第26話 盗賊


 今の状態がオンラインゲームみたいな感覚なのか?でも、これは現実なんだけどな。

 テクテク歩いていると、

“ドォンッ”

 痛っ!

「なんなんだ?」

「まずいですね、PVPです」

「あぁ、これがか」

「負けを認めてくれればいいけど、どうする?」

 空を飛んでるやつがそう言う。

「あのな、これはゲームじゃないぞ?」

「そんなん知るかよ!」

「はぁ。魔光撃」

 俺の掌からビームが繰り出される。

「な、何だよそれ!卑怯だろ!」

「やられたくなかったらやるなよ」

「う、うっせぇ!喰らえ!」

“ドドドダダダダダ”

 こっちにはダメージがあまりないが痛い。

「魔光撃」

“ズガンッ”

「うわぁぁぁ」

「堕ちたな」

「堕ちましたね」

 見に行くと死にかけているのでポーションで回復してやる。

「はっ!あぁ、ごごめんなさい」

「あ?負けたらどうすんだ?」

「こ、これで勘弁してもらえないですか?」

 壊れた武器を差し出してくる。

「いや要らんし!つか、お前死にかけたんだけど?」

「え?」

「ポーション使って治してやったけどあのままだと死んでたぞ?」

「あ、ああ」

 汚ねえな!しょんべん漏らすくらいなら最初からやるなよ。

「ゲームじゃないんだからわかったらこれからはやるなよ」

「は、はい!」

 俺たちは歩いて南に向かう。

「あれがPVPか。少し考えれば分かる気がするけどな」

「しょうがないですよ、分かんない人もいるもんです」

「だな」


 冬夜はアイテムボックスを持っているみたいで、俺も似た様なのを待ってると言って昼飯にした。

「秋さんの分も買ってきたのに」

「ありがとな、でも時間経過ないんだろ?」

「ないみたいですね」

「ならいつでも食えるじゃん」

 インベントリ様々だな。

「冬夜は勇者の他になんのジョブ持ってんだ?」

「今の所シーフ、剣士、騎士、勇者ですね」

「まんま前衛だな」

「そうなんですよ、だから空からの攻撃とかにあんま強くなくて」

「俺もワイバーンの時は苦戦したよ」

 似たような境遇だとあるあるがよくかぶるな。まぁ俺はあの時だけだけどな。


「秋さんは?どんなジョブなんですか?」

「俺か?俺は見せた方が早いな」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

葉山秋 25歳


剣士      レベル120

魔法使い    レベル120

シーフ     レベル120

クレリック   レベル120

ブラックスミス レベル300

ポーター    レベル60

商人      レベル60

忍者      レベル120

侍       レベル208

騎士      レベル92

聖騎士     レベル120

錬金術師    レベル120

アサシン    レベル200

勇者      レベル120

賢者      レベル120

聖者      レベル120

魔王      レベル127

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「うわっ!凄っ!てか魔王って!」

「裏ボス倒したら出てきた」

「マジですか!やべ、俺も『ダンブレ』頑張らないと」

「『ダンブレ』はクリアしてるの?」

「あれってダンジョン攻略なんすけど、入るたびに配置が違うんすよ。だから難易度高くて」

「あぁ、ダンジョン探索型のゲームか」

 あれはけっこうやり込むんだよな。

「だからなかなか進まなくて、でもやり込んでますよ」

「そっか、他のジョブでもやってみると良いかもね」

 ジョブによって色々あるからな。

「すね、てか魔王にかぁ、いま勇者と魔王のパーティーっすよ」

「あはは、だな!最強だろ」

 

「キャアァァァァァ」

「おっと、助けるか?」

「行きましょう!」



「さて、これでベシッ」

「なんだ、盗賊か」

 俺のキックで吹き飛んでいった。

「秋さん!結構数いますよ」

「でも弱いぞ?」

 俺は殴って蹴って倒している。

「あ、俺も剣出したからか」

 剣だと殺すか動けなくするしかないしな。

「おりゃ!」



「あ、ありがとうございます。

「いえいえ、商人?」

 結構可愛い子だな。

「はい、行商人のニーナと言います」

「そっか、俺が秋でこっちが冬夜」

「よろしく」

 聞くと護衛に雇った奴らもグルで襲われたらしい。

「そりゃ災難だったな」

「そうっすね」

 盗賊は縄で縛ってある。

「あの出来れば次の街まで護衛をおねがいしたいんですが」

「次の街ってあとどれくらい?」

「馬車でみっかほどかかるんですが」

 馬車で三日か。

「そうだ、荷物をアイテムボックスにいれていきましょうよ!そしたら早く着くと思いません?」

「おぉ、そうするか!」

「え、え?」

「俺が荷物預かるから馬車に乗せてくれるか?」

「い、良いですけど」

「おし、決まりだ!」

 荷馬車の荷物を全部いれてからになったところに盗賊と俺たちが乗る。

「しゅ、出発しますね」

「おう!」


 馬車に揺られて日が傾いてきた頃に野営の準備を手伝い、飯は俺らが出して食べる。

「美味しい!」

「おー、それはよかった」

「ニーナさんの口に合ったみたいですね」

 盗賊は涎を垂らしながら見ているだけだ。

「んじゃニーナさんは寝てください。俺たちが見張っとくんで」

「本当にありがとうございます」


 俺たちだけで見張ってると盗賊の一人が口を開く。

「なぁ、兄ちゃんたちも俺らの仲間に入らないか?」

「断る!」

「だいたいこんな女の子を襲って恥ずかしくないのかよ?」

「生きるためだ!俺らだって」

「やりたくてやってるわけじゃねえのか?んなバカな」

「なっ!」

「やりたくなければやらなきゃ良い話だ!これ以上喋ると殺すぞ!」

「………」

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