宗教への誘い1
革細工仲間で別の病棟の女性患者から、
「素晴らしいお話が有るの。
ちょっとでいいから今度、院庭でお時間いいかな。」
と誘われた。
素晴らしいお話?
なんだろう。
ちょっと興味が有るな。
退院の仕方とかかな。
淡い期待を込めて指定された日時に指定場所へ行ってみる。
そこには約束した女性患者の他に知らない女性患者もいた。
「来てくれてありがとう。」
とか、もう一人の女性患者の紹介とか、今日の天気の話とかの後、本題に入ってきた。
いつの間にか、もう一人の方の女性患者が無言で私の後ろへ回り出て行かせないようにしている。
まず、
「人と話をする時は歩きながらではなく立ち止まるのが礼儀ですよ。」
と言われる。
なんでそんな身勝手な言い分を聞かなくてはならないのか。
そこから始まったのは宗教への誘いだった。
何も考えずに、ちょっと聞くと当然の様な事を言われるが、よく考えると間違った事ばかり言われる。
しかも全部上から目線で説教っぽい。
それから、あり得ないファンタジーも混ざっている。
新興宗教。
近代に興った新しい宗教で教祖がいて主に人と金を集める。
このような閉鎖空間でも新興宗教は入ってきていて、せっせと人、高じては金を集めようと必死だ。
しかし何故、こんな間違った事やファンタジーを信じ込んでしまう人々がいるのだろうか?
どうも学歴とか関係無しに入信している様なので何かのからくりが有るのかもしれないが見当も付かない。
ともかく、この人達の話は私には届かなかったので、
「すみませんが興味有りませんので。」
と言いながら信者達から出て行こうとすると
「誰に向かってそれを喋っているのですか?
相手に向かって立ち止まって喋らないと失礼でしょう。」
「立ち止まっていたら、あなた達の囲みが変化するだけでしょう。
そんな法に従う理由など有りません。」
私は後ろに回った女性患者をぐいっと押しのけて、その場を離れた。
じゃあ、なんで、あんた達は退院してないの?
こんな病気でこんな病院に閉じ込められて何が幸せだ。
宗教は御利益、全くないじゃ無いか。
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