未確認シャーク 弐
「犯人はサメですね。」
相変わらず意味不明なセリフを関田係長は相談者に言っている。警視庁特殊事件捜査係の長である関田忍。警視庁内では有名な厄介者だ。
本人曰く鮫事件専門家。事件となれば「犯人はサメか?」としつこく聞いてくる。
常識で考えれば犯人がサメなはずがない。しかし、昨年起きたある事件から様相が変わった。血のハロウィン事件。渋谷で起きたサメ男の惨殺映像は未だにネット動画にも残っている。
あの出来事を機に特殊事件捜査係が設立。事件解決の立役者である関田と篠原、つまり俺の二人が所属する部署はこうして出来上がってしまった。
「娘が2週間前から行方不明で、何度も問い合わせても捜査中とだけしか回答がなくて。それで今日はこんな所に案内されるし。」
捜査が2週間で進展するはずがない。しかし、相談者のその気持ちはよく分かる。こんな所。特殊事件捜査係はそう言われるに相応しいクソな場所だ。
「柳原さん。気持ちはお察しします。しかし、私も闇雲に言っているわけではありません。娘さんと連絡つかなくなった日に行方不明になった方が既に10名を超えています。しかも、特定の地域においてです。我々警察も幾つかの可能性を想定して動いています。その1つがレインシャーク。雨と共に降ってくるサメの被害にあったのではないか、と私は考えています。」
警察の想定にレインシャークなどといった頓痴気な物は含まれていない。お前の頭の中だけだ。と、俺は声に出さずに愚痴る。曲がりなりにもキャリアの関田に口答え出来る立場に俺はいない。
関田は5度目になるレインシャークの説明を始めた。俺は5度目のお茶をお出しする。
粗茶ですが、と言った。これからあの話を聞かされる柳原さんに俺はただただ同情していた。
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