第17話 一気に攻略 後編

 定食屋『膳』でご飯を食べた後は、第四エリアの攻略に行こう。

 なんだか体が火照ってていい感じ。


「ネムさんの為に! 次のエリアもクリアしてくるぞぉぉぉ!」


 そう宣言して街の外へかけて行く。


 それを驚愕の目で見送っている人がいた。



 

◆極一突グループチャット

 

金:なんかまたネムさんの為に!言うて爆走してったマセラを見てしまって気持ち悪くなった。


馬:ギャハハハ! アイツ元気だな? 昨日は落ち込んでたのかと思ったけど。


宍:マセラはやる気に満ち溢れているな!


風:頭痛い。もうマセラ様復活したんですの?


有:シルフィ、弱いのに飲むからだよぉ


風:すみません……


馬:まぁ、いいんじゃねぇの? なんかマセラは吹っ切れたんだろ?


金:なんかネムちゃんに聞いたら一個エリア攻略した後だったらしい……恐っ


有:朝からやってたってこと?


宍:さすがアスリートですな


風:私は今日は無理……かな


金:それが普通だって! あいつ異常だろ!?


世:皆さんおはようございます! 今から第四エリア攻略してきます! もう少しで追いつきますからね!


馬:うおっ! そうだ。マセラも入ったから見れんのか! 行ってら!


金:俺いらんのか?


宍:その調子で行ってらっしゃい!


世:キンドさん復活したなら全速力で付いてきてください!


金:お、おう! 追いつけたらやで! 追いつけなかったら一人で行ってくれや!


世:わかりました! では!


金:いや、全速は今日は無理やって……


馬:ギャハハハ! 頑張れ! キンド! 行くんだ!


有:いけいけー!


風:行ってあげてください


宍:行くのです!


馬:あれ? 第四って雪靴のアイテムないと埋もれないっけ?


金:あー。行かなきゃやないかぁ


 


 

「初めてグループチャットの通知来たから驚いちゃった。あれ、音声で入るからすごく便利だな。俺でもやりやすいかも」


 一応スピードを落として走っていたのだが、まだ追いついてくる様子はない。

 戦ってれば追いついて来るだろうと思い速度を上げた。


 第四エリアは雪山地帯だった。

 風は轟轟と吹き付け当たりが見にくい。

 雪に足を取られて動きにくいしなかなか進めない。

 なんか専用のアイテムがあったのかもな。


 木々が所々にあり、視界も遮られる。

 けど、寒くはない。体がほてってる。

 料理の効果かもしれない。ネムさんの料理に助けられたんだと心が踊る程の嬉しさを感じる。


 ────ズンッズンッ


 前から白い塊が歩いてくる。

 二足歩行のゴリラみたいな雪男?

 急に飛び上がったかと思ったら拳を振り下ろしてきた。

 

 横に飛んで何とか躱す。

 雪が邪魔だ。

 こっちも飛べばいいのか。


 思いっきり跳躍する。

 ここでもAGIが発揮されていて一気に雪男の頭上まで到達する。


「くらえぇぇぇ!」


 頭に居合からの連続の斬りつけをお見舞して地面に降り立つ。

 ダメージエフェクトが多少は出たがそこまでダメージは無さそうだ。


 次は足蹴りが飛んできた。

 雪を撒き散らしながらでかい足で蹴り上げてくる。

 しゃがんで避ける。


 懐に入り込んで足をまた連続で切り付ける。


「ぶおぉぉぉぉ!」


 痛かったのか怒り始めた。

 また拳を振り下ろし、暴れている。

 雪がそこら中にぶちまけられて辺りは真っ白の空間になった。


 やばい。見失っ────


 ────ズドンッ


 横から拳が出てきた。

 紙一重で鞘でガードできたが、危なかった。

 遠くに吹き飛ばされてまた埋もれる。


「くそっ。やりづらい」


「おい! マセラ! これをはけ!」


 後ろから白い靴を渡された。


「キンドさん! ありがとうございます! これなんですか?」


「なんですかやないわ! ここはその靴を履くのが常識なんよ! ちったぁ調べてからこいや!」


 その為にキンドさんは全力で走ってきてくれたんだろう。肩で息をしながらアイテムを差し出してくれていた。


「ありがとうございます!」


 白い靴を受け取り、履いて感触を確かめる。

 雪に沈まない。

 雪の上が地面みたいだ。


「おぉ! これすげぇ!」


「はよ倒してこい!」


「はい!」


 雪の上をかけて行きトップスピードにのる。

 全力で跳躍し、そのスピードのまま首筋に刀を叩き込む。

 首は体と別れてダメージエフェクトが溢れ出す。


 ドロップアイテムを落として消えていった。


 【レベルが上がりました。】

 【レベルが上がりました。】

 

 雪男の毛皮と氷の心臓というものだった。


「おっ。レア物が一個あるやん。氷の心臓はな、装備品に氷属性を付けられんねん。マセラは氷属性あるからな。いらんかもしれんけど」


「そうですね。後でネムさんに聞いてみます!」


「ネムちゃんはいらんて!?」


 結構な剣幕でキンドさんに怪訝な顔で詰め寄られる。


「あっ、そっか。戦わせる訳にはいかないもんな。クランメンバーに聞いてみます!」


「絶ッ対そのほうがええで?」


 キンドさんは何やら複雑な顔だったが、納得したような感じであった。


「よっしゃ! エリアボス倒す!」


「おぉい!」


「はい?」


「今の雪男がエリアボスや」


「えっ!?」


「お前どんだけ進むの早いねん! 埋もれながらもそのスピードって恐っ!」


「いやいや、恐くないですよ? じゃあ、戻りますか! ネムさんの手料理で元気出そう!」


「お前、昼も食ったんやろ!?」


「食べれるなら何度でも食べますよ! 一緒に食べましょ? そのほうがネムさんも潤うし!」


「いやや! この子恐い!」


 キンドさんが俺から逃げるように走っていくが俺は楽しそうに追いかけた。


「キンドさん、まってぇぇ」


 さながら浜辺で追いかける恋人同士のように。


「いやや! 恐っ!」


 無事に第四エリアを攻略して夜ご飯もネムさんの定食をかきこんで幸せな気分になったマセラであった。


 あぁ。ネムさんの手料理一日二食も食べれるなんて幸せだぁぁ。

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