第19話 笛の人探し
今日はリハビリの日だが、終わったあとに笛を探す為にインしていた。
「えぇっと? 製造街って……こっちか?」
街の案内板を見ながら製造街を目指す。
所々に煙突が出ていて煙を吐き出している。
少し鉄の匂いや焦げた匂いが漂い、甲高い鉄を叩いているような音が響いている。
どこにピュールさんがいるかは情報がないが、昨日のメモの四人の工房の場所を回ってみることにした。
まず一人目は人が嫌がる音を出す笛を作っている人。この人、そもそも人と話したりするんだろうか? 人間嫌い?
着いた場所は古めなプレハブのような所。
加工しているような木を切ってる音がする。
「すみませーん!」
ドスドスと小柄なおじさんが出てきた。
「なんだ?」
「あなたはピュールさんですか?」
「はぁ? いきなりなんじゃ! 違うわい! 失礼なやつじゃ!」
いきなり怒鳴り始めたと思ったら笛を口にくわえた。
────キィィイィィイィィィ
甲高いあの金属が擦れるような音が響き渡る。なんだか背中がむず痒いような、いやぁな感覚に陥る。そそくさとその場を離れることにした。
「あそこじゃなかったか。聞き方が失礼だったか?」
そりゃいきなりピュールさんですか?って聞かれたら機嫌も悪くなるか。気をつけよう。
次は鳥類が嫌がる音を出す笛を作っている人。
攻略情報に乗っていた場所をなんとか見つけた。
ここも古めだがログハウスのようなしっかりした作りをしている。
何か木を叩いているような音が響き渡っている。森の中にいるような木の香りが俺の体を包み込む。
なんだかすごいリラックス効果がありそうな香りだなぁ。
「おや? どうしました? お客さんかな?」
「あっ! いい匂いでつい。すみません! あの、つかぬ事をお伺いしますが、ピュールさんというお名前の方を探してまして」
パッと朗らかな笑顔で答えた。
「あぁ。それなら私ですよ。どうしました?」
「あっ! ピュールさんですか!? あの、第五エリアのボスの為に笛を作ったんですか!?」
少し考える素振りを見せて頭を振った。
「あぁ。あの攻略者が来た時の話だね。それはね、違うんだ。元は畑で鳥の被害があるからと鳥が嫌な音を出る様に作ったんだよ。攻略には使えなかったみたいだよ?」
「えっ!? そうなんですか?」
「うん。たしかねぇ。使ったのは、飛ぶ者みんなのバランスをとる器官を麻痺させる笛だったと思いますよ? なんか鳥類じゃなかったみたいで」
驚愕の事実が知らされた。
あの特徴で鳥類じゃない魔物なんだ、という衝撃に開いた口が塞がらない。
どう考えても鳥類の特徴だったのに。
たしかに硬いとかわけわかんないのあったけど。
「わかりました。ありがとうございます」
次に予定していた人のところに向かう。
ここから少し離れた工房であった。
メモしていた地図のところに着くとそこは白い四角い家で不思議なところだった。
辛うじて扉だとわかった所をコンコンッとノックすると細くて背の低い少年のような人がでてきた。
「あの、ここって空を飛ぶ為の器官を麻痺させる笛を作っているところで合ってますでしょうか?」
「はい。そうですよ。また攻略にでも使うのですか?」
「はい! そうなんですよ。なんでも、エリアボスを威嚇することが出来るとか」
「はははっ。まぁ、間違っては無いですけどね。実際は麻痺させる音を嫌がって襲ってくる感じなんですよ。でも、動きも鈍るし使い勝手いいと思いますよ」
腕を組んで自信満々の様子だ。
やはり自分の作った作品には自信があるのだろう。
「その笛頂いたいんですけど、おいくら支払えばいいですか?」
「この笛なんですが、結構作るのが面倒なので十万ゴールド貰ってたんですよ」
俺はそれを聞いた時に自分の所持金を脳内で思い出した。あれ? たしか、一万ちょっとだったような。
「あー。なるほど、準備しててもらっていいですか? ちょっとギルドに行ってから受け取りに来ます!」
「ふふふ。はい。わかりました。お待ちしています」
なんか金がないの見透かされてた気がするけど、まぁ、いいか。
優しい人だったということで、ギルドで資金を貰ってこよう。
ダッシュでギルドに向かうと攻略報酬を貰えた。貰えた額が四十五万ゴールド。攻略しててよかったぁ。
すぐさま出戻って笛の人の所に戻る。
「すみません! お金もってきました!」
「はい。これが品物になります」
ちょっと長い角のような形の笛で少し大きめだ。
「帯にこの金具をかけると手ぶらで済みますよ?」
「うわっ! 便利だ。ありがとうございます!」
早速帯にかけて持ち歩くことに。
「あのー。良ければ、これからも笛が欲しいかもしれないので、フレンド登録して貰ってもいいですか?」
「はい! 攻略者とフレンド登録なんて光栄です」
「いえいえ。こちらこそ。ありがとうございます!」
フレンドにチャールズと記載されていた。
「チャールズさん、ありがとうございました! また何かあったらお願いします!」
「マセラさんも、ご武運を」
手を振って別れると、その足で定食屋に行く。
「ネムさん、ミノタウロス丼頂戴!」
「あっ、マセラさん! 一番高いの頼んでくれてありがと! 収入、入ったの?」
「はい! 攻略した報酬が入ったんで。明日は、第五エリアを攻略して来ようと思います!」
「えぇ!? もう? はやーい! 頑張ってね!」
「はい! 頑張ります!」
ネムさんに応援されるなんて幸せ。
この笑顔を俺は守りたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます