第11モフり 尻尾取り鬼ごっこスタート

壮大な地、無限の廊下にて何やら騒がしい音が聞こえる。ドタドタギャーギャーと喚き散らしながら廊下を走り抜ける二人の女性がいたのだった。


「こっち来んじゃねーー!」


「そんな事言わないでよーー!!! こっちおいでー!」


「お断りしますぅ!!!」


(クソッ!! 本来なら理想的なシチュエーションなのに女になったせいか、全然嬉しくねぇええええええ!!!! 俺の乙女心ピュアッピュアッやな!!)


 自らの本来の心と妖術の影響下による肉体のギャップに対し思わずツッコミを入れてしまうのであった。


(クッ!! どうしたらこの状況を振り切れるッ? どうしたら?)


 俺は考える、自らが辿たどるべき逃走経路を箇条書きの選択肢を脳裏に想像する。そこで問題だ、どうすべきだと思う?


 四択ーひとつだけ選びなさい。


 ①美少女時哉ときやは突如この状況を打破する画期的な策を思いつく。


 ②助けを呼ぶことで誰か助けてくれる。


 ③捕まる。現実は非情である。


 ④どこか適当な部屋へと入り込み逃走成功。


(現実的なのは④! だがもし袋小路の部屋だった場合は確実なバッドエンド! リスクが高すぎる上にこの距離感では無理だろう。)


(次に理想的なのは……②だ! だがそう都合よく助けに来るか? 青葉あおばさんあたりに会えればなんとかなりそうだが、この感じ的に無理だし希望的観測に則った行いは滅びを生むだけだ。諦めよう)


「だったらもう! ①しかねぇええなぁあ!! うおおおおおおお!!!」


 俺は全速力で走る。それは一見無謀と言えるが、ただ闇雲にというわけではない。俺は喜久彌きくやとの距離を一時的にでも置くことで④を応用した扉ワープを使うことにしたのだ!!


(この扉ワープで狐朱こあけさん近くの扉にでも行ければなんとかなるはず!!さぁ来い! 扉ぁぁああ!!!)


 目の前に扉が現れる。そのドアノブに手をかけようとした瞬間! 扉はフッと消えた。


「!? なぜ! 扉が消えたんだ!」


 困惑する俺の背後に大きな影が忍び寄る。


「それはそうさ、この屋敷の廊下は何も君だけが操れるわけじゃない。このボクもさ、そうだろう? 君が考えてそうなことくらい分からない訳ないじゃないか」


 彼女はもう追いついてきてしまった。そう四択の答えは【答え-③】だったのだ。絶望、突きつけられた答えは③ッ!! 現実は非情である!!


「さぁ! 時哉ときやくん♪ いや今は「時哉ときやちゃん」か♪ ボクと一緒にイチャイチャしようねぇ♪」


「スゥーーーッ……フゥーーー」


 俺は両手を高く広げてにじり寄って来る彼女を前にして深呼吸をする。俺は覚悟で溢れた目つきと表情で言う。そして彼女が飛びついてくる!


「あばよ、オレぇぇぇええええええ!!」


 その時俺の下に突如として扉が現れてそのまま開かれた扉の世界へと落ちていったのだった。


「あ、あれぇえ? 落ちてっちゃった。もぉー……まいっか! これからこれからーっと」


 そうして興味をなくしてへそを曲げた彼女はその場を去っていった。


「ぐあああああああああああああっ……ぶへぇッ!!」


 落下していた俺はベッドの上に落ちた。答えは②であった!


「たくっ襲われてる気配がしたから助け……ッてお前誰だ!」


「う、うーんここは? あ! 青葉あおばさん! どうやら助かったのか俺」


「だからお前誰だよ! なんであたしの……ってそのペンダントまさか」


「あぁーえっとなんやかんやあってな、こんなんなっちゃった。たはは」


翠蓮すいれんのやつか、あいつの好奇心旺盛さにはいとまがねぇな」


(しかしどうやらここは様子を見るに青葉あおばさんの部屋らしい。にしてもこの部屋……色々小物とか飾られているなぁ。ギターに……特攻服!? うぇぇ、でもぬいぐるみがある。うーんこの一貫性があるようでない感じはなんだろうか? なんと言い表せばよいのかわからないな)


「……なに人の部屋をジロジロ見てんだよ。気持ち悪りぃ」


「あーいやその、ここどこだろって思ってただけで他意はないですよ」


「ハッどうだがな……お前みたいな芋臭い野郎の言う事なんざ信用できんな」


 随分と辛辣な評価をするものだ。何が彼女の心をそうさせるのだろうか?

 その時俺はある事を思い出す。


(そういえば狐朱こあけさんが確か、俺に対して少し冷たい態度をとるかもしれないが気にするなみたいな事言ってたような? ……こういう事か?)


 なぜそうなのかは分からない。単に人見知りなだけなのか、過去になにかあったのか、こちらを警戒しているのか……どう考えてもどうとも捉えられるため何とも言えないのが現状と言わざるを得ないだろう。


(だが、こうやって面倒を見たりとかしてくれているし悪い感情があるってわけではなさそうなんだがなぁ……? うーんわからん)


「えっとぉそれで……どうしましょ」


「んなこと知らねぇよ。さっさと出てけ!」


「ええええ!! それは困りますよぉ。匿ってくださいよぉ!」


 俺はすがりよる感じで言った。


「ハァ? 何でこれ以上テメェをアタシの部屋に留めておかなきゃいけねぇんだよ。」


「渡りに船ってやつですよ! それに助けたって言ったじゃないですか」


「言ってねぇし!! 知らねぇし!! どうなろうと構わねぇし!!」


 若干ヤケクソ混じりに言う彼女であったが、横を向きながら右手の人差し指で頬をポリポリと掻き始めながら言う。


「はぁ……まぁいいさ。好きにしな」


「ぁ、はぃ。ありがとうございますぅ……」


(でもどうしよう……このままってのも気まずいしなぁ。なにかこう会話のタネでもあればいいんだが、見た所この部屋は自室兼趣味部屋ってとこか? うーんでもギターとかわかんねぇしな。特攻服に聞いてみるか?)


「あの……いいですか?」


「なんだよ。」


 ちょっと不機嫌気味に受け答えする彼女にそのまま質問する。


「あの特攻服ってファッションかなんかです?」


「あぁ? ……あぁアレな、まぁそんなとこだが文句あんのか?」


「あ、いえそんな別にそういう意味では」


(うぅ……だいぶドライだな……距離の詰め方がわからん。落ち着いて分析しようか、性格的には男勝りでやんちゃな感じで言葉遣いは荒いが面倒見の良さを感じなくはないな。)


「うーん……これはどうしたもんか」


「何一人でブツブツ言ってんだよ。気持ち悪りぃな」


(……もおおおおお!! マジでわからないよおおおお!!! こんなんでどうやってコミニュケーションを取ればいいんだよおおおおおお!!! うわああああああ!!!!)


 俺の心は今この瞬間破裂した。


(もう知らん!! 何がどうなっても知らない!!! ここは大胆に行動すべしだあああああ!!!!!!)


青葉あおばさん! 俺はもう覚悟を決めた!!」


「!? 何だよ、当然急に大声出して……何の覚悟だって?」


「そこにあるボードゲームで勝負だ!!」


「は、はぁ???」


 耐え難い緊張感とコミュ障が産んだ突発的な行動は果たして吉と出るか凶と出るか……。

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次回予告 五目尻尾並べ

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