田舎者の成り上がり

ペンペン

第1話

「冒険者の皆さん!よくぞお集まりくださいました」


白亜の塔を背景に、この国の王女バンジー・フローデンスが俺たち冒険者に語り掛ける。年齢は十代後半。身長は160cmほどだろうか?髪の色も瞳の色も薄い金色である。顔立ちはかなり整っており、美人というより美少女といった感じだ。肌はとても白く、まるで雪の妖精のような雰囲気がある。そんな彼女が俺たち冒険者に対して懸命に語り掛けてくれた。それだけでも田舎者の俺としては来た甲斐があった。なにせ故郷ではこんなにも綺麗な女の子と話す機会なんてないからな。


ここは迷宮都市クノソス。


アルトはここに迷宮に挑戦する冒険者として訪れたのだった。


この世界では突発的に迷宮が発生することがある。そして迷宮は放っておけば、中から魔物があふれ出す大災害を引き起こす。


そこで迷宮が発生した国では、その迷宮を抑え込むために周りに町を作り、冒険者を募るのだ。


そして、見事迷宮の最下層に住むボスを倒し、迷宮を消滅させたものには莫大な恩賞、そして地位と名誉が与えられるのだ。


そう、地位なのだ。これは平民貴族になるほぼ唯一の手段と言っていい。


そのために多くの者がこの町を訪れる。俺もその一人だ。


俺はここで成り上がるんだ。絶対に!それが俺に旅の資金を提供してくれた村のみんなのためになるのだから!


「それではこれより迷宮探索の説明会を行います!」


バンジー王女の声で我に返った。どうやら説明が始まるようだ。


まずは自己紹介から始まった。王女の話は簡潔だった。


基本的な冒険者としての守りごと、他人の獲物を横取りしない、他人に魔物を押し付けないなどを順守しておけばそれでOKとのことだ。そして冒険者は世界共通のランク分け、石級、鉄級、銅級、銀級、金級、エメラルド級、プラチナ級、オリハルコン級、そして最上級のアダマンタイト級だ。なお最上級のアダマンタイト級は歴史上でも数人、オリハルコンが全世界で数えられるほどなので、実質的な最上級はプラチナ級となる。


そして個人のランクに応じて国から様々な補助を与えられる。積極的な情報の開示、ギルドを通じたパーティの斡旋などだ。


なお俺は石級、デビューしたての新人だった。そのため国からの補助は期待できない。


だがそれでいい。それでこそ挑戦のしがいがあるってものだった。


「この迷宮はできたばかりの迷宮。また初めて迷宮に挑戦する方も多くいらっしゃると伺っています。故に分からないことも多く、幾多の困難が皆様を待ち受けるでしょう!でもどうか、恐れないで。」


バンジー王女はそういうとこちらの方を見た。冒険者はその実力に応じて服装も変わっていくものだ。必然石級の冒険者の服装はひどくみすぼらしい。そしてこういう場ではたいていはランクごとに集まるものだ。そのためか石級の冒険者は一か所に集まっていた。


俺たちのような駆け出しに特別お声をくださる所にバンジー王女のお優しさを感じる。ファンになりそうだ。


「ふふ」


見れば隣の少年も俺と同じようにうれしそうな顔をしていた。


「やっぱ、王女様っていいよな」


彼も一人で来ていたようなので小声で話しかける。こういうところから仲間は増えるらしいしな。自分から声をかけるのは大事。一人で出発した俺に村のみんなが教えてくれたことだ。


「・・・。僕を君のような者と一緒にしないでくれ。それより、まだバンジー様のお言葉の途中だぞ。口を慎め」


「わ、悪い!田舎者なんでな。そこら辺の作法には疎いんだ」


「ふん!」


そういって隣の少年は前を向いてしまった。


・・・。ちょっと寂しい。言い方はきついが、言っていることはもっともなので俺も前を向いた。


「最後に皆さんの健闘をお祈りします。ご武運を!」


バンジー王女による激励の言葉が終わり、冒険者全員が一斉に歓声を上げた。

こうして俺の冒険者生活は幕を開けたのだった。

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