第7話 甘い
玄関に入ってからの甘瀬さんの第一声が放たれた。
「暁くんって感じの家だね」
俺って感じがどんな感じなのかわからないが、とにかくそれが甘瀬さんの第一声だった。
……今、俺は初めて甘瀬さんの制服ではない私服の姿を見ているが、俺もそれに対して何か感想を述べるとしたら────オシャレ、ということだ。
勉強とかは得意で他の部分も天才肌なところが時々解見えたから俺の中で甘瀬さんはオシャレなどには興味が無いと勝手に判断していたが、どうやらそうでは無いらしい。
そんなことを思いながら、俺が先導して階段を登り、二階にある俺の部屋の前に甘瀬さんのことを案内した。
「ここが俺の部屋です」
「うん、入っても良いの?」
「はい」
俺は甘瀬さんのことを先に部屋に入れて、部屋のドアを閉めた。
……甘瀬さんが俺の部屋に居るという光景が、あまりにも現実感からかけ離れたものだったが、それでも甘瀬さんは実際に居る。
「暁くんらしい落ち着いた感じの部屋だね、本棚以外は」
「本棚は漫画とかが入ってるので……だから、勉強には集中できないかもって言ったんです」
「うん、問題無いよ……ベッドも置いてあるんだね」
「え?はい、俺の部屋なので」
甘瀬さんは何故か俺のベッドを数秒間眺めてから視線をローテーブルの方に移した、今から勉強をしたいということだろう。
何故俺のベッドを少しの間とはいえ眺めていたのかは気になるが、言及すると俺が細かいことまで気にしているみたいな感じに受け取られてしまうかもしれない。
そう判断した俺は、甘瀬さんと一緒にローテーブルの方に視線を移して筆記用具を出し、早速勉強を始めた。
「今日からは数学の方も勉強始めてみよっか」
「はい」
そして、俺はいつもの通りに問題集を十問解かされた。
数学に関してはまだ甘瀬さんから何も教わっていないが、英語よりは得意だという自信があった。
俺は小さな自信を持ってその問題を問題十問を解いて、それを甘瀬さんに渡した。
「────うん、丸つけ終わったよ」
「どうでしたか……?」
「十問中四問正解!最初から四割も正解できるなんて偉いね!」
「ありがとうござい────え!?」
次の瞬間、俺は甘瀬さんに後ろに回られたかと思おうと、後ろから抱きしめられた……え?
「あ、甘瀬さん!?褒めてくれるのは、嬉しいですけど……抱きしめるのはやりすぎじゃ無いですか!?」
俺が当たり前のリアクションを見せると、甘瀬さんは俺の耳元に甘い声で囁くように言った。
「本当はずっとこんな感じで偉いねって言ってあげたかったんだけど、学校でこんなことしたら注意されたりしてそれどころじゃ無くなっちゃうかもしれないから……ずっと我慢してたの、私って偉い?」
「え、偉いっていうか……それより、そろそろ離れてくれませんか?」
ということを言っているが、俺だって甘瀬さんみたいな綺麗で近づくと良い感じの甘い香りがする人に抱きしめられるというのは、当然嫌な気はしない……ならどうして俺がこんなことを言うのか、それは、今はあくまでも勉強中で、俺たちは別に恋人ではない……その辺りの線引きはしっかりしないと────俺が全く勉強に手が付けられなくなってしまう。
と思っていたのだが……
「離れないよ?このまま勉強教えてあげる、利き手の右手が動かせたら勉強はできるもんね〜?」
「このまま!?」
「じゃあ、まずこの問題から────」
そして、俺は抱きしめられながらも今解いた問題で間違っていた問題の解説を受けた────が、抱きしめられて後ろから柔らかいものが当たっているというのと、甘瀬さんの甘い声によってかなり記憶に留めるのが難しかった。
「────今教えたことを使って、もう一回解いてみて?」
「……はい」
俺は今教わったことを、そのまま問題で実践する。
……案外、やってみると記憶というものは覚えているものらしく、甘瀬さんが丸つけを終えてから言った。
「十問中十問正解!おめでとう〜!ご褒美に、私が抱きしめながら撫で撫でしてあげるね〜!」
そう言うと、甘瀬さんはい俺のことを抱きしめて頭を撫でて来た……今日の甘瀬さんは、学校で俺と二人の時ですら見せないほどに甘い雰囲気になっていた。
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