クールで美人な甘瀬さんは、俺に対してだけ甘々になる〜勉強を教えてもらうだけのはずがいつの間にか放課後デートをする関係になった〜
神月
第1話 クールで美人な甘瀬さん
「そんな……嘘だろ?」
俺は今、文字通り絶句していた。
今日は中間テストの返却日で、平均点以下を取ってしまった生徒は、その生徒達に勉強を教えることに立候補した人の誰か一人に勉強を教えてもらって、放課後は最低でも一時間はその二人のペアで勉強をしないといけないことになっている。
────そして、俺は今回苦手分野の数学と英語を徹底的に勉強したはず、だったがテスト結果は数学も英語も平均点以下となっていた。
「最悪だ、一時間も放課後に勉強をしないといけないなんて……」
……だが、まだ全ての希望を捨てるには早い。
勉強を教えてくれる相手によっては楽しい勉強会になるかもしれないし、話しやすい人とかだったら仲良くなって友達になれるかもしれない。
俺は担任の先生の元に行って、平均点以下だったことを報告しに行った。
「あー、
「勿体無いとか言わないでください、俺なりに結構頑張ったんですから」
担任の先生は男の人で、思ったことをすぐに口に出してしまうタイプの人だ。
ありがたい時はありがたいが、生徒に対して勿体無いやつと直接いうのは少しいただけない気がする。
「はぁ、まぁ良い……お前の担当は、
「えっ、甘瀬って、あの甘瀬さんですか?」
「このクラスにもこの学校にも甘瀬って苗字は一人しか居ないだろ」
この瞬間、勉強を教えてくれる相手によっては仲良くなれるかもしれないという俺の短絡的な考えは消えてしまった。
甘瀬さんと言えば白髪長髪の美人な人で、学力も学年二位、しかも基本的に口数が少なくてクールな感じの人だ。
勉強嫌いな俺とは絶対に相容れない人だ。
「あの……今から他の人にしてもらえたりとかって────」
「暁が甘瀬に直接言うんだったら認める」
「あー、遠慮しときます……」
直接なんて言ったら絶対に甘瀬さんに冷たい目で見られて、そんなことになったら俺はそのまま凍えて動けなくなる自信がある。
「甘瀬には放課後になったら図書室に行くよう伝えてあるから、放課後になったら図書室に行ってちゃんと甘瀬と勉強してこい……お前はやればできるんだからな、できるんだからな?」
「できるよな?みたいな感じで威圧してこないでください、でも頑張ります」
そして、俺は放課後までの間、放課後に甘瀬さんと図書室で勉強することだけを考えていた……勉強することだけを考えていたというとまるで俺が勉強したいみたいに思われてしまうかもしれないがそういうことではない。
甘瀬さんの勉強方針がどんなものか、だ。
こうなってしまった以上、甘瀬さんと勉強をすることは避けられなくなったわけだが……まず間違いなく言えるのは、その勉強方針はスパルタだろうということだ。
あの普段のクールぶりに加えて学年二位という成績、おそらく俺みたいな勉強嫌いに勉強を教えることを嫌に思いながらも仕方なくという気持ちで不機嫌になりながら、それでいて成績を上げるためのスパルタ教育というまさに俺にとって最悪な勉強になるだろう。
……いつもは楽しみな放課後が、今日は延々に来ないで欲しいと思っていた────が、時は良くも悪くも平等なもので、もう放課後が来てしまった。
「……せめて図書室に行くまでには勉強をする心構えを作ろう、そうすればきっと甘瀬さんも怒ったりしないはず────」
「私がどうかした?」
「甘瀬さん……!?」
甘瀬さんと話すのは図書室に行ってからだと思っていたが、まさかの甘瀬さんの方から教室の中で話しかけてきた。
「うん、私の勉強教える相手って暁くんで合ってる?」
「あぁ、合ってる」
……喋ってみて改めて思う、本当に同級生か?と。
思わず敬語を使ってしまいたくなる、それほどの年上感と落ち着き……だが、それらが勉強になるとそれが全てスパルタ教育に変わると思うと恐ろしいという他無い。
「良かった……私、実はずっと暁くんとお話ししたいと思ってたの」
ずっと、話したかった……?
……俺は学校で特に何かすごいことを成し遂げたことはない。
────ということは、もしかしてどこからか俺が勉強嫌いということを聞いて、その性根を叩き直そうということなのか?
……今すぐにも帰りたくなってきてしまった。
「それは、良かった……」
帰りたくなっていたが、もしルールを破ったら何かしらの点数が引かれてしまいそうなため、俺は大人しく甘瀬さんと一緒に図書室に向かった。
この学校の図書室は広く、一対一で勉強を教え合うのには打ってつけの環境となっている。
俺たちは適当な場所に隣合わせに座った。
「……じゃあ、まずは私なりに暁くんの学力確認したいから、この問題集十問解いてみてもらっても良い?」
英語の問題集……
「俺、英語苦手だから、その……」
「うん、とりあえず解いてみて」
「……」
俺はあの甘瀬さんに静かな怒りを向けられると思うと恐ろしかったが、どうにか俺なりの精一杯でその問題を解いて甘瀬さんにその紙を渡した。
「────うん、丸つけ終わったよ」
「……何点でした?」
「10問中3問正解だね」
……俺は今すぐにでも図書室から逃げようと椅子を引いたが、甘瀬さんは俺の頭を撫でながら言った。
「英語苦手だって言ってたのに三割も解けて偉いね!」
そう言いながら、甘瀬さんは優しい笑顔で俺の頭を撫でた。
……え?
俺は今までイメージしてきた甘瀬さんと現実との違いに驚くと同時に、今はただただ普段の甘瀬さんからは想像できないその可愛げのある笑顔に見惚れていた。
◇
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