第38話 アンゴルモア


 ここか。

 世田谷にある一軒家にいま俺たちはいる。

 通報があって薫と言う男の部屋にダンジョンができていて薫はいなくなっているとのことだった。警察からギルドに連絡があり俺たちが来た。

「こちらです」

「どうも」

「うちの薫ちゃんが…助けてください」

「分かりました。できるだけのことはします」

 崩れ落ちる母親を横目にダンジョンに入って行く。

『何勝手に入ってきてるんだよ!』

 どこからか声が聞こえる。

「お前のお母さんが心配してるぞ!」

『しるか!あのババア余計なことしやがって』

 ブツブツと喋っているがちゃんと聞こえている。

「さっさと出てこいよ!」

『ふざけるな!こっちは朝から晩までこのダンジョンに注ぎ込んでるんだ!思い知らせてやる!』

 俺も冬夜もジョブは勇者と魔王になっている。

 押し寄せるモンスターの波を退けて行く。

『なんだよ!お前らチートかよ!』

「努力の結晶だ』

 どんどんいなくなるモンスターに焦ったのか金切り声を出して俺たちを威嚇してくる!

『エンシェントドラゴンなんて目じゃないぞ!それでもくるのか!』

「行くに決まってるだろ?」

『あああああぁぁぁぁぁ』

「なんだ?壊れたのか?」

『死ね!しね!死ね!』

 初めて死ねと言われたよ。


 またモンスターの波が押し寄せるが、切り伏せて行く。

『なんで死なないんだよ!!』

 俺たちは走り、先に進む。

 トラップが仕掛けられてるが、新しい魔王装備には罠無効がかかっている。

『アァァァァァァァァ!』

「ったくうるせえよ!」

 モンスターの波を退けてようやく辿り着いた最後と思われる扉の前にいる。

『そこを開けたら最後だからな!』


「そう言うわけにはいかない、出てくるなら開けないけど」

『出て行くわけないだろ!!ふざけんなよ!』

 相変わらずの金切り声だ。

「開けるぞ!」

「女の子?」

『アンゴルモアだ!死ねばいいんだよお前達は!』

 気がつくと俺の前にいるアンゴルモアに殴られて吹き飛ぶと壁にぶつかる。

 冬夜は反応したがやはり殴られて吹き飛ばされる。

『ぎゃーはっはー!やれアンゴルモア!』

「これは結構やばいかもな」

「ですね」

「ディストラクション」

 対象の魔力を爆発させる魔法だがアンゴルモアには効かないみたいだ。

「くっ!デモンズブレード!」

「シャインブレード」

 二人で同時に技を放つが少しだけ女の子の体に変化があっただけだ。

「オラァ!」

「たぁ!」

 アンゴルモアを切り付けると皮が剥がれるように黒い塊が出てくる。

『無駄無駄無駄なんだよ!』

「無駄じゃないんだよ!」

「うらぁー!」

 黒い塊になったアンゴルモアはウネウネと動きそれをムチのように動かすと俺たちはまた壁に激突する。

 ポーションを飲んで回復するが、あちらにはダメージがいってないようだ。

「オラァ」

 俺は剣を突き刺してディストラクションを唱えると膨れ上がるアンゴルモア。

「いけぇー!」

「シャインブレード!!」

“バァン”

 と破裂して塵になるアンゴルモア。

「しゃー!」

「俺はメインコアに手をついてマスタールームに入ると、薫を拘束する。

「いだぁい!いだいいだいよ!いだい!」

「ふざけるな!これまで何人の人が死んだと思ってんだ!」

「しるかよ!俺は選ばれた人間なんだよ!」

 スマホを取り上げマスタールームから出ると、冬夜がドロップの剣を片手に手を振っている。

「ふざけんな!みんなお前達がわるいんだ!」

「責任転嫁は良くないと思うよ?」

 宝箱も回収したらしいので外に出る。

「あぁ、薫ちゃん!」

「ババアがこんな奴ら呼ぶからいけないんだよ!!ふざけんな!」

 手錠を掛けられると途端に暴れ出すが取り押さえられパトカーに乗せられていった。

「はぁ」

「薫ちゃんは?薫ちゃんはどうなるの?」

「お母さんは甘やかしすぎですよ、少し子離れしてください」

「いやぁ、薫ちゃんはどうなるのよ!」

 まだ警察の人がいるからよかった。

 あとは任せて家に帰る。


「あぁ、疲れた」

「僕もですよ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る