第28話 帰還・中
―《ミナは【ゴブリン村を討伐せよ】を達成した!!》
魔王「四天王として認めよう!!」
…というわけで、これから会議室で改めて自己紹介をしてもらうことになった。
「…よし…ひとまずミナよ。そこの席に座るがよい」
と言いながら魔王が指さすのは、余っていた最後の一席だった。
取り敢えず、頷きつつ座っておく。
「皆、座ったな?では改めて。自己紹介を始めるとしよう」
「では、魔王様。紹介は私が勤めてもよろしいですか?」
「ソイツか。よいだろう。紹介は任せたぞ」
「かしこまりました。…では、まずは魔王様の紹介からさせていただこう。あのお方の名は「サタン」様。種族は堕天使である。しかし、それを知っているのは我ら四天王だけだ。他の者には悪魔だと言っているので、心得ておけ。…さて、「魔王」という肩書からもわかる通り、この魔王城を作ったお方であり、我ら魔物の主だ。そして【大罪】は【憤怒】。今回の相手は【憤怒】の「欠片」だった。この能力はかなり強力だというのに、よく倒せたな?」
褒められているようなので軽く会釈しておく。
「…何か足りない気がするな。…そうだ。【大罪】の効果を説明するのを忘れていたな」
元々それが目的で会議室まで来たんだったか。
「…よし。では魔王様の【憤怒】の説明を…と言いたいところだが、細かい所の間違いがあると困るのでできれば魔王様ご自身に説明していただいてもよろしいてでしょうか?」
「ふむ、よいだろう…では、改めて。サタンだ。魔王でも魔王様でもサタン様でも好きに呼ぶがよい。さて、【憤怒】の効果の説明をするとしよう。とはいえ、貴様は「欠片」と戦ったことでもう多少は分かっているかもしれんな。我が【憤怒】は様々な癖のある【大罪】の中でも、ある意味で最も凶悪なものだ。戦闘が始まると同時、我と我の対戦相手はユニークスキル、つまり【大罪系】などの特殊なスキル以外は一切使用が不可能になるのだ。その上、我からの攻撃は相手のVIT、つまり防御力を貫通する。簡単に言うならば、我の前では世界最硬の肉体を持つ相手であろうと虫と同じであるということだ。ちなみにだが、恐らくあのゴブリン・キング…「彼岸鬼」と言ったか?やつは「復讐対象」にのみ範囲を狭めることで【憤怒】に近い性能を発揮しておったようだな…と、こんなところか」
なるほど、道理でヤツの攻撃が異常に効いたわけだ。
…というかVIT貫通で即死していないということは、やはりステータス自体は貧弱だったんだろうか?
「魔王様、ありがとうございました。では…そうだな、次はベル、貴様にしようか」
「あら、私?よろしくね♡」
「…そいつの名は「ベル」。四天王第2席で、種族はサキュバス…魔族の一種だな。基本的には城内、とくに訓練場と、あとで説明する寮塔をふらふらしているはずだから、何か用があるときは探せばすぐ見つかるはずだ。そして【大罪】は【色欲】だな。能力の説明は頼んだぞ」
「はいはーい♡挨拶は出ていく前にしたわよね?改めてよろしく♡…で、私の【大罪】は【色欲】っていうんだけど、まぁ簡単に言えばオトコもオンナも魔物も人間も、全部まとめて私のモノにできるってスキルよぉ♡まぁ、【大罪系】を持ってたり、種を発現してる「欠片」相手には効かないのがタマにキズって感じね♡」
「…というわけで、見境いも慎みも、それどころか恥ずかしいという感情すらないやつなので気を付けろ。こいつはアンデッドでも関係ないらしいからな」
「んふふ♡キモチヨクなれるなら何でもいいのよ♡」
アンデッドも…?あぁ、ネクロフィリアとかそういう感じなんだろうか…?
「はぁ…次はラズ、貴様だ」
「はぁい…」
「こいつの名は「ラズ」。四天王第3席で、今は人間のような見た目をしているが本来はスライムだ。まぁミナ殿もゴブリン村に行くときに見ただろうがな。【大罪】は【暴食】と【怠惰】。珍しいユニークスキル2種持ちだが、本人にやる気が一切ないのでどうしようもないのだ。」
「酷いなぁ…スキルのせいなんだから仕方ないじゃん。…えっと、ミナさんだっけ?改めてよろしくねぇ…僕の【暴食】と【怠惰】はねぇ、なんでも食べられたり、眠らせたりできるんだぁ…まぁ、そのデメリットのせいで常に眠いしお腹が空くんだけどねぇ…」
それは…地味に、というかかなりきつそうだな。私のようなアンデッドにとっては両方とも無縁の存在だが、そうじゃない限りは正直一番強烈なデメリットなんじゃないか?
「…さて、最後は私か。まぁ、何度か戦ったからわかっているとは思うが、私の名は「ソウイツ」。「ソイツ」と呼ばれることも多いがな。まぁ、どちらでも好きな方で呼んでくれて構わない。現在は四天王第1席を魔王様から頂いている。種族は観ての通りゴブリン・キングで、【大罪】は【嫉妬】だ。能力としては、私が直接見て「嫉妬」したものを一定時間コピーできるというものだ。さすがに【大罪】などのユニークスキルはどうしようもないが、それ以外はステータスだろうとスキルだろうと基本的にはなんでも大丈夫だ。まぁあくまで一定時間のコピーというだけなので、長期戦には向かないがな。また、一応スキルの効果で相手のステータスを覗き見るようなことも可能だ。更に言うと私は「嫉妬」すると【暴走状態】になってしまうのだ。…あの時は迷惑をかけたな。助けてくれて感謝する」
別に、私はそんな大それたことはしていないんだが…
まぁ、感謝したいというなら、させておけばいいか。
「基本的には私は訓練場か大迷路の方に居るはずだ。何かあれば声をかけてくれ。と、こんなところだろうか。…魔王様、紹介は一通り終えました。」
「うむ。ご苦労だったな、ソイツ。あとはそうだな…あぁ、城の構造の話をしておくとしようか。この城は真ん中の本館と、左右の寮塔と大迷路で構成されておる。入り口から見て左、つまり我々が上って来た階段の場所だな。あそこが寮塔、一番下から下級、中級、上級の魔物がそれぞれ暮らしておる。更にその上、最上階では四天王が暮らす魔天寮が存在する。とはいえ、ダンジョンを持っておる者はそちらで寝たいという者もいるのでな。貴様が望むのなら元のダンジョンの管理を貴様に任せても良いと考えておる。ちなみに、これは元々四天王へ来るときの条件としてあげようかと思っていたものだ。ソイツも納得しておる」
…ふむ、ダンジョンにするか寮にするかってことか
「まぁ、じっくり考えておいてくれ。次に入り口から見て右、木の扉がある場所の説明だ。そこはこの城に侵入者が来た時用に作られておる場所でな。大迷路…いわゆるダンジョンというやつだ。上へ上へと向かう形になっておる。ちなみにだが、今まで一度たりともこの大迷路は攻略されておらん。…実はこの大迷路、実際には上に向かう大螺旋階段と第一層の迷路だけで構成されておる。まぁ聞いた通りつくり自体は非常に簡易な物なのだが、上からゴミやら魔物やら岩やらを落とし続けるだけで相手が勝手に倒れていくという設計になっておるのだ。それどころか登っている最中に階段を1,2階分崩してしまえば登ってくること自体出来なくなるしな。」
ほぉ~、大分凶悪なトラップになっているようだな…
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