第18話 その夜

 ヘッドセットを脱ぎ捨ててベッドに置いてリアルでもお腹がすいていた為ご飯を食べることにした。


 今は秋頃だから少し暖かいものでも食べようとキッチンに行き湯を沸かす。

 その隙にスマホで第五エリアの攻略を調べているところ。


「ふぅーん。第五エリアは山頂付近のステージなんだなぁ」


 攻略wakiを見ていると情報が沢山ある。

 やはり最後のステージだけあって皆が必死になって攻略しようとしたのが見て分かる。


 攻略の注意点なるものがあり。

 ・酸素が薄い設定の為、疲れやすくなるので魔法主体がいい。

 ・ボスは飛ぶのでカウンター勝負。

 ・近接だけだと厳しい。

 ・ボスを威嚇する笛がある。

 ・ボスは硬い。


「なんか倒すの大変そうだなぁ。俺だけでいけるかなぁ? いや! ネムさんの為だ! 俺だけで行かなきゃ!」


 ────ピィィィィ


 コンロの火を消してヤカンをもちお湯を注ぐ。

 温かいものっていっても結局カップ麺。

 今日の夕食はあ〇いキツネさんだ。

 それと、シルバーに輝く缶の金色のシュワっとする爽快な飲み物だ。


「ゴクッ。ゴクッ。ゴクッ。クゥァァァァ美味い!」


 それにしてもこの笛っていうのはなんだろうか?

 これがあれば威嚇してこっちに敵意を向かせられるってことだろう?

 絶対持ってた方がいいよな。



◆極一突グループチャット


世:第五エリアのボスに威嚇できる笛って何処で手に入るんですかぁ?


馬:ブッ! マジで第四クリアしたのか!?


世:はい。あれ? キンドさんがアイテム持ってきてくれたからクリアできましたよ?


馬:キンドエラいじゃねぇか! あれ? どこいった?


有:さっきまでいたのに?


風:どこに行きましたの?


宍:隠れた?


世:キ


世:ン


世:ド


世:さぁぁぁぁぁぁん!?


金:やかましいぃ! アホがァァ! 通知がうるさいんじゃボケェ!


有:あっ、いた


宍:なぜ隠れる?


風:やましい事でも?


金:ない! ワイは、マセラが恐い! それだけや!


世:えっ!? なんかすみません


有:かわいそう


風:なんでそんなこと言うんですの?


宍:キンド、それはあんまりだろう?


馬:ギャハハハハ! 何があった!?


金:聞いてくださいよ! マセラの元に俺が着いた時には既にエリアの最奥のボスと戦ってたんですよ!? あの雪深いエリアをズンズン進んで! 普通アイテムの靴履かんと行けないですよね! あれ!?


馬:そうだな。うん。


金:それでですよ。靴渡すやないですか、一撃でエリアボス屠ったんですよ。そんで、何言うのかと思ったら、エリアボス倒してきます! 言うんですよ。それがエリアボスやねん! って突っ込んだら、それならネムさんのご飯食べに行きましょ言うんですよ?


馬:それはそれは。


金:マセラがおかしいでしょ? しかも、氷の心臓出たんですよ。レアやないですか。売るかなんかすればいい金が入るのに、ネムさんに聞いてみようって言うんですよ!? 頭ぶっ飛んでるでしょ!? 装備品に使う奴やって言ったのに……! それなのに……!


有:なんか悲劇のヒロインみたい


宍:なんか泣いてる?


風:マセラ様素敵……


馬:なんか大丈夫か? まぁいいじゃねぇか。強いことには文句はねぇし、ネムちゃんを思う気持ちは本物なんだからなぁ。で、氷の心臓欲しい人いない? いないなr


風:ワタクシが欲しいですわ! 氷属性の杖を作れば氷魔法が撃てるようになりますわ! 是非、ワタクシに!


馬:ここにもこわい奴いるけど?


風:バカラさん? 昨日の飲み代徴収しますわよ?


馬:わかったよ。じゃあ、シルフィに。


世:で、笛なんですけど……


馬:俺っち達は笛使ってないよな?


金:せやね。シルフィおったからね。いらんよね。


有:たしか、作れる人が製造街に居るはずだよ?


風:その人の情報を集めたらいかがです?


宍:ワレがパン屋のルルちゃんに聞いてみよう


世:ありがとうございます! 情報集めてみます!




「なんかキンドさんに恐がられているなぁ。まぁ、いい人だから大丈夫か。それで、笛を作る人……」


『現天獄 笛を作る人』で検索してみたら何人か出てきた。

 一人は、人が嫌がる音を出す笛を作成。

 一人は、鳥類が嫌がる音を出す笛を作成。

 一人は、飛ぶ為の器官を麻痺させる笛を作成。

 一人は、天にいる者を落とす笛を作成。


「ふぅーん。威嚇っていう意味だと嫌がる音がいいのかなぁ」


 ピロンッとスマホに通知が来た。

 シルドさんからだ。


『ルルちゃんに聞いたら、ボスを攻略した人は製造街のピュールさんという人の笛を持っていったそうだぞ』


 お礼のメッセージを送り、スマホの現天獄のアプリメモに記載する。ここに追加しておくと後からインした時にも見ることが出来るのだ。


「ピュールさんの工房を探せばいいのか。この四人の工房の場所は載ってるからそれのリンクをメモに貼って置けば大丈夫だろう」


 なんか楽しいな。

 ゲームを攻略するってこんな感じなんだな。

 しかも、今まで関わったことがないような人と今関れている事にも感謝だな。


 そうだ。明にも礼をしておこう。


 なんか現天獄をした事で交流の輪が広がって、更に運命の人も見つけることが出来てすごい充実してる感じがするな。


 ちょっと前までは考えられなかった。


 あぁ。幸せってこういうことを言うのかなぁ。


 大の字に寝っ転がるとそのまま寝落ちしてしまったのであった。

 

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