第40話 ウォーゲーム


 王城に着くとすでに事切れた兵士達がそこかしこにいる。

「アイツよくも私を騙しやがって!」

「アイツって誰なんだ?」

「ウォーゲームって知ってるか?」

「戦争シュミレーションのことか?」

「それと同期してるやつだ」

「チッ!また面倒な」

 千夏は洗脳が解けたように言う。

「私を駒にしやがって」

「いくぞ!」

 もうすぐ城内だ。

「誰だお前達は?」

「うるせえよ!」

 殴って黙らせるとすぐに上に向かう。

“バン”と扉を開くと玉座に座る狐顔の嫌な感じのやつがいる。

「何してんだよ千夏ちゃん、ちゃんと任務は果たしてきたのかい?」

「お前は私に何をした!」

「あら、駒が青くなってる、寝返ったんだな」

「お前は私に何をしたって聞いてんだよ!」

「そんなに怒るなよ?ただのウォーゲームだよ」

 飄々とコマを並べると、スマホをいじる。

「な!戦力五万?!わかった、私の負けだ!」

「おい。それで済むと思ってるのか?

「ただのNPCで遊んだだけじゃないか?」

「違う!お前は人を殺したんだ!」

「は?」

「この国の人たちはNPCじゃなく普通の人間だ」

「そんな馬鹿なことを」

「お前がゲームを起動したから駒になってしまっただけなんだよ!」

「まさかそんな」

 狐顔のやつは唖然としていたが後ろから刺される。

「ガハッ」

「おのれ王様の仇め」

「嘘だ、お、れ、は」


 その後は王に王様の子供がついて宰相達が補助して行く形となった。

 街は壊され人はだいぶ死んだようだ。

「これは私にも関係がある」

「駒にされていたんだからしょうがないだろ?」

 千夏の気持ちは分かるが、駒にされて洗脳されていたらと思うと気が滅入ってくる。

王都が一番酷い有様だった。国庫から負担されるのに俺からもだいぶ出した、金だけは沢山あるからな。ほかのプレイヤーもなんでこんなことをしていたのかわからない様子だ。


「本当にすまない、私が金を持っていればまだ多少なりとも罪を償うことができたのに」

「いいよ、おれは金だけは沢山あるんだ」

「いや借りは返す!なんでもいってくれ!」

「はぁ、あ、いいとこにきたな」

「えっなんですか?」

 冬夜が惚けた顔をしている。

「千夏はちなみになんのゲームと同期したんだ?」

「転神というMMORPGだ」

「あぁ、あのオープンワールド型の自由度の高いゲームだね」

「名前は聞いたことあるな、俺のスマホじゃできなかったんじゃなかったかな?」

「私もやり始めてそんなに経ってない」

「んじゃジョブなんかは?」

「転神はジョブがなかった、使う武器でスキルを強くして行く感じだ」

「まぁジョブシステムみたいなものか、レベルは?」

「自信を強化させて行く感じだな」

 千夏は困惑しているがちゃんと答えてくれる。

「なら強くなれば良いよ、ダンジョンで宝箱開ければ金貨も手に入るしな」

「そうだよ、それで良いんじゃない?」

 面倒だったからそれでいいや。

「あの、何階層で宝箱は手に入るんだ?」

「百層毎にボスがいてそれを倒せば宝箱が出るよ」

「え、えー!!」


 俺たちはとりあえず助けた人たちのところに行って金貨を渡して行く。

「あ、ありがとうございます」

「これで当分はなんとかなるでしょ」

「近くの街まで破壊されてなくてよかった」

 近くの街は捕虜として捉えられていただけだった。兵士があまりいなかったのがよかったのかもしれない。

「どんだけ金貨を渡すのだ」

「しょうがないだろ?生きて行くためなんだから」

「そ、それはしょうがないが」

 千夏は目を丸くしている。

「やっとインベントリの金貨がなくなったよ」

「まだ持っているのか?」

「あぁ、まだだいぶ持ってるな」

「そ、そうなのか」

「なんだ?言いたいことがあるなら言えよ?」

「私もパーティーに入れてくれないだろうか?」

「は?」

 何を言っているんだこの子は?

「借金を返す当てがない。一人で100層まで行ける自信もない。だから働いて返す」

「いや別に無理しなくても」

「借りは返すものだ!お願いします」

「僕は良いですよ」

「んー、なら俺も別に良いか」


 千夏がパーティーに入った。

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