第41話


「貴方たちは、ここで死ぬの。死んで糧になるのよ」


 女が言う。

 そのオーラが物語っている。迂闊に攻撃をしようものなら、たちまち反撃を喰らって殺されると。


 だが、それでも≪黒の守護士たち≫の3人は臨戦態勢を整えていた。


 ステータス確認でもしてみようか。


―――――――

? 年齢24 女

職業 魔王の使い

レベル76

HP934

攻撃力326(+50)

防御力293(+0)

魔力400(+0)


特記事項 ワープ可能


―――――――


 俺の直感は当っていたようだ。

 少なくとも、俺がまともにやりやったら間違いなく殺される。


 ところで、職業が魔王の使いとなっている。

 ゲームでは、魔王復活イベントはオリジナル作品のみのものだったが、スピンオフ作品をベースにしたこの世界でも魔王が復活するのかもしれない。


 そうなると、魔王を倒す勇者は誰がなるのだろうか。

 もしも勇者が出現しなければ……そう考えると、身震いしていまう。


「キミがあの馬車を燃やしたのか? 」


 青年フリッツが、女にそう訊ねた。

 

「そうだよ。復活に必要な糧になってもらう必要があったからね」


 女がそう答える。

 

「何が言いたいのか判らないが、キミを放置しておくことをは出来ない。悪いけど、拘束させてもらうよ」


 青年フリッツがそう言うと、≪黒の守護士たち≫の3人は、それぞれの武器を手にして女に攻撃をし始めたのであった。

 

 そう言えば≪黒の守護士たち≫の3人のステータスを確認していなかったな。


―――――――

フリッツ 年齢19 男

職業 A級冒険者

レベル32

HP316

攻撃力152(+70)

防御力137(+70)

魔力100(+0)


―――――――




―――――――

メラニー 年齢16 女

職業 A級冒険者

レベル31

HP298

攻撃力123(+50)

防御力119(+80)

魔力140(+0)


―――――――




―――――――

ゲッツ 年齢28 男

職業 A級冒険者

レベル32

HP358

攻撃力213(+90)

防御力195(+90)

魔力0(+0)


―――――――


 なるほど。

 A級だけあって、かなりの実力はあるようだ。あの、人殺しミハイル・ブランのステータスを超えているのだから間違いないだろう。


 というよりも、ガリヌンス王国の近衛騎士だったオレリーや、元ギルベー公国近衛騎士の老人クルトのステータスが低いような気がする。人のことを言えたものでは無いが、オレリーにはもっと強くなってもらわなければな。


 さて、≪黒の守護士たち≫の個々の実力は謎の女に及ばないが、3人が力を合わせれば充分勝てるのではなかろうか。


 青年フリッツが、勢いよく剣で迫っていく。

 一方で、謎の女は青年フリッツの攻撃をかわし続けていくのであった。そこへ素早く回り込んだゲッツが、鉄球で背後から謎の女を攻撃する。


 呆気なく終わった。

 俺は一瞬そう思った。


 しかし俺の予想に反して、謎の女はジャンプした。

 高さにして6メートルほどだろうか。そして、ゆっくりと地面に着地する。その場所は俺の目の前であった。


 俺は呆気に取られて、その場から動けなかったのである。


「ヴィル! 」


 青年フリッツがそう叫ぶ。

 謎の女は、持っていた短剣を首筋に突きつける。先端の食い込みが妙に痛む。同時に女と密着していることで、妙な興奮を覚えてしまった。

 我ながら、なんて情けないことか……。


「動かないで! もし少しでも動いたら、この間抜けを殺すよ? 」


 俺は、人質にされてしまったようだ。


「くそっ! 卑怯なアマさんなことだな? おい」


 ゲッツが唾を吐き捨て、そう言う。

 

 仕方ない。

 こうなった以上は、奥の手を使う他あるまい。俺が取る手段と言ったら、当然収納スキルである。


 早速、俺は突きつけられた短剣を収納したいと念じる。

 すると、一瞬で俺の首に突きつけられていた短剣は消えて無くなった。刹那、俺は走って逃げる。

 そして直ぐに、青年フリッツの背後に身を隠した。


「へぇ? 一体誰の仕業か判らないけど、特殊な技を使うみたいね。なら不確定要素は気持ち悪いから直ぐに消さないとね」


 謎の女は、余裕の笑みを浮かべてそう言った。

 と、同時に彼女の両手から炎が、まるで火炎放射器から放たれたかのように出現したのである。


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悪役令嬢が主人公のスピンオフ作品に転生してしまった! 牟川 @Mugawa

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