母親からの電話1

 「三好さん、お母さんから、お電話がかかってきています。」

と看護師。

「はい!」

 疑問に思う間もなくナースステーションへ連れて行かれ、そこの電話口に出た。

「もしもし?」

「革細工!」

 母親は開口一番、そう声を荒げた。

「え?」

 訳も分からず混乱していると。

「革細工が要るの?!

要らないでしょ!

革細工って何なの?!」

「あの、キーケースを作ったり。」

「何なの!

そんなのが必要なの?!」

「思い出になるかな?」

「要らないでしょ!

そんなのに三千円も払わせないで!

今すぐ辞めて!」

 ガチャン!

 電話は切られた。

 ・・・つまりは革細工の作業療法にはお金がかかっていて、その請求が母親に行ったのか。

 そして母親は怒っている訳だ。

 残念だけど革細工はお終いにしようかな。

 徒労感と悲しみに襲われる。

 着拒の事、聞けなかった。

 あれは、わざとなの?

 それとも偶然とか?

 スマホも。

 なんで持って帰ったの?

 今、スマホを渇望しているのに。

 もしかして私からスマホを取り上げたの?


 それとも何か事情が有るの?

 もっとよく話したかった。

 でも着拒されているから、こちらからは電話できなかった。

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