第13モフり 天夜に轟く尻尾は輪日
三人仲良く手をつなぐその姿はさながら親子のような後ろ姿であり、宇宙人捕縛の前姿。目的地に向かう道中の時間を会話で満たす。
「そういえば
「
彼女は胸を張ってまさに「えっへん!」という姿勢と表情でドヤる
(ほーーん……細かいことは教えちゃくれないのね。天才か……羨ましいものだ何かの才があるというのは)
そして凡夫たる人間であるこの俺、
最たる輝きを見せることのない不発弾の花火玉のような人間がこの俺だ。
「……そういえば少し気になったんですけど。
「あ? ……んなこと聞いてどうすんだよ。別にどうでもいいだろ」
「いやいやそんな事はないですよ。俺は……ほらッ! 今までそういう摩訶不思議なものというか、妖怪とかみたいな霊的な超常現象とは無縁の生活を送ってましたから。今じゃあ目に見えるもの全てが新鮮で輝いて見えるんですよ!」
俺は目を輝かせながら彼女に言った。
「……はぁ、そういうもんかねぇ? アタシには良く分からない感覚だな。まぁそれくらいなら教えてやれるさ」
すると彼女は少し真面目な顔をしながら話し始めた。
「まず、妖術ってのは何かに縛られたりすることはない。つまり炎や水を操る技しか使えないなんてことはないんだ。野狐が神使の修行過程で習得する基本妖術に、一部神使としてあるいはその個人の存在そのものが昇華もしくは覚醒を遂げた時に得られる固有妖術の主にニつが存在する」
「基本妖術はいくらでも習得しようと思えば広げられるが、固有妖術に限っては一人一つまでであり、その中身までは選ぶことも創る事もできない。完全なランダムって言ったら分かりやすいか?」
「はえーすっごいですねぇ。でもそこら辺の所謂格の違いってどうやって見分けてるんですか? やっぱり持ってる固有妖術の中身次第ですか? それとも妖力の総量とかですか?」
「……そこまでな話になるとどうとも言えるが一番わかり易いのは実績と血筋かな。他の部分に関しちゃ勤め先の場所によるかねぇ?」
俺はある言葉に引っ掛かる。
「勤め先……なんか派閥とかあるんですか?」
「まぁなんだ神使の狐以外にも妖狐といった輩もいるからな。それと派閥というよりかは神使以外にも職が存在すんだよ。妖術を扱えれる狐全員が神使できるわけじゃないからな」
俺の妖術についての知見が広まり深まっていく。
(ほぉ……レベル差というやつか神使に就職するにはエリート並でないと難しいかの二択ってところかぁ……)
「んでアタシの固有妖術は
「なるほどぉ。それで基本妖術って例えばなんですか?」
「まぁ
と言いながら彼女は目の前で狐火を出して見せるのだった。その炎の揺らめきを眺めながらは俺は考える。
(そうなのか……これで俺も色々と妖術関連の基礎知識は抑えられたかな? それにしてもなんというか凄い世界だな……。そういえば神使以外の職ってなんだ?)
「あの神使以外の職ってなんですか?」
「ん? あーそこら辺は人間の世界と同じかな」
(人間の世界と一緒? うーーん……もしかしてだけど商売とかそういうやつか?)
「お姉ちゃんたち! もう着いたよ! ここだよ!」
そうこうしているうちにどうやら目的の場所までたどり着いていたようだ。
目の前にあるのは見事なまでの巨大襖絵が広がっていた。ここに来るまでの道中には天井の見えぬ吹き抜けに広縁のような廊下の柵の先に広がる空間には無尽蔵に歪な形で繋ぎ合わされた和家が壁のようになっていた。
太陽といった光はなくとも幾多の部屋の明かりや提灯の一つ一つが豪華絢爛な世界を作り上げていた。改めて分からさせられる自分のいる世界がもうこの世のものでない場所に居るのだと。
「ここまで案内ありがとな、
「うん! じゃあまたねーーー!!」
そうして役目を終えた彼女は去っていった。笑顔でこちらに手を振りながら。
「バイバーイ!」
そう言い放ちながら自分もその笑顔に応えるために手を振り返す。
「それじゃ、入るか」
そう言い彼女は襖をガラッと開けた。その部屋の先には案の定、
しかしこの部屋今までこの屋敷で見たどの部屋よりも豪華だった。襖のみならず天井にも柄絵が施されており、柱には荘厳な彫刻が彫られていた。
「なんじゃ、もう来たのか。随分とまぁ早かったのぉ」
「早かっただぁ? お前なんか
「ま、そんなところじゃ。にしてもアヤツ忘れたのか……ほんにめごいのぉ」
とクスクスと笑う
「いいからさっさと用件を言えよ。そのために呼んだんだろ?」
「それもそうさな。しかしこの距離では話しにくいのう。しばし近うよれ」
と、彼女は言った。どうやら呼んでいないはずなのにこの場にいる俺も含めてのようだ。俺たちは
「そいでまぁ……その用件なんじゃがのぉ。二人にどうしても頼みたいことがあるのじゃ。」
「んだよ急に改まって……で何だよその頼みってのは」
(えっ
「まぁそのな。主たちにはある場所の調査を依頼したいのじゃ」
彼女は歯切れを悪くして言う。その顔はいつもどおりの笑顔なのに何か違和感があった。
「依頼ですか? でも俺には何もできないですよ。妖術とかないし」
「何そう心配するでない、あくまで調査じゃ。そうそう危険なことは起きぬよ」
「いやアタシがこいつのお守りすることになるんだが?」
「いいじゃろそれくらい。ほんに堅いのぉ」
「あぁ?」
(まずいなこのままでは収集がつかない気がする。そうだ! ここは思い切って割って入ろう)
そう思ったのも束の間、意外にも彼女はすぐに落ち着きを取り戻し
「んで、何の調査だ?ただ場所といえど色々あんだろ」
「場所は
「岡山……?
(なんそれ? まったくわからん……実際の地名が名指しで出てくると何かヤバそう気がするなぁ)
岡山という自分の住んでいた東北の地とはかけ離れた場所に聞き馴染みのない名前が出てきて困惑する俺だったが、彼女は続けて話す。
「奴はその昔は悪さをしておった鬼じゃったのじゃが、今では改心し立派な白狐として善行をしておるのじゃ」
「えッッ!!??」
(えッッ!!?? 鬼って狐になるの!? ……マジ?)
「まぁヤツはその中でも
「それでそこまで行って何すんだよ。まさか様子見てこいとかいう使いっぱしりじゃねぇだろうな?」
「まぁ結果としてはそうなるかもなのじゃ。その時は許してたもれ♡」
「なッ! ……チッ、しょうがねぇいいぜアタシは行ってやるよ」
意外にもすんなり了承した彼女だった。それは散々この手の出来事を経験しているが故の諦めなのか、それとも彼女の可愛さに怒りが抑えられたのかは分からないが、少なくとも後者はありえないだろうな。
(岡山か……名物とかなんだろ?)
そうして流れるままに俺は明日、岡山へ出向となったのだ。そしてその先で待ち受けるものは一体……?
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すみません!!更新遅くなりました!!!!
あと感想やレビューなどくれえええええ!!!!
よかったらでいいけど!!!
次回予告 行ったれ!75匹の尻尾を目指して!!
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