第16話 一気に攻略 前編
オフ会の次の日。休みの日だったが、朝早く起きて朝活を兼ねた朝攻略に行こうと気合を入れていた。
若干酒臭いが仕方がないだろう。
そういえば匂いってどうやって設定されているんだろう?
ネムさんは甘いような香りがした。
この前、ソラさんだったか昔つけてた香水みたいな匂いがしたのは。
もしかして、今の自分の匂いが適用される? ネムさんは多分そのままのいい匂いなんだろうけど。ソラさんはあれの香水を現天獄内でつけてるって事なんだろうか。今度聞いてみよう。
流石にキンドさんは寝ているだろうから俺だけで行こう。
意気揚々とベッドギアを付ける。
今は朝のようだ。現天獄の方も朝日が降り注ぎ鳥が囀り、味噌汁のような匂いが漂っていきて日本の朝を彷彿とさせる。
この現天獄は現実世界一日24時間の間に二日経過する仕様となっている。だから、ゲーム内で一日経っても現実では半日しか経っていないので夜型の人でも朝型の人でも楽しめるのだ。
ちなみに、数時間ずつズレる仕様になっているので、インしてみないと今が朝か昼か夜かは分からない。
「おおっし。行くか!」
街を出て第一、第二とエリアを抜けていく。
第三は火山が吹き出る暑いエリアだった。
出現する敵も熱そうである。
ゴーレムが体から火を吹き出しながら襲ってくる。魔力を刀に流し切りつける。
少し凍るがすぐに溶ける。
だが、ダメージは蓄積されているようで動きが鈍くなった。
振り下ろされた拳を少し距離をとって避け、魔力を込めた刀で何度も斬りつける。
後ろを取り、後ろからも斬りまくる。
ようやく倒れ、アイテムがドロップした。
火鉱石というアイテムだった。
なんか普通アイテムっぽいな。
「あぁー。やっぱりキンドさんいないとドロップは期待できないな。しかも、魔力がもうない。使いすぎたなぁ。通常攻撃でやって行くしかないな」
俺はもう最速を目ざしているので走って極力魔物には会わないように行っているんだが、いいのやら悪いのやら。
火を吹きながらゴーレムが立ちはだかるが、胸にコアらしきものがあるのを発見した。そこをすれ違いざまに速度を乗せたまま何度も切り裂くとすぐに倒せた。
スキルが発動したおかげもあるようだ。
更に駆ける。
通常ドロップしかないなら取得するのも面倒だ。
トップスピードで駆け抜けながら炎ゴーレムを倒してそのままにして行く。
炎の体のウルフも立ちはだかった。
面倒なのでそのまま通り過ぎざまに首を切り落としていく。
こういう生き物系の方がクリティカルが出るから倒しやすいな。
四体くらいいたが、スピードにものをいわせて全て斬り伏せる。
溶岩エリアは終わろうとしていた。
立ちはだかるエリアボスはデカいプテラノドンに似た形をした火の鳥。
「おぉう!? 某アニメのボールに入ったり出たりするモンスターみたいななりしてんな!?」
その言葉に怒りを感じたのか俺の方目掛けて突進してきた。
俺も負ける訳には行かない。
トップスピードで跳躍して迎え撃つ。
紙一重で翼を避けて翼への連撃で対応する。
「ピェェェェェ」
少し体制を崩した火の鳥だったが、体制をたて直して空中でこちらの様子を伺っている。
俺も隙を見てインベントリを確認する。
回復薬の類は入っていない。
そりゃそうだ。買ってないもの。
もちろん魔法の回復薬は入っていない。
紙装甲の俺は何度も炎でダメージを受ける訳には行かない。ということは、短期決戦しかない。少し回復した魔力を使って最後の攻撃と行こうか。
火の鳥は今がチャンスとみたのか突っ込んできた。こっちも迎え撃つためにトップスピードで跳躍する。
翼が迫るが、今度は冷気を纏わせた刀を盾にしてダメージを軽減して属性攻撃の連撃を放つ。
これは効果があったようで、体制を崩して地面に激突する。
着地したと同時に火の鳥の元へと向かい、とどめを刺す。
ドロップアイテムが出てきてホットチキンという辛そうな赤い肉であった。
【レベルが上がりました。】
【レベルが上がりました。】
「うおぉおぉ! これをまたネムさんに調理してもらおう!」
調理するのはネムではなくその父なのだが、この男はその事には気がついていないのだ。
まだ時間的には早いがHPが少し心配なので街に戻ることにしたのであった。
途中で自分が落としていたドロップアイテムを拾いながらトップスピードでかけて行く。
この界隈にはもうプレイヤーはほぼ居ないのだ。新規参入者は進んでいるプレイヤーに引っ張られて攻略するのが殆どのため現世ステージに何回も来ることは無いのだ。
街に戻るとまだひるだった。
「ネムさん! こんにちは! ご飯食べに来ました!」
「あっ! マセラさん! いらっしゃい! 今日は何にする?」
(名前呼んでくれるなんて幸せぇぇ)
「あ、あの! これを調理してみてくれないですか?」
俺はドロップアイテムのホットチキンを出してネムさんに渡す。
「えぇ!? すごーぃ! わかった! これで作ってみるね!」
そう言って奥に消えていった。
ネムさんの笑顔を見て幸福な気分を味わいつつ、料理を待つと丼を持ってやってきたネムさん。
(はやっ! きっとゲームだから早いんだと思うんだよね。)
甘いタレで味付けされたその丼からは香ばしい匂いと甘い香りがして食欲をそそられる。
「マセラさん、召し上がれ!」
「いただきます!」
幸せをかみ締めて丼をかき込むのであった。
あぁ。ネムさんの料理最高。
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