第55話 アヒム


「ほら吹雪は止んだぞ」

「あっ!本当だ!」

 おれと冬夜は防寒装備のままだ。

「それ脱げば?」

「いやいい、これはこれで快適だからな」

「へぇ、そんなんだ」

 んじゃ街を探索してみるか。


 武器防具屋はどっちかというと中世と言うかなんと言うか。

「古臭いね」

「ばか!」

「千夏は大声でそう言うことを言わないでください!」

「はーい」

「でも星10装備だよ」

 エマが言うので鑑定してみたら本当だった。

 騎士装備だが動きにくそうだ。

 何も買わずに外に出る。


「ここはナイツアンドパズルの世界がおもみたいね」

「そういうのがあるの?」

「アプリの定番ね。パズルでナイツの攻撃力が決まるのよ」

「あーパズルゲームだから余り人がいないのか」

「武器はガチャで決まるからね」

「定番っちゃ定番だね」

「古臭いのは古いゲームだからかもね」

 エマが言う。

「そうなんだ。エマは物知りだな」

「古い機種でもできたからみんなやってたわよ」

 そうか、機種によってできるゲームが違うのもあるか。

「んじゃスキルを見に行こうか」


 スキル屋にいくと、拡張パックなるスキルがあった。なんの拡張だろ?

「アイテムの持てる数を拡張するんじゃない?」

「あぁ、よくある奴だね」

「僕買っときます。アイテム所持数少ないんですよね」

「んじゃ私もだわ」

 拡張パックを二つ買っておく。

 ジョブスキルは騎士が多いな。

 あとは買わずに出た。


「てかなんか古臭い街ヨネ−」

「そうか?情緒があって俺は好きだな」

「由緒正しき騎士の街って感じですね」

「余り賑わってないのもいいわね」

「あ、フランクフルトだ!」

「あんまり買いすぎるなよ!」

「インベントリがあるじゃない」

「ったく」

 フランクフルトだからドイツ辺りかな?

 なかなか異世界人と合わないな。


「あ、忍者だ」

「本当だな」

「忍者ゲームはアメリカでも流行ってたわよ」

「そうなんだ。でも少なかった様な」

「そうでもなかったわよ。結構いたし」

 そうなんだな。忍者の武器もあったにはあったな。

「対戦格闘ゲームも人気ね」

「まじかぁ、対人戦は避けたいよな」

「僕らじゃ殺しちゃうかも知れません」


 “シュタッ”

「おぉ、旅人かい?中国人か?」

「日本人だよ、君は?」

「俺はドイツだ、よろしくな」

「へぇ、やっぱりドイツだったんだ」

 フランクフルトはここらで広めたんだろうな。

「忍者ゲーム?」

「そうだよ、かっこいいだろ?」

「まぁね、ここら辺は何か特徴があるかい?」

「いや、これと言ってないな。みんな穏やかに暮らしてるよ」

「そうなんだ、俺は秋、こっちが冬夜でこっちが」

「千夏です!」

「エマよ」

「俺はアヒムだ」


 やっぱりザ、忍者の格好は浮くな。

「いまレベル幾つだ?」

「ん47だな」

「ならこれ良かったらやるよ」

 星5の忍者の防具と武器を渡す。

「おぉ!かっこいいじゃないか!」

「やっぱり忍者はかっこよくなくちゃね」

「そうだな!お礼にフランクフルトでも」

「もう買ってきてるよ」

 千夏がうれしそうに持っている」

「そうか、俺にはあげられるものがないな」

「いいよ、気にするな」

 アヒムは気にしないことにしたらしい。

「おう!ありがとな!なにか困ったことがあったら助けてやるよ」

「あぁ、ありがとな」

「一杯やらないか?」

「いいねぇ」

 俺達は酒場に向かって歩き出す。


 ここは、ドイツビールを出す店らしい。

「友達がやってる店なんだ、ようクラウス」

「アヒムじゃねぇか、なんだ連れも一緒か?」

「日本人らしい!見てくれよこの装備」

「おお、かっこいいな!」

「だろ!お礼に奢るぜ」

「やったー!」

 乾杯してドイツ料理を振る舞ってもらう。

「これからどこいくんだ?」

「んー、まだ決めてないな、ダンジョンも攻略したいし」

「あー、あのダンジョンか、けっこう難しいぜ」

「アヒムは途中で死にかけたしな」

「そうなのか?」

「あぁ、でもこの装備があればいけると思うんだ」

「あははは、これだからアヒムは!」

 クラウスがおどけて見せる。

「あははは。見てろよ!チームの奴らと攻略して見せるから」

「あぁ、無理するなよ!」

「おぅっ!」

 アヒムはチームを組んでるらしい。そのチームでダンジョンに行くみたいだな。

 

「美味かったよ、ありがとな」

「いいってことよ!こっちこそ装備ありがとうな!」

 アヒムはドロンと消えていった。最後まで忍者だったな。

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