第2章 日常は恋模様そして白昼夢

第9モフり 朝三暮尻尾

 ここは、そうか! 僕は勇士としてアクの大魔王倒さなければいけないんだ!


 さぁ剣を持とう! 退魔剣にてこの世の邪悪を祓い清めるのだ!


 最強パーティ4人構成で突き進もう! 僕あゆうすーーー。



「主よ、もう起きんか。朝じゃぞ」


「う、……ぅーーん?」


 俺が目を覚ましたその先にいたのは、純白の美少女狐であった。


「ん、あそうか。夢か今の……」


「なんじゃ? 夢を見ておったのか。良き夢であったか?」


「えーっと。まだ始まってすら無かったです...」


「そうか残念じゃったの。ほれさっさと起きて朝飯を取りに行くぞ」


「あ、ハイ……」


 俺は朝に弱く、意識が朦朧として今もなお夢を見ているかのような顔で動き立ち上がった。

 その様は実に無様で見るに耐えなかった。


「これ主よ。こっちを向くのじゃ」


「はい……?」


 俺はまるで生気のない状態で振り向くとポフッと眼前に白い世界が広がった。

 そうこの感触は覚えがある、つい昨日味わったものである。


「!?」


「ほれ。これで目は覚めたかの?あまりそのような様を晒させるのは忍びないのでな、急処置じゃ」


「……このままもう一度寝ていいですか?」


「ほッ! 妾の尻尾に抱き着いた状態でか!? そ、それはやめるのじゃ主よ」


「……」


 青年は立ち尽くしたまま浅い眠りへと落ちていく。


「……これ……これっ! 主よ、いい加減起きるのじゃ!!」


 そう言い放つと尻尾を引き剥がし、その尻尾で軽くビンタを喰らわせる。


「フベェッ!?」


 間抜けな悲鳴が上がる。俺はさながら心のなかでこう思った。


(ありがとうございますッッッ!!!!!!)


 さて、くだらぬじゃれ合いも終わり俺たちはは部屋を出る。そうして廊下へ出ると喜久彌きくやと出会う。


「あ! おはよーお二人さん。ていうかもう随分と仲が良いんだねぇ」


「そうじゃろうなぁ。なんせ昨日のこやつは妾の体を朝まで離さんで求め続けておったからのぉ」


「えッ!?」


 俺はギョッとした表情で狐朱さんの顔を見る。その顔はクスクスと怪しい微笑みでいっぱいであった。わざと勘違いされるような事を言ってきたのである。朝の報復だろうか、やはり一筋縄ではいかない恐ろしさを持った人のようだ。


「えーー!! そんな事があったんだ。君、奥手に見えて意外と大胆なんだねぇ」


「あっいや、そのこれは言葉の綾というか……ね! ご、誤解です! 尻尾! 尻尾のことですから!!」


「それはそれで十分そう言えるじゃろ。」


「え! あ、そうなんですか!」


 どうやら価値観の違いによる交通事故にあったらしい。すると俺の後ろの方から、片手で頭をかきながら歩き、眠気からかジト目でこちらに向かってくるものがいる。


「おまえら朝っぱらからうるせぇぞ。こちとらまだ眠くて仕方ねぇんだ。」


 とあくびをかく青葉あおばがいた。それに対し喜久彌きくや青葉あおばに向かって言う。


「この子がー! エッチなことを狐朱こあけちゃんにしたんだってーーー!」


 悪乗りして誤解を生む言い方を面白半分で言う喜久彌きくやであったが、青葉あおばという性格上そういった冗談はよく考えれば分かるかもしれないが、生憎彼女はどちらかといえば感情的なので冗談はあまり聞きにくい。


「!! ハァッ!? お前! 一体何してくれてんだよ!!」


「ちちち、ちがう! ご、誤解です!!」


 俺はオーバーなアクションで顔の前に手を振り続ける。ものすごいスピードで彼女が近づいてくるたびに振る手はどんどん早くなる。


「問答無用だ!! 死ねッ!! この変態野郎!!!!!」


 そう言い放った彼女は私飲めの前で少し体勢を低くし、そのまま右の拳を俺の顎下めがけて一気に振り上げる!! その見事なアッパーに俺の体は後ろに反って飛んでいった。


「あーあ、やっちゃったね」


「ほ、アレくらいどうということないじゃろ」


「あ゙? なんだその反応?」


 思ってた反応と違うという顔をする青葉あおば狐朱こあけは言う。


「ほんに主は頭が硬いのう。あのわっぱが本当にそのような事をするはずがなかろう」


「ま、そーだよねー。あぁでも! 尻尾は触り続けてたみたいだけど」


「ハァ?……アッ! お前らまたアタイをめたな!!」


 ことの状況に気づいた青葉あおばはすかさず喜久彌きくやたちに向かって怒りをあらわにする。


「ほほほ、単純で可愛い主がイケナイのじゃよ」


「そーそ! 僕がからかうといつも顔赤くするしね!」


「テメェは黙ってろ!! この誑しィッ!」


「おや、そいでわっぱはどこ行ったのじゃ?」


「「?」」


 彼女が言うように殴り飛ばされてのびているはず時哉ときやの姿はどこにもなかった。

 一体どこへ消えていったのだろうか?


「まぁ良いか、直にまた会えるじゃろう。ほれ主たちも飯を取りに行くぞ。あまり酒膳しゅぜんを待たせると気分を悪くするからの」


「おーーっとそれは怖いねぇ。じゃあもう行こうか」


「あ? 良いのかよあいつ探さなくて」


「どこへ行こうともここは妾たちの屋敷の中じゃ。探すのはそう手間ではない」


「なら……良いんだけどさ。大丈夫かあいつ……」


「あれれぇ? もしかしてあんなに怒ってたのに心配してるの? やっぱり青葉あおばちゃんは優しいなぁ」


「黙れって言っただろうがァッ!!!」


 そうして三人はそのまま食堂へと向かう。一体あの青年、時哉はどこへ行ってしまったのだろうか? その先はCMの後でーーーーー。


 蒙昧の限りを尽くし世界を混沌へと導く少年そのものこそ!


 バカボラビッチ少佐である!かのものはこの世の正義を貫くため!


 0点の答案をちぎっては投げ!ちぎっては投げる!


 その様は正しく世紀末蛇王!!


 さぁ!新発売ミレニアムフルポンチを買おーーーー。



「……買わなきゃって、え?」


 俺が夢から覚めたその先は見知らぬ部屋であった。


「どこココ? ていうかまた変な夢見たなぁ。何がバカラボラビッチだよ」


 そう夢の内容にケチをつけていると声が聞こえてくる。


「やぁ起きたんだね。心配したよ」


 不意に聞こえた声の主は翠蓮すいれんさんであった。


「え?! なぜここに?」


「何故も何もないさ。此処ここは私の部屋だからね」


「あ、そーなんですか。それは失礼なことを言いましたもんで……ってなぜ俺はここにいるのですか?」


「おや? その様子だとどうやら記憶が飛んでいるみたいだね。何そう気にすることではないよ。君はただ交通事故に遭っただけさ」


「いやそれ普通に気になるんですけど」


「まぁ細かいことは抜きにしてこれを飲むといいよ」


 そう言い彼女は俺にマグカップに入った飲み物を手渡す。その液体の色はさながら黒色。まるでコーヒーみたいだ。


「あの、これはなんですか?」


「何私の気、妖術……? ま、そんな物が入っただけのただのコーヒーさ」


「コーヒーなんや……」


(うーん、なんか妖術みたいなのが仕込まれてるって言ってたよなぁ? 大丈夫かな? まぁでも体に良いものだからわざわざ作ってくれたに違いない!!)


「それじゃあ、ありがたくいただきまーす。」


 ゴクッゴクッと少しずつ飲む。俺はコーヒーが苦手なため、まともにコーヒーは飲めないのだ。すると俺の体は元気を取り戻す。


「ふぅ……何だか体が活気にあふれるような……うん? なんだ体が急に!!??」


 俺の体は突然ウゴウゴと蠢きだしバキッバキッと骨の鳴る音が聞こえる。

 そうして体が落ち着きを取り戻すとある異変が起きていた。


「なんだったんだ今の?」


「君、この鏡を見るといいよ」


 そう手渡された手鏡を持ち自分の顔を除くするとそこには自分以外の人間が写っていた。


「!? え!! お、女の子になってるーー!!」


「フフフッ実験はどうやら成功のようだ。」


 なんと、翠蓮すいれんの人体実験により無理やり女の子に変えられてしまった俺は一体どうなってしまうのだろうか……。


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次回予告 マッドサイエン尻尾

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