第20モフリ 人生最高の夏と尻尾
すっかり辺りは暗くなり、闇夜の天幕が世界を包み込む。街灯といった電気の光がない孤島には満天の星空が広がっていた。これほど美しい景色は街中に住んでいた頃では到底見れないものだった。
さて俺は今、
(これから夕食という名のバーベキューパーティーに参加する予定だ。無論バーベキューなのだから肉だ。肉、肉肉肉肉……っと、楽しみで仕方がない。ん? 野菜は食わないのかって? そんなものは無粋だとは思わないか? ふふっ)
そんなくだらないことを考えていると揺らめく青い炎が視界に入り始める。どうやら目的の場所に辿り着いたようだ。
「みんなー! 待ったァー?」
「おや
「うーん? ま、お片付けしてたのさ。ね、
「え、あっはい。そっ……すね」
「ふーん……そうかい」
(まさか、グルだったとか? いやこれは、長年の付き合いによる勘……とかか?)
「にしてもバーベキューコンロに狐火ですか。コスパいいっすね」
網の上にはジュージューと音を立てて、こんがりと焼けた肉や野菜に少しの海鮮類といった具合で
「まぁこれくらいはねー。それにもっと凄くて凶悪な炎を使うヤツだって居たんだから、これくらい大したことないよ」
と
「そういう問題じゃ……凶悪な炎」
凶悪な炎……。その言葉に何故か引っかかりを覚える。だが一体何のことだか思い出せない。なんだろうと、俺が深く考えそうなところで
「
「え!? いやそれくらい自分でやりますよ。子供じゃあるまいし」
「まぁまぁ、そう遠慮せずともいいじゃろ? ほれほれ……あーーん」
彼女は俺の否応なく強引にも肉を差し向けて来る。この少し強引なところは出会った時から困る部分ではあるが、それもまたヨシッ!! 全く持って問題ない。だがそう思いながらも恥ずかしく感じるが故に俺は目を瞑って口を開けた。
「あーーんッ……。ん! うまい!!」
「ほうか、それは良かったのじゃ。……
「え? ちょ、ちょっと待ッ! 助けてーーーッ!!」
と何故か彼女は
「お!
(
と俺は勝手にアニメや漫画での展開と
ま、やったこと無いんだけど。
「そういえば
「あ? ……良くわかったな、お前そういうの詳しいんだな。今どきのヤツにしちゃ珍しいんでねーの?」
「やっぱりそうなんですね! それって結構凄いですよね!」
「まぁな今から大体……千年前だったか? そんくらい前に手に入れた気がするな」
「ふへー……スケールが違うなぁ。千年かぁ、もっと他にいるんですか?」
「いるにはいるが後一体くらいだ。……言っておくが教えねぇぞ」
「えぇ。いいじゃないですか」
「……お前なんか変にグイグイくるな。気持ちワリぃからもう話しかけんな」
下手に話しかけ過ぎたため引かれてしまったようだ。
(おっと少し変だったか? あぁもう離れてしまった。仕方ない切り替えよう)
「
「ん? ああ構わないよ。それで?」
「
実際ここに転移する時には
「いや、そこにいるよ。
「え」
「
「にしてもあの二人、ベッタリくっついてる。やはり姉妹っていうのは仲が良いものなのか?」
「まさか、彼女たちはそうだったに過ぎないさ」
「そうなんですか。……あ」
そう談笑していると
「さて、そろそろとっておきの催し物でも出そうかの」
(とっておき? 一体なんだろう。当ててみようか、……わからん)
すると彼女は両の手を叩く。その瞬間! 辺り一面に狐火が出現する。自分たちの周りを囲んだ数多の狐火は、まるで満天の星空をプラネタリウムのように再現しているようでもあった。この光景だけでも中々に良いものであったが、これで終わりではなかった。
「おお! たくさんの狐火がこんなに!」
「まだまだ……これからじゃぞ」
彼女が両手を空へと掲げると、狐火はさらに空高くへと飛んでいき、宙を描き、螺旋を描いた末に数多の狐火は様々な
「こ、これは花火!」
「どうじゃ? 狐火版花火じゃ」
「相変わらずキレイだねぇ」
「よくもまぁこんな事しようと考えるもんだ」
「うぅ……お肉美味しいよぉ」
「わー! きれーな花火!」
「……素晴らしい手際です」
「儂もこれほどの物は見たこと無いのぉ」
各々色んな感想を花火を見ながらつぶやく。……一人だけお肉の感想を言っているが、まぁ仕方ない。今の
「ほんとに幻想的な花火だ。凄いとしか言えない」
「ほっほっほっ、そう褒めるでない。これくらいの事、そう難しいことでもないわい」
「ま、老練が為せる技ってことよ。な、そうだろ? 今年でもう千――」
「
と
「へっ何だよ。別にどうでもいいだろそんくらい」
「良くないのじゃ! はぁ……こやつは何時まで立っても反抗期が終わらんの」
「いつまでも乙女気分のオメェに言われちゃお終いだよ」
「……なんじゃと?」
「そっちこそ」
バチバチに睨み合う二人。感じるぞ! 妖術とかそういうのがよくわからない俺にも今の二人の体から妖力が溢れ、オーラの押し合いみたいな感じになっているのを!
(くッ! 凄まじい圧力だ! 意識を保つのがやっとだぜ!! ……なんてな、一度はやってみたかったんだ)
「まぁよい。さて、そろそろお開きにするとしようかの」
と
「そうかもうそんな時間か、楽しかったな。まさしく人生最高の夏って感じだった」
終わりと共に俺は今日一日で起きた出来事を振り返る。色々あったが、いざ終わるとなると何だか寂しい気持ちも湧いてくるな。
「主にそう満足してもらえてのなら良かったのじゃ」
「ええそれはもう! 最高でしたよ、色々と」
「じゃが明日からは明日からで忙しくもなるがの」
「ん? どういうことです?」
明日から忙しくなる。まるでその言いようは自分以外のすべて、つまりこの場の全員に言っているようでもあった。
「ああそうか、まだ言っておらんかったの。……明日、
「
俺はもしやと思い尋ねる。そして帰ってきた答えは……!
「そうじゃ。妾たち神使の狐が集う神界じゃ」
「――ッ!!?? うおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
(うおおおおおあああああああ!!!!! やったーーーーーーッ!!!)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
完
☆や♡といった応援等々宜しくお願いします!!!
さすれば私のポテンシャルが上がるぜ!!!!!!!
次回新章突入 出先は神狐界!
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