第1章 ダンジョン
第1話 白い空間、転生
…目を覚ますと、そこは白い空間だった。
普通ならば「誘拐か!?」などと焦るところだ。
しかし異世界物の漫画やアニメの影響であろうか、なんとなく理解できた。
そう、ここはいわゆる神の間のような場所なのだろう。
そして、私は恐らく死んでいる。
しかし、死んだ時の記憶はない…頭でも打ったか?
…まぁいい。そうとなれば、王道展開ならすぐ神が来るはず。
そう考えて後ろを振り向くと、人型の光が立っていた。
…一瞬殴りそうになったが、おそらくこいつが神なのだろう。
そう考えていると、そいつはいきなり話し出した。
いや、話すというのは正しい表現ではないか。
声が聞こえる訳ではないが、そう言っていると理解できるのだ。
「頭に響いてくる」とでもいうべきか。
私はこの現象についてもう少し考えたいところだが、相手が喋り始めてしまったので一旦聞いてみることに。
…というわけで、やつがべらべら話していた内容をまとめるとこんな感じだ。
『新人の神が遊んでいて世界の理をおかしくしてしまった。なので、それを戻そうとしたのだ。だが、その時に発生した時空の
どうやら、私はただ巻き込まれただけらしい。
文句の一つも言いたいところだが、気分が悪くなって前言撤回されても困る。
今はおとなしく従っておくとしよう。
とりあえず異世界3点セットとでもいうべき【アイテムボックス】【鑑定】【言語理解】を頼む。
すんなりもらえたので、そのまま転生することに。
…そういえば、私の転生先は何になるのだろうか?
『ああ、言い忘れていたな。君の体は地球ではすでに死んでいるので、体を1から作り直すことになる。…だが、今の私たちでは少々事情があってあまり強い物は作れないのだよ。しかし君は人型が良いだろう?その条件を満たすとなると、スケルトンが関の山だ。まぁ、すまないがそういうわけだ』
…やはり殴ろうか。考えると同時、視界が暗転していく。
そうして目を覚ますと、今度は岩に囲まれた洞窟のような場所だった。
いわゆるダンジョンというやつのようだ。
そういえば…ふと立ち上がり目線を落とすと、そこにあるのはただの骨の体。
身長はおよそ150~160cmといったところだろうか。
自分の肉体全てがなくなったことは残念であるが、まぁ仕方ない。
幸い骨格は人間のままのようだし、歩行には問題はないだろう。
そう考え足を踏み出した、その瞬間。
《称号:【元異世界人】を獲得しました》
という声。…この世界には称号まであるのか。
そう思いつつ、そういえば忘れていたステータスを開いてみる。
…鑑定…あ、声がでない。声帯、ないのか。まぁ骨だもんな…
名前:なし
種族:スケルトン
Lv:1
スキル:【アイテムボックス】【鑑定】【言語理解】【成長加速】【思考加速】
称号:【元異世界人】
良かった。思うだけで使えるようだ。
それはそれとしてこのステータスは…うん、弱い。
この世界の平均がどの程度かはわからないが、これがクソだということはわかる。
MPやINT、MIN…つまりは魔法を扱うようなステータスは全滅。
その上、物理攻撃用のスキルすらないじゃないか。
せめて【剣術】くらいはあっていいだろうに。もしくは【棒術】とか。
一応STRが最も高いようだから、体術で戦っていく感じになるのだろうか。
あるいは石を投げるとか?どちらにせよ私はあまり得意ではないのだがな…
最悪戦闘は諦めた方が良いか…うーむ…まぁいい。
今は一旦、称号を確認しておこう。
称号【元異世界人】
元々別の世界で人間だったモノ。人間だったころの知識や経験を保有しているため、成長が普通よりいくらか早い。
効果:スキル【成長加速】を獲得。
なるほど。
珍しい物ではありそうだが、これで戦えるわけではなさそうだな。
となると…先ほど考えた通り、私の武器は拳かその辺の石というわけだ。
それも、前世で格闘技や武術の経験があるわけでもない。
ただの引きこもりだったし、学生時代もほとんど帰宅部。
流石に
まぁ、
とりあえず、ただの石でも良いから投げたりぶつけたりできるものは…っと。
…お、これはどうだ?
視界に映ったのは、床から天井まで生える
下から上まで入れると3m近くはありそうだ。
頑丈なら武器にしても良さそうなんだが…どうだろうか?
そう思いながら軽めに蹴ってみると、思ったより足が痛い。
これだけ硬ければ武器には充分だろう。
尖っている部分は持ちづらいし、極力真っすぐな部分を選ぶとしよう。
少し苦戦したが、どうにか折ることには成功した。
最終的には1.2mほどになったそれを、両手で握ってみる。
…うん、握り心地も悪くはないな。多分。
そのまま、今度は壁にぶつけてみる。
先の方が欠けはしたが、全体としては砕けなかった。
むしろやり方が下手だったのか自分の手が痛かったくらいだ。
その結果に満足して、そのまま初めての獲物を持って洞窟の先へと進む。
…そういえば、痛覚とかあるんだな…
10分後
しばらく歩いていると、今度は私と同じような見た目をした奴と出会った。
鑑定してみても「スケルトン」と出たので間違いはないだろう。
そんなことを考えているといきなり走って襲って来た。
思い切り殴ろうとしてきているが…
まぁ、元人間の私なら骨だけの相手なんて余裕だろう。
そんなことを考えながら相手の攻撃を回避
できなかった。普通に痛い。
…こういうのって、サッと避けて「今の、手加減だよな?」とか言うところだろ…
そういえばクソ雑魚ステータスなんだったか…
いや、そもそも体術なんかできないんだった…
というか、こういう時に備えてコレを持ってきているんだろ。
私は何をやっているんだ…全く。
そう考え、手に持った鍾乳石を振りかぶる
と同時にすっぽ抜けた。
すっ飛んでいく武器とすっと血の気が引く私。
一瞬死を覚悟したが、鍾乳石の
何とか倒せたようだ。締まらないなぁ。
《レベルが2に上がりました》
《称号【幸運者】を獲得しました》
…一応、確認するか。
名前:なし
種族:スケルトン
Lv:2
HP:20/20
MP:0/0
STR:6
VIT:3
INT:0
MIN:1
AGL:3
LUK:15
スキル:【アイテムボックス】【鑑定】【言語理解】【成長加速】【思考加速】
称号:【元異世界人】【知恵を持つ魔物】【幸運者】
称号【幸運者】
ただの幸運で敵を倒したモノ。
効果:LUKが10上がる
レベルが上がったことによりステータスが多少強化されているな。
それはそれとして、何でLUKが一番高いかな…しかもINTはあいかわらず0だし。
倒し方も相まって、なんだかとても間抜けなやつみたいじゃないか、まったく。
そんなことを考えていると、「カタッ」前の方からまたスケルトン。
このダンジョンにはこいつらが多いのだろうか?
鍾乳石はさっき投げたままだ。相手がたどり着く前に急いで回収しよう。
…よし、間に合った。
まぁ、レベルも上がったし、これさえあれば負けないだろう。
よし、いくぞ。
相手がこちらに来る前に急いで近づく。
今度こそしっかり勝ってみせる!
そう思って振りかぶり…今度は手からすっぽ抜けずしっかり殴れた。
そのうえ、なんと一撃で相手の骨を粉砕。
…これはこれで、なんだか現実味がないな…
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