第54話 ホワイトラグベアー


「しばれるー」

「寒いって普通に言えよ」

「寒いの最上級」

「あーね」

 雪道をアプリのコンパスでみながら西に進んでいる。

「遠いヨォ」

「みんな思ってるよ」


 もう昼間だけ歩いて4日目だ。そろそろ、

「見えた!城壁だ!」

「おぉ、でもまだ遠いぞ」  

「でも目標ができたのはいいな!」

「よぉーし!元気出た!」

 元気が出たのならいいか、まだ遠くに確認できるくらいだけど確かに城壁があるな。


 なんとか城壁にたどり着いた俺達は中に入れてもらう。

「うおー、宿屋に行こうぜ!」

 千夏ははやく暖まりたい様だが。

「その前にギルドに行くぞ?」

「なんでだよ?やっと来たのに」

「一応は来た報告をしないといけないって言われたじゃないか」

「あーもう!じゃーギルド行ったらすぐに宿屋ね」

「はいはい」

 ギルドに行くと暖かかった!

「はい、今後ともよろしくお願いしますね」

「はい、よろしくお願いします」

 とりあえず登録は終わったが、千夏がストーブに陣取ってる。エマもか。

「終わったぞー」

「もうちょっと待って、今あったまってるから」

「そうそう、あったまったらでいい」

「家に帰ればあったまれるだろ?」

「今が寒いから無理」

「もうちょっと待ってあげましょうか」

 冬夜が言うならそうしよう。


「ここら辺でモンスターは出るのか?」

「今の時期だとホワイトラグベアーが出ますね」

「ほうほう、熊か、冬眠しないんだな」

「ホワイトラグベアーの毛皮は高く売れますよ」

「そっか、探索がてら狩ってみるかな、ダンジョンは?」

「街の中心部にダンジョンがあります」

「街の中?危ないんじゃないのか?」

「冒険がたくさん集まるので暴走の心配は少ないんですよ」

「変わった街だな」

「ほんとに」

 ダンジョンが管理されてるならいいのか?

「ありがとな」

「いいえ、またわかんないことがあったら聞いてください」

 受付のお姉さんに見送られて千夏達を引っ剥がして外に出る。


「寒いよー」

「宿屋はあっちだな」

 宿屋に入っていく。

「部屋は空いてるかい?」

「四人部屋だね、空いてるよ」

「じゃあ一週間前払いで借りるよ」

 部屋に入ったら二人ともすぐに日本に戻った。

「本当に寒かったみたいですね」

「もう少し我慢できんのか?」

「女の人は冷え性が多いですし」

 俺たちも日本に飛ぶとコタツムリと化した二人がお出迎えしてくれた。


「もっと厚着してこいよ」

「うー、言われなくてもするもん」

「僕たちもダウン着て行きますか」

「だな」

 宿屋もあったかかったが動き回るためには星の低い耐寒装備か、星の高い装備の上から羽織るしかないのだ。

 それにしても人を余り見なかったな。

「誰か外人見たか?」

「見てないよー、寒いから自分のとこにいるんじゃないかな?」

「あぁ、そう言うことか」

 じゃあおれらは少数派なんだな。

 無理して行かなくてもいいがホワイトラグベアーの毛皮は是非とも欲しいな。リビングに敷いたらあったかそうだ。


 次の日は昼から行動するって、そんな格好でいけるか!

「脱げ!そんなに着膨れしてたら動けないだろ?」

「ご、ごつぁんです」

「そんな体張らなくていいから普通の服に着替えてきなさい」

「はい」


「んじゃ転移するぞ」

「はーい!」


「うおっ!外が猛吹雪だな」

「今日はやめとくか」

「だね、宿屋の女将に聞きてきますね」

 冬夜も聞きに行った。

「窓もガタガタ震えてるよ」

「なんでもホワイトラグベアーが近くにいると猛吹雪になるそうですよ」

「はぁ、耐寒装備に切り替えるか」

「えー、アレ可愛くないんですけど」

「じゃあ、冬夜の二人で狩りにいくか?」


 結局二人は残って冬夜と二人でホワイトラグベアーを狩りにいくことになった。

「耐寒装備でもこの風はきついですね!」

「あぁ、さすがに堪えるな!」

 大声で喋らないと聞こえないくらいだ。


 街の外に出ると、気配探知で探す。

「いた!デカいな」

「本当ですね」

「なるべく傷がつかない様に」

『魔光撃』

「あ、吹雪が止みましたね」

「やっぱりあいつがやってたのか」

 すぐにインベントリにしまって、ギルドで解体してもらう。

「本当に売ってくれないんですか?」

「あぁ、毛皮は使いたいからな」

「加工は出来るんですか?」

「それもお願いしたいな」

「分かりましたが高いですよ?」

「あぁ、金はあるからお願いします」

「分かりました、加工期間はかかるのでよろしくお願いします」

 やっぱり職人にやってもらった方がいいからな。

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