第2章 邂逅
第11話 男装とか女装とか、イイよね。
スキルトン・キングの頭を粉砕し、レベルが上がったその時。
眠気が強くなり、意識が飛んでいく。
目を覚ますと、見慣れた赤と黒を基調とした天井が見える。
長く見ていると目が痛むが、やはりこの城ではここが一番安心できるな。
…それより、今日は1か月に1度のあの日。しっかりしないと。
そこまで考えて視線を落とし、気付く。…ああ、また寝ている間に魔法が解けていたか。
そのせいで服も乱れているな。早くかけなおさないと。
そう考え魔法をかけると、私の体が骨から肉体へと変わっていく。
黒い髪、黒い目、平均的な胸と体つき。
これを使わないと、自分が元人間だということを忘れそうになるんだよな。
そして今魔法で出したモノにサラシを巻き―魔法で小さくすればいいかもしれないが、プライドが許さない―、男性用の服を着る。
さらにベッドの横にあるフード付きマントを手に取り、服の上から羽織る。
…さて、今日はあの日だ。奴らに文句を言われたくないし、さっさと行くとしよう。
というわけで部屋の扉—無駄に装飾が施されている―を開け、廊下に出る。
相変わらず無駄に長い廊下だ。そこを進んでいくと、途中でいくつも視界の端に映る扉。
その奥では魔物たちが仕事をしていたり、休憩中なのか話していたりする。
また、その反対側の窓では、この城の外の景色を一望できる。
とはいえ、綺麗な自然というには少し赤や黒が多すぎるような気もするが。
そのまま歩いて行き、ひときわ大きな扉の前に立つ。
今日もどうやら最初についたらしい。他の奴らはいつも通りか。
扉を押し開け、部屋中央、長机の周りにある椅子—5つあるうちの一番入り口に近い場所—に座り、そのまま奴らが来るのを待つ。
最初に来たのは、いつも通りゴブリンキングだ。大きな体を揺らしつつ、私の斜め前に座る。
「■■、いつもながら早いな」
「そちらもな」
「やはり4体のうち、最も信頼できるのは貴様だ」
「お互いにな」
そんな軽口を叩く。お堅そうだが、以外に話の出来るやつだ。
次、時間ギリギリで来るのは悪魔…それも、いわゆるサキュバス。これもいつも通り。
「やっほ~♡二人ともいつも早いわね~♡」
「お前が遅いだけだ。どうせまた魔物を魅了でもしていたのだろう?」
「バレた~?♡」
全く。とはいえ、こいつはまだ時間を守るだけましだ。
そのまま歩いて私の横に座る。
そして最後の一体が来ないまま、いつも通り会議が始まる。
そうして30分程経過した頃、扉が開く。
そこに立つのは青眼白髪の普通の人間のように見えるが、その実態はスライム。
曰く、人間の体の方が寝る時に気持ちがいいらしい。
「いやぁ、ごめんねぇ…また遅れちゃったぁ…」
「寝坊か?あるいは飯でも食ってたか?」
「後者だねぇ…一応、会議の5分前には起きたんだけどねぇ…」
そういいながら私の前に座る。
問題はこいつだ。いつも遅刻するうえ、理由は「寝坊しちゃったぁ…」か「朝食を食べ過ぎて時間が経つのを忘れてたよぉ…」だ。
「あの方」が選んだメンバーなのだから、文句を言っても仕方がないことではあるが。
まぁいい、さっさと会議を進めるとしよう。そう思い、体を前に戻す。
その瞬間、声が聞こえる。
「■■よ。いつも通り迷惑をかけるな」
…この声は。
「魔王様、お仕事お疲れ様です。会議の方はつつがなく」
「うむ。見ていたぞ」
そう、魔王様だ。
「魔王様ぁ♡いらっしゃるなら言ってくださってもいいのに♡」
「全く、魔王様に何たる態度…もう少し離れよ!」
「おぉ、魔王様だぁ…いつの間に?」
「隣の部屋で仕事をしつつ魔法でな。ラズ、貴様はもう少し早く来ることを覚えよ」
「はぁい、がんばりまぁす…」
「それからベル。貴様は少し離れろ」
「えぇ~勿体なぁい…でも、魔王様がそうおっしゃるなら♡」
「ソイツ。お前にも迷惑をかける。いつも■■と共にありがとう」
「いえ、勿体なきお言葉!」
「そう固くなるな。お前は良いやつだが、硬すぎるのが玉に瑕だ」
「はっ、かしこまりました…いえ、わかりました」
「うむ、そのくらいで良い…さて」
魔王様が部屋の一番奥の椅子に座り、皆の顔を見る。
その瞬間、部屋にピリッとした空気が漂う。
「【色欲】、ベル」
「はぁ~い♡」
「【嫉妬】、ソイツ」
「はっ!」
「【怠惰・暴食】、ラズ」
「はぁい…」
「【傲慢】、■■」
「はっ」
「我、【憤怒】魔王たるサタンが命ず。我が悲願達成のため、全力を尽くすがよい!!」
「はぁ~い♡」
「お任せあれ!」
「頑張りまぁす…」
「かしこまりました」
—皆がそう応えた瞬間、目の前が暗くなっていく
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