダンジョンっぽいね」

 草を切り払い中に入って行くとモンスターだらけだった。

 これモンスターパレード寸前だったんじゃ無いか?

「数が多すぎるな!」

「いくぞ!ディストラクション」

「フェアリーレイン」

「ブリザード」

 まだまだ湧いてくるモンスターに辟易しながらも倒し続けるとようやく落ち着いてきた。

 二時間くらい動きっぱなしだったのでみんなヘトヘトだ。

「これ暴走寸前だったよね?」

「だな、ここの管理してないんだろうな」

「あれなら無くしていいんじゃ無い?」

「そうするか」


 一週間かけてダンジョンの最奥にきたが。

「ここもモンスターでいっぱいかよ!」

「しかも強いのばっかだし!」

 それでもねばって倒して行くと扉があった。扉を開けるとエンシェントドラゴン。

「ディストラクション」

一撃で倒せるモンスターだ。

 塵になると俺らじゃ使えない武器だった。

 宝箱には金貨とジョブオーブがあり、ジョブは戦士だった。ジャンケンして俺が取ることになった。

 ダンジョンコアに触るとマスター登録をして消そうとすると中のモンスターは外に出てくる仕組みのようだったからそのままにしておいた。

 ジョブオーブだけ出る様にして400階層から戦士で始める。ここでは勇者冬夜がエンシェントドラゴンを切って捨てた。星10の剣と宝箱にはジョブオーブが二つ、賢者と聖女だった。

 聖女は千夏が欲しがったので上げ、賢者はエマが貰っていった。


 外に出てワイバーンで次の街を目指すとまたナインクラフトをしているおっさんがいた。

 近くで降りて話しかけると、

「なんじゃ?わしはなんもしとらんぞ?」

「いや、ナインクラフトでしょ?」

「なんだお前らもアプリの持ち主か」

 箱型の家に案内されてお茶を出してくれた。

「わしはクラーク、ナインクラフターだ」

「秋でこっちが冬夜、千夏にエマだ」

「ここにわしの街を作ろうかと思ってな」

「勝手に作っていいの?」

「だめなら取り壊せばいいだけじゃろ?」

「まぁ、ナイクラならできるか」

「まぁ、まだ構想中じゃから出来上がりを楽しみにしておくがいい」

「おう、またくるぜ!」

「それじゃあの!」

 ワイバーンに乗って次の街へ、またデカい街だなぁ。

 近くに降りて門兵に冒険者証を見せて中に入る。

 なかなか趣のある街だな。

 ギルドに登録して、宿屋に一泊して家に帰ると千夏の電話がなった。

「早く持ってこい!」

「やだね!もうないっていってるだろ!」

「金ならあると言ってる」

「金で解決できる問題じゃ無い!」

 電話を切ると怒っている。

「もうちょっとだけ話を聞いてみれば?」

「そうだな、なんか切羽詰まってるようだし」

 またスマホが鳴る。

「ああ。なんで万能薬が欲しいんだ?」

「娘のためじゃ!」

「なら早く言え!」

「金が欲しいんじゃろ?」

「そんなもんいるかよ!」

 エマから万能薬を貰って千夏は出かけていった。


 帰ってくるとホッとした顔とケースを持っている。

 娘さんが交通事故で植物人間状態だったらしいなんとか点滴で万能薬を流したら気がついたそうだ。

 良かったじゃ無いかと言うとケースの中には札束が入っていた。

「どうしても持ってけって聞かなくてさ」

 はぁ、頑固ジジイだったわけだな。


「でもよかったな、気がついて元気になったなら」

「ああ、エマ様々だよ!」

「フフっ、よかったね」

 でもまだいっぱいの病人がいるのに大変なことにならなければいいけどな。


 一週間後電話が鳴り止まなくなった。

なぜかと言うと病院が千夏の番号をおしえてしまったからだ。

 病院側からしたらそりゃ頑張ってるのに簡単に薬で治してしまってやな気分だろうがそれとこれとは違うだろ。

 病院に行って院長と話をする。

「だから万能薬をこちらにおろしてくれればいいんですよ」

「だから数がないっていってるだろ」

「それだけ儲けることができるじゃないですか!」

「………それでいいんですか?病院の院長が?」

「は?これは金の話だが?」

「もういいです。番号も変えるからいいや」

 交渉は決裂だ。金の亡者だった院長には悪いけど万能薬を渡すことはできない。

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