第2話
転生から2日目。
元王太子だった俺は、決心した。
即ち、このガリヌンス王国から抜け出すことを。
このまま、王族の1人として死ぬまで過ごすのも良いのかもしれないが、この世界を堪能してみたいのだ。
いっそのこと、各地を巡って旅なんてものしてみたいな。
ゲームでは描かれていなかった部分が、どうなっているのかも見て見たい。
だが、今すぐにというわけにはいかない。
食い扶持だけは、今のうちに確保しておきたいのだ……。
その考えていたら、1つ思い付いたことがあった。
マリー・ブルゴヌが主人公のスピンオフ作品では、王太子失脚後もストーリーは続く。もちろん、マリー・ブルゴヌが誰と結ばれるか、というところまで話が続くからである。
そして、そのルートの対象となる1人に、病弱の王子がいるのだ。
その病弱の王子は、いずれは新王太子となるわけだが、つまり俺の弟ということになる。
仮にマリー・ブルゴヌが、この病弱な弟と結ばれる場合、彼女は薬師を目指すという展開になる。薬師試験は王太子失脚の1か月後という設定だった。
つまり予定通りなら、あと1カ月で薬師ギルドが課す薬師試験が行われるはずなのだ。
「ミニゲームどおりなら、容易に合格できるが……」
薬師試験は、まずクイズ形式のミニゲームで進行していた。解熱薬(頭痛を抑える効果あり)、咳止め薬、くしゃみ止め薬、鎮痛薬(塗り薬)の4つの薬の作り方が、クイズ形式で登場する。
このクイズ形式のミニゲームにクリアすると、今度は実技試験と称するミニゲームに移る。4つの薬のいずれかからランダムで、実際に作ってみようとというものだ。
「とりあえず、医学に関する本でも読んで試験に備えておくとするか」
ここは王宮だ。医学に関する本くらいは、置いてあるだろう。
そう考えた俺は、直ぐに部屋を出た。だが、図書室の場所が判らないので、まずは執事かメイドのような使用人を探すことにした。
そして、長い王宮の廊下を進んでいると、メイドらしき女性の姿が見えた。
「すみません。少々お伺いしたいことがあるのですが? 」
「こ、これは王子殿下。そんな畏まってどうされたのですか? 」
そう言えば、俺は王太子だったな。
忘れていた。
「あ、ああ。図書室へ行きたくてな。案内して欲しいのだが……」
「と、図書室ですか!? 」
と、メイドらしき女性が驚く。
元王太子だったわけだし、元々俺は図書室の有無や場所など知っているはずだ。
そんな俺の今の発言はおかしいに決まっている。
このメイドは昨日の執事とは違って、表情どころか態度に出してしまうようだな。
「すまないな。場所を忘れてしまったのだ……」
「そうだったのですね。分かりました。ご案内いたします」
そして、俺はメイドの案内で図書室にやって来た。
「どうもありがとう」
俺は礼を言って、図書室の中へ入る。
中へ入り、直ぐに医学関係の書物を探す。
「あった」
医学系の本棚を見つけた俺は、ひとまず全体的に眺めた。かなり難しそうな本が並んでいたからだ。しかも、分厚い。日本のデイリー六法やポケット六法くらいの分厚さはある。
だが、その中では比較的薄い本が1冊あった。
「薬師試験テキスト……」
という題面の本だ。
とにもかくにも、薬師試験合格を目的としている俺にとっては、分厚く難しい本よりも重要な本に違いない。試験勉強なら、それなりに経験がある。
「さっそく読んでみるか」
俺は、≪薬師試験テキスト≫を読み始めた。
内容は、とてもシンプルで簡単なものである。とにかく暗記してしまえば良い。例えば、解熱薬を作りたければ、ユルチャン草の葉を2葉(2枚)分と、キツチャン草の葉を1葉(1枚)分を、それぞれ粉末状にした状態で網に入れた状態で、沸騰させたお湯で煎じれば完成らしい。
要するに、お茶のようなものである。
これは、プレイしたゲーム通りの内容だ。
さらにページをめくると、今度はユルチャン草の葉のイラストなども出てくる。確かあのクイズ形式のミニゲームでも、薬の材料となる植物自体を問題にしたものもあった。
そして、幸いなことに≪薬師試験テキスト≫には過去問も記されていた。
「過去問もあるのか。なら、早速5周やっちまおう」
過去問を5周したところで、受かるは思はないが、それでもまずはひたすらに5周から全てが始まるのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます