副作用

 「・・・いません。

・・・くださ・・・。」

 私はやっと気がついた。

 男性患者の姉崎さんが公衆電話に用があるのに私がぼさっとそこに突っ立っていて使えないでいたのだ。

「あ、ああ。

ごめんね。」

と退いた。

 姉崎さんはものすごく声が小さい。

 それも、自分でわざとひそひそ喋っているのではなく普通に喋っていて、その音量が精一杯な様子だ。

 先ほども、ずいぶん長い事困らせていたようで姉崎さんなりに一番大きな声で必死になって退いて貰おうとしていた様だ。

 絶対に薬の副作用だと思うけど、ほんのちょっとずつしか歩けない男性患者が一人居る。

 姉崎さんの様に、ものすごく小さな声しか出せない人が姉崎さんとそれからもう一人、女性患者も居る。

 とんでもなく可哀相に思える。

 姉崎さんはスマホを持っていなかった。

 なぜならスマホが出る前から、ここへ入院していた。

 そして、その時、携帯を買えるほどのお金は無かったのだ。

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