第13話 出口はどこ?

『第12話 初めての配下』で登場する強化された【傲慢】ですが、効果を少し変えたのでそちらをご確認してからお読みください。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ポーンと私も進化したことだし、そろそろこのダンジョンの出口を探そう。


そう思い、2階を隅々まで観察する。

この階で足止めをくった時に散々探索したが、未発見の所があるかもしれない。

道中襲ってくるやつらはサクッと倒し、どんどん進む。

【支配状態】になる個体もそうそう現れなかったので、どんどん進む。


肌感覚で約1日経過した頃、私は再び階段付近に戻ってきていた。

壁や床、小道などを隅々まで徹底的に調べたが、この階には出口はないようだ。

…まぁ、1階もあることだ。まだ諦めるようなときではない。

それと、ポーンはどうやら「」…つまり進化しない種族のようだ。

あるいは進化が異常に遅いのかもしれないが。

なぜかというと、レベルが既に20になっているのに進化していないから。

私がウォリアーに進化したときはLv15だった。

つまり、本来ならとっくに進化しているはずだというのに進化していない。

その代わり、ステータスの上昇幅は一度に15、つまりナイトと同程度のようだ。

現在のステータス的には、そろそろ私に迫るものがある。

そして一番の収穫は、INTMIN0ということ。

つまり、魔法が使える可能性がある。

…一旦、1階に行く前にポーンの研究をしてみてもいいかもしれないな。

なんせ、もし1階に行って何もなければ、やることがほとんどないということだ。

…より直接的に言えばということ。

もしそうだとすれば、一体誰がそんなことを?

私をここに送ったのは神なのだし、「奴」か?

今となれば「スケルトンにしか転生させられない」というのもおかしな話だ。

しかし、そんなことをされる理由が皆目見当もつかない。あるいは他の誰か?

だが、この世界に来てからは一人で、見かけたのもゴブリンキングくらいものだ。

やつにそんなことをされる覚えはない。

…駄目だな。ここで考えていても、マイナスなことばかり考えてしまう。

ひとまず先に1階にいくとしよう。それで出口がないなら、その時考えよう。

少なくとも、ここでずっと考え続けるよりはよほど建設的だ。




…一人、階段の前に立つ。

ああ決めたはいいが、いざ目の前に立つとやはり緊張するな。

もしなかったら…いや、今は考えるな。

襲ってくる恐怖や不安と戦いつつ、階段を下りていく。

なんだか、ウォリアーに進化したばかりの頃を思い出すな。

あの時は同種相手にすら歯が立たなくて、泣きそうなくらい怖かった。

…そういえば、その後はとんと姿を見かけなかったな。

だが、もしもう一度会っても、今ならやつにも勝てるかもしれない。

まぁ、そもそも出口が見つかればこんなところからはさっさと出るんだが。

そんなことを考えていると、階段を下りきっていた。

たしか、この道をまっすぐ行ったところに私が最初に目覚めた場所があったはず…

そう考え、下げていた視界を前に戻し、ゆっくりと歩いて行く。

まっすぐ続く道は、出口のようにも、地獄の入り口のようにも見えた。

進むごとに大きくなる期待、それと比例するように膨れ上がる恐怖と不安。

それらを抑え込み、どうにか冷静になろうと思いつつも、足は加速する。

呼吸器官などないのに息が切れ、心臓などないのに「鼓動がうるさい」。

そんな感覚に襲われつつ、私はついにたどり着く。

私がこの世界で最初に目を覚まし、それと同時に現実を見せられた場所。

そして今、私の目の前には



…危惧していた通りになってしまった。

何故だ?一体誰がこんな…それに、じゃあ、「」?

…ふざけるな。ふざけるなッ!!私は…こんな現実は認めない。認めないぞ!

そう心の内で叫びつつ、剣で切り付ける。

しかし、私の目の前には、物言わぬ岩壁がただ存在するだけであった。




数時間後。

私は今、3階のボス部屋の前に立っている。

前回スケルトン・キングを倒してから、既に2日が経過していた。

…もしもボスが復活するなら。

ことに目を瞑り、そう考える。

一縷(いちる)の願いを込めて扉をあけ放ち、部屋の中を覗く。

しかし、そこには誰も居なかった。

最初のアサシンとウィザード、次のナイトとセイント、そして最後の¬—セイントとキング。

誰も居ない。

つまり、ということ。

ならば、仕方ない。そう思い、腰につけていた剣を抜く。

刃を自分に向けて突き立てる。そのまま押し込もうとした瞬間、気付く。



何度自分を突き刺そうとしても、刺さらない。

渾身の力を込めて突き立てようが、骨にはほんのうっすらとした跡すらも残らない。

何故?スキルや称号で耐性が付いていたわけでもない。

となると場所?…ダンジョンの中だから?いや、なんとなくだが違う気がする。

ならばやはりスキル…そこまで考えてふと思い出す。

【傲慢】…「格下相手の攻撃の影響を受けない」?

いや、自分で自分を攻撃しているのだし…「」?

…そうか、思い出した。

昨日【傲慢】が強化された時に、効果が追加されていたじゃないか。

デメリットにすらなり得ないものだと思っていた。

なんなら、保険的なものだとすら。

」。

ボスを倒した直後に追加されたこの文言。

タイミング的にも、このダンジョンから出ようとしておかしくなかった。

そして実際私はそう行動し…そして、失敗。

そのまま…死のうとした。

最初はキングが居れば、殴り殺されようと思っていた。

なんなら剣を渡してやろうと。だが、実際には居なかった。

というより、気づいていた。

」のだから、ボスが復活しているわけがない。

どうやら、この世界…ダンジョン、もしくは神か?

どうでもいいが、そいつは私に死んでほしくないようだ。

もしくは長く生きて苦しんで欲しいのだろうか?…ははは。

…いいだろう、思惑に乗ってやるさ。

どうせ、ここから出ることすら叶わないのだから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る