第9話 卑怯とは言わせない
スケルトン・キューショナーの襲撃をどうにか受け切り、安堵した、その瞬間。
—私の眼前に炎の球が現れた。
これは…くらったらヤバそうだ。
そう感じた瞬間、私が咄嗟にとった行動は「全力で右へ跳ぶ」だった。
私が地面を蹴り、その体を宙に晒すと同時、飛来してきた炎は壁に当たり、爆発。
爆風に巻き込まれ私は吹き飛ぶが、幸い直撃は食らわなかった。
というかこれは…私の予想が正しければ魔法か?
キューショナーは恐らくアサシンの進化先だろうし、魔法を使えるとは考えづらい。
一体誰が…?
そう考え部屋を見渡すと、キューショナーの後ろの方にボロボロのローブを纏ったスケルトンを発見。
【鑑定】すると、どうやら「スケルトン・ウィザード」とかいうらしい。
まさしく魔法を使ってきそうな名前じゃないか。
そして、それと同時に気づく。
ウィザードの更に奥、部屋の一番奥に先へと続いていそうな扉がある。
恐らくだが、これは「試練」のようなものだろう。
「中ボス」ともいうかもしれないが。
この二体を倒すと更に先の部屋に進め、そこにボスが居るんだろうな。
となると、できる限りここで体力を消耗したくはない。
さっさと終わらせよう。
まず狙うべきは遠距離持ちかつVITの低そうなウィザードだ。
そう考えウィザードの方へ走ろうとすると、横からナイフが飛んでくる。
当然キューショナーのものだ。
簡単に弾けはするが、面倒だな…先に片づけるか?
…いや、先ほど打ち合った感じ、キューショナーはAGLこそ高いが攻撃力はそこまでなさそうだ。
であれば私が奴の攻撃をいくらくらおうがそうそう大きなダメージはないはず。
それよりは、MINやINTが極端に低い私にとっては致命傷となりうる、ウィザードの方を倒すべきだろう。
もう一度そう考えなおし、走り出す。
キューショナーの邪魔が度々入るが、毎回躱してウィザードを目指す。
ヤツに気を取られているうちに魔法を打たれでもしたら、一巻の終わりだ。
というか、現状私の接近を許しながら魔法を使っているらしい。
やつの体の周りに火のようなものが集まってきている。
詠唱とかいうやつだろうか?
まぁいい、使わせなければ問題はない!
しかし、残り数歩で剣が届くというところで、再びヤツの邪魔が入る。
今度は今までと違い、目の前に立ち短剣を構えている。
流石にこれを躱すのは骨が折れそうだ。
しかしこいつの対処に時間をかければ、比喩抜きに「ただの屍」になってしまう。
何なら火葬まで行われることになるだろう。
見送り人は骨だけ、なんてのは勘弁だ。
となれば、今は目の前のこいつを1秒でも早く倒すことに注力しよう。
…さて、さっさとこいつを倒して次の部屋に進みたいが、スケルトン・アサシンの進化系という私の仮説があっていれば、現状私よりもAGLが高くても不思議ではない。
だが、こいつは後ろにウィザードを庇っている状態だ。
つまり最大の武器は封じられている。
そして、「庇っている」ということは、ウィザードへの攻撃を防ぐ意思があるということ。
なら、わざとウィザードに向けて剣を投げれば奴はそちらに意識が向くんじゃないだろうか?
1対2の状態なのだ、卑怯などとは言わせないぞ。
それに、2階の時にミミックから鉄の剣がいくつか出たので予備はある。
ひとまず試してみるとしよう。
そう考えながら、ひとまず右手でキューショナーを攻撃。
相手が短剣で防御している隙に左手で【アイテム・ボックス】から鉄の剣を取り出し、ウィザードに向けて思い切り放り投げる。
当たるかどうかは別として、気さえ引ければそれで良い。
目論見通りヤツの意識が鉄の剣の方に向いたので、その瞬間に右手の剣で敵を一閃。
そのまま奴は動かなくなる。
《レベルが31に上がりました》
それを見届けつつ、ウィザードを切ろうと足を踏み出して気づいた。
なぜか奴が倒れている。
近寄ってみると頭蓋骨が割れており、近くには先ほど投げた剣。
どうやら、運よく頭に当たって砕けてくれたようだ。
《レベルが32に上がりました》
少し遅れて声も聞こえる。
さて、投げた剣を回収しつつ、次の部屋に向かうとしよう。
そろそろボスだろうか?
そう考えながら次の部屋の扉の前に立ち、押し開ける。
そこには、先ほどと同じ広さの空間と、その中央に立っている6体のスケルトン。
前方3体、後方3体と並んでおり、どうやら前者は
しかし、後ろの魔物は骨の騎士たちに阻まれて鑑定が出来そうにない。
とはいえ、どうやら白いローブを身にまとっているように見える。
先ほどの部屋と同じウィザードだろうか?
だとしたら非常に面倒だが…。
まぁいい、とりあえず後ろの3体に注意しつつ、ナイトたちを倒すとしよう。
それに、この階で最初に戦った敵と同じであれば、こいつらも1対1で戦えるかもしれない。
そうなれば大分ありがたいのだが…どうだろうか?
そう考えつつひとまず右側に居るやつへと突進。
少し前で止まり、剣を振るう。
当然守られるが、今回の目的はそこではない。
受け止められている隙に、左側2体のスケルトンたちを確認しておく。
微動だにしていない…かと思ったが剣に手をかけている。まずいな。
時間をかけるとそこの2体が加わるとか、普通にあり得そうだ。
できるだけ急ぐとしよう。
とりあえずこいつは、2倍近く高いステータスで剣をへし折りつつ無理矢理突破。
それと同時に、無理な使い方をしてきた剣が折れてしまった。
後ろの奴らはどうやら攻撃してこないようなので、急いで【アイテム・ボックス】から他の剣を取り出し、2体目に向かう。
少し急いで剣を振るっているので、また大分雑な振り方になっているが仕方ない。
というか、極論敵を倒せればそれで良い。
流石に受け止められるが、そのまま何度か連撃。
隙が出来た瞬間、頭に一撃。
《レベルが33に上がりました》
そうして3体目に向かおうとしたところ、後ろで何かが動く音がする。
確認すると先ほど倒したはずの1体目が動いている。
それに、先ほど剣ごとダメージを与えたはずの頭蓋骨が治っている。
まさかと思い今倒した2体目を見るが、流石に起き上がっていない。
では、純粋にとどめを刺し損ねただけなのだろうか?
それにしても何故回復までしているのか…あ、もしかして。
とある可能性に気づき、後ろに立っているスケルトンを【鑑定】する。
すると、「セイント・スケルトン」の文字。
どうやらこいつが、倒しきれていなかった1体目の傷を治したようだ。
とはいえ2体目が起き上がっていないのを見るに、死者の蘇生まではできないらしいな。
それなら、話は早い。
さっさと残り2体のナイトを倒してこのセイントたちも倒せばそれでおしまいだ。
というか、ボス部屋はまだだろうか?
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