第29話 帰還・下

―《ミナは【ゴブリン村を討伐せよ】を達成した!!》

魔王「説明しよう!!」


「…さて、左右の両塔についてはこんなところだ。あとは中央の本館だな。会議室は大まかに分けて、下から「訓練場」「倉庫」「玄関」「食堂」「ごみ処理場」「大広間」「会議室1」「会議室2」「我の部屋」に分かれておる。聞いておればわかると思うが、創った我が自分で言うのもなんだがこの本館は中々に面倒な作りをしておる。貴様も見たと思うが、玄関には両塔へ続く道以外に何もないのだ。そして、本館の施設はほぼ全て、両塔からしかいけないのだ…侵入者のことを考えるとどうしてもこういった形になるとはいえ、流石にな」


ああ…侵入してきたヤツが直通で上まで来ると面倒だからってことか。


「…と、説明に戻るが、「玄関」と「食堂」、それから「我の部屋」は名前の通りだ。「ごみ処理場」も名前の通りではあるのだが、そこで溜まったごみを大迷路の方で使ったりもするのでな。そして「会議室1」は我々以外の下級~上級の魔物が自分たちで作戦会議を行ったり、我々が支持出しをするために使ったりする場所だ。「会議室2」は今我々がおる場所だな。今回のような特殊な事態がない限りは基本的には1月に1度、この部屋に全員集まり、情報共有などをする決まりになっておる。最後に「大広間」だが、ここは侵入者が来た時以外は基本的に使うことはないと考えておれば良い。先ほど「ほぼ全て両塔からしかいけない」と言ったが、例外はこの「大広間」と先ほど説明した「大迷路」だけだ。後者は魔物たちが大迷路に自室に設置されておる魔法陣を使って守りに行くためのもので、前者は万が一大迷路が突破された時に我々が侵入者を殺せるように四天王と我の部屋にだけ魔法陣が設置されておるのだ。」


なるほど…城の防衛にそこまでちゃんと労力をかけているというのは凄いな…


「そして最後。これがある意味この城で最も大切な設備になる」


なんだ?「ガーゴイル」とか「トラップ」とか「モンスター部屋」とかそういうやつか?


「それは「壁」だ。この城に所属している者以外がこの城の周囲10mに入った瞬間作動し、寮塔への入り口を塞いでしまうのだ。それによって侵入者は右の大迷路に行くしかなくなるというわけだな」


なるほど。

確かに、それがなければ「侵入者が大迷路に入る」という目標自体達成不可能だよな。


「…と、ひとまずはこんなところか。…ああ、最後に一つ。「四天王」という立場を与えてはおるが、基本的には自由に動いてもらってなんら問題ない。強いて言えば「侵入者への対応はしろ」「強くあれ」という程度だ。ただし、月に一度の会議にだけは出てくれ。もし出られない理由がある場合は連絡を。…というわけで、今日の会議はこのあたりだ。解散してくれ」


さて、初めての会議が終わったわけだが…どこに行こうか。

ひとまず、どこに何があるのかを把握するためにもぶらぶらするか。

…そういえば【直属骨騎士コマンダー】の皆はどこだ?

魔王に確認…はできないし…念話は繋がるか?


「ポーン、聞こえるか?」

「はい、ミナ様。会議が終わったのですか?」

「ああ。お前たちは今どこにいるんだ?」

「私はミナ様の部屋を整えております。また、ナイト、ルーク、ビショップは訓練場に行っているようです。また、私もそろそろ訓練場へ行こうと思っておりました。こちらにいらしていただければ訓練場まで案内いたしますがどうしますか?」

「…ふむ、そうするか。お前も行こうと思っていたのであれば丁度いい」

「では、お待ちしております」


…よし。それじゃあとりあえず部屋に向かうとするか。

そう思いつつ部屋の場所まで向かったのだが…


…そういえば、私の部屋はどれなんだ?


私の目の前には、4つの扉が並んでいた。


「…ポーン、部屋から出てきてくれるか?」

「かしこまりました」


ギィッ…


ああ、そこか。


「どうされますか?ひとまず部屋の確認をされますか?」

「そうする。軽く確認して訓練場に行こう。それに、魔王に「望めばダンジョンをやる」と言われているんだ。別に寝る必要はないのだし、私たち5人が居づらいような部屋なのであればダンジョンに行くとしよう」

「かしこまりました。魔王はかなり太っ腹なのですね」

「ああ、なんでこれほどしてくれるのかわからないほどだ」

「ですね」


そういいつつ部屋に入って確認をしていく。

正直、部屋の大きさ自体は一人なら問題ない程度の大きさだった。

しかし、流石に5人で暮らすにはいくら何でも厳しい…というか、ほぼ不可能だとすら思えるものだった。


「…うん、これはダンジョン暮らし確定だな。お前たちが別の部屋に行けるのならいいかもしれないが…まぁ、どちらにせよ【ピース】たちや研究対象のスケルトンたちの管理もしておかなければいけないしな。とりあえず魔王に話をしてくる。掃除してもらったのに悪いな」

「いえ。かしこまりました。お待ちしております」

「ああ」


…ということで魔王の部屋に行って伝えておく。

言葉では無理だったので、身振り手振りでどうにかしたんだが…非常に疲れた…


「すまない、待たせたな」

「いえ。では、行きましょう」

「ああ」

「訓練場は地下にありますので、ひとまず1階まで降りましょう」

「そうしよう」


「…さて、1階まで来たわけだが…地下の道はどこにあるんだ?」

「こちらです」


そういいながら、ポーンは階段の横の壁を押す。

するとその壁―に見せている扉だったようだ—がゆっくりと開いていく。

その奥には、訓練場へ続く下り階段と、その階段を照らしている松明たちがちらちらと揺れている。

何か巨大生物に飲み込まれていくような雰囲気に、少し気圧される。

そう思っている間、ポーンはずんずんと進んでいく。

それに気づいて数分間階段を下って行くと、前方に2mほどの扉が現れる。

するとポーンはその扉のノブに手をかけ、ゆっくりと開けていく。


その扉の速度に合わせ、先ほどまで黄赤が闇に飲まれかけていた階段に白い光が差し込む。

徐々に目が慣れ、訓練場の全貌が見えてくる。

最初に見えたものは、鉄鋼の壁だった。

下には剣を振っているゴブリンやスケルトンたちがいて、その対戦相手は案山子らしい。

そのまま左右を見回すと、こちらでも先ほど見たような魔物たちが戦っていた。

「こんなものが地下にあったのか」という驚嘆を覚えつつ、ひとまず【直属骨騎士コマンダー】の皆を探してみる。

すると、奥の方で訓練をしている皆が見えるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る