第9話
俺は1カ月近くひたすら薬師試験の勉強し、そしてとある魔法の練習を続けた。
辛い日々が続いたが、ようやく薬師試験の当日が訪れた。
いつも通りの時間に起きても問題はないのだが、不測の事態に備えて、いつもより早く起きた。もはや専属の護衛となっているオレリーにも、今日は早めに身支度するようお願いしてある。
俺は、王宮の城門前にやって来ると、そこには既にオレリーの姿があった。
「おはよう」
「おはようございます。殿下」
「早速だが、向かうとしよう」
そして、2人で薬師ギルドへと向かう。
今日はいつもと違って、少し足取りが重い気がする。どうやら俺も、薬師試験当日であってか緊張しているようだ。
結局、俺とオレリーは無言のまま歩き続け、試験会場である薬師ギルドの建物に到着したのであった。
「では頑張ってください。私は一階で待っておりますので」
「ああ」
オレリーに励まされた俺は、建物の二階へ向かった。
そこが試験会場だからである。
試験会場に入ると、意外にも人は少なかった。その様子に内心驚く。
ただ、俺が入室した後にも受験者がやって来ることだろうし、受験者自体が少ないわけではないだろう。
さて、とうとう筆記試験の開始時刻が迫ってきた。
受験者は、まだ俺を含めて3人しかいない。もしかして、受験者自体が少ないのだろうか……。
流石にそんなことは無いと思っていたわけだが、ついに試験用紙も配られ、また試験官の説明も終わり、筆記試験の開始時刻になってしまった。
「始め! 」
試験官の合図で、試験が開始された。
受験者の数など気にしている場合ではない。ともかく、俺は問題用紙のページをめくった。どうやら、1問目は簡単な問題だったので、すぐに解答用紙に記入する。
それから2問目や3問目も、あのテキストを読んでいれば、直ぐに答えられる内容だ。
4問から6問目は、ひっかけ問題だったが、これもテキストを読んでいれば答えられるはずだ。
こうして俺は、30問全てを回答し、残りの試験時間をじっと待つことにした。
そして、筆記試験の終了時刻となる。
試験官が、すぐさま解答用紙を回収していく。筆記試験の合否は、直ぐに採点が行われるらしく20分程度で判るらしい。
その間、俺たちは試験会場に待たされる。
刻々と時間は経過していく。ただ、とても長く感じる。ビールでも飲んでいれば、あっという間に20分など経ってしまうというのに……。
20分と言う、とてつもなく長く短い時間が経過した後、試験官が戻って来たのであった。
「今回の筆記試験合格者は、1名のみだ」
1名のみ……!?
ま、まあ受験者がたったの3名なのだし、3分の1の確率ということにはなるが……。
「では合格者の名前を発表する。受験番号2番のヴィル・ポンポンだ」
さらりと、俺のニックネームが発表された。
どうやら俺は、無事に筆記試験を通過できたようだ。安心という気持ちでいっぱいである。
「今回の試験では、わずか3名の受験者とはいえ、やはり我が国に於ける識字率の低さが目立った。不合格となった2人も、文字を書くのに不自由しているようだな」
と、試験官が言う。
どうやらガリヌンス王国では、識字率が低いようだ。
ただ、私にはガリヌンス王国の言語は私の体感している限りでは日本語である。本などの書物は日本語の文字だし(つまり漢字もある)、会話も日本語として聞こえるのだ。
「では合格者以外は、直ぐに荷物をまとめて退室するように! 」
そう試験官に指示を受けると、俺以外の2名の受験者は直ぐに退室していった。今、試験官と俺だけしか、この部屋にはいない。
何か実技試験の説明もあるわけでもなく、とても気まずい時間が続く。
それから10分ほど経った頃、試験官ではなくまた別の者が、数名部屋に入って来た。
彼らは、実技試験に使うであろう器具や材料を、次々と運んできたのであった。その中には、マッチやガスバーナーのような道具もある。
どうやら、魔法を覚える必要はなかったのかもしれない……。
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