第27モフり 無尻尾鬼蛇暗躍
――
辺り一面に広がる浅瀬の海に暗黒の空が広がるおどろおどろしい世界。それを包み込む光は深紅であった。そして目立つ物と言えばたったひとつの巨大建造物くらいしか存在ない。それは浅瀬の海に幾本の柱を高く建てた廻廊や橋に不規則に建てられた中華風の歪な形をした建物であった。
その巨大さはまるで絶壁のようでもあり、島のようでもあり、塔のようでもある。無数の
そのようなとこに住まう者達。それは一時の戦に囚われ哀れな時の
* *
「悪りぃな
「いえ、そうお気になさらず。私はあなたの右腕として働けるだけでいいのです。……それで今回は如何様な要件で?」
「ああ、実はな。例の伏魔殿に封印してある忌み物を扱えるだろう人間の小僧が居たとの報告を受けてな。一応相談でもしておこうと思ってな」
その言葉を聞いた
「ッ!! それはそれは吉報とも取れなくもない事柄ですね。しかし、人の子がですか……。ただの人の子であるのならば早急に
その言葉に
「流石だな、話が早くて助かる。その通りでどうやら神使の子狐共がバックについているらしい。その嗅覚だけは褒めてやりたいところだな」
すると、話の内容を理解できてない様子の人物がそれについて質問する。その声はとても重く、威厳の溢れたものであった。
「何だその忌み物とは? 我の知らぬ話を進めるでない。教えろ」
「おや、親父殿は知らなんだか? まぁアレが現れたのは時の親父殿は無惨にもちっこい蛇の姿のままで力を蓄えてたらしいから無理もないか」
と、彼女はやや嘲笑めいた口調で話した。それに対し無論のこと、聞き捨てる事などはしない。
「貴様……我を
「そうもなろうて、影絵で自らを大きく見せようとしてるのだからな」
彼女は当然の事だろうという物言いでハッキリと言い切る。実のところ
「ウッ! うぐぐ……悪いか?」
「いんやぁ? 別にそう言うわけじゃないさ。ただ
彼女は形式上は親父“殿”と呼んではいるが、親子による上下関係を一切感じておらず、どちらかと言うと対等であると考えているからでもあるのだ。
「うぅ……わ、わかった! そこに行けば良いのだろう!!」
「……ほれ、これで良いのだろう? さっさと教えろ!」
現れたのはなんとも可愛いらしい少女であった。頭のでこ丸出しの水色の長髪に麻呂眉。そして薄い水色の瞳を持ち、頬は蛇の鱗が少しある。後ろ髪に流れるように七匹の蛇が彼女の首に直接くっついていた。服装は水色のチャイナ服だった。
「……可愛い」
と、
「可愛い言うな! それは一番我が気にしている所だ!!」
先程までの威厳溢れた重い声はどこへなりと消えていき、ただただ愛らしい少女の声しかなかった。
「ま、俺様的にはこれでいい。
「はい。
一つは暴走の果ての死。
一つは均衡と調停。
多くの者が手にして扱えぬまま死ぬ。これが多すぎたために封印されし忌み物となった次第でございます」
忌み物について知る限りを語られた少女は、なんとも古いものであれば付いてきそうなありふれた話だと感じながらも幾分かは納得する。だがそれほどの代物と言うのならば些末な疑問も浮かぶ。
「……なるほどな。だが良くそんな物を扱える人間を見つけれたものだな。というかそれは本当にあってるのか? 見当違いだったという結果で終わりそうなものだが」
「いやそれはないだろう。報告してきのは
彼女はその問いをきっぱりと否定した。彼女としてもそれほどまでに信憑性が高いものだということだ。
「そうか……それで? 先の話はそれだけでは無いのだろう? ただの強大な力がどうこう程度の話をしに来たわけでもあるまい」
「その通りだ。実はな……その忌み物を扱えた奴は奈良と平安の
それを聞いた少女はピンとくる。あの頃の情景を思い浮かべて。
「ああ、あの時か、あの時代は良かったぞ。なんせあの時にうじゃうじゃ居た有象無象共を手当たり次第食い散らかすことで我の力も幾分か取り戻せたからな」
そう、良い思い出だとふける少女を無視して話を続ける。
「そしてあの
「
少女は
「ちげぇよ! あいつがこっち来たのはもっと後の話だ。……とにかく、手数はいくらあっても越したことはねぇって話だ」
「そ、そうなのか。やけにその
勝ち気あふれる彼女らしくもない、どちらかと言えば消極的とも言えなくはない考えに何か深い因縁でもあるのかと尋ねると共に敗戦でもしたのかと小馬鹿にしたような物言いで言う。
「そういうわけじゃねぇ。ただこれからの俺様達が起こそうとしている壮大な、ビッグイベントってやつには色々と準備が必要なだけだ。そうだろう? 親父殿」
「ああ、そうだ」
不敵に笑う彼女に対して少女もまたそれに賛同した。それは彼女らの死についてまつわることが関係しているためだ。
「苦節約千年ほどの苦汁と辛酸の時。まさに屈辱だった……。戦いの中で死ぬ。それ自体は構いやしねぇ。だがアレは納得できない。あんな卑怯な真似をされて死ぬなど、鬼の誇りにおいてあってはならねぇことだ。そう思うだろう?
そう演説の如く
「はい。全くもって仰る通りです。騙し討などもってのほか、真剣勝負による戦いこそが正義」
それを聞けた
「神使共から妖力を吸い取り、それを利用して俺様達は人間共を再び恐怖に陥れ、俺等鬼の時代を切り開く!」
彼女は右手を天高くに上げて開いた手で何かを掴み取るかのような動作で力強く握りこぶしを作った。
すると小声で
「……なぁ
「はい。ございますが……今朝お飲みになったばかりでは」
「うるさいやい! 我はそれが飲みたい……それだけだ!」
それを後ろでこそこそとそう話すのを聞いた
「……親父殿、よくもまぁ飽きずに飲めるもんだな。自分の死因だろそれ」
「仕方ないだろう!? 美味いんだから! お陰で飲む度にあの時のトラウマが蘇りながら飲んでおるわ。……でもやめられぬ!!」
少女は今もなお
「はぁ……ま、いいさ。それでだ
「はい。あともうしばらくかと……どうでしょう? かの人の子を
「ああ、なるほどな。いい案だ。やれるな?」
「はい。お任せください」
千年と幾年の時、機を狙って水面下で暗躍し続けた
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☆や♡といった感想等々よろしくおねがいします!!!
新年もわっしょい!!いぇああああああああ!!!!!
次回予告 若気の尻尾の至りは無分別☆
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