第14話 リアルで集合
昨日はあぁ言ったものの、俺はリハビリと家の往復をするだけのオッサンだ。現役時代のギラギラした服は着たくない。
まず、会いに行くための服を買わないといけない。今日のリハビリが終わったら買って帰ることにしよう。
何となく平日はリハビリが忙しくてゲームをやることが出来ず、また週末が近付いて来ていた。
そんな時、現天獄と同期させていたアプリからの通知がスマホに入っていた。
『この前のオフ会の話なんだけど、今度の土曜の夜六時からでどう? 場所はここ↓』
差出人はバカラさんだ。場所を示す地図までついてる。あの人がリーダーだからこういう事も取りまとめてたりするんだろうか?
オッケーですと返信して洋服を見繕って適当に買う。三十のおっさんだからあんまりギラギラした服じゃなくてTシャツにジャケット、パンツに肩掛けの小さいバッグでいいでしょ。
普段ジャージしか着てないからなぁ。
杖あるからいい格好してもしょうがないんだけどね。
それでも、週末を少し楽しみにしている自分がいた。
そして、週末を迎えた。
オフ会の場所は日本中心部の第一都心部の二区の駅の近くの店だった。
電車で移動してゆっくりと徒歩で杖をついていく。
六時まではあと二十分ある。
このペースで歩けば丁度いいだろう。
歩き方が不格好だが、一生懸命歩いているのだ。
ようやく着いた店はこじんまりとした焼肉屋さんであった。名を「肉肉肉」だそうだ。ふざけているのかと心配になってしまう。
店の前でぼんやりと立っているとビシッと髪をオールバックに固めたスーツの人が店の扉を開けた。
ジィって見て居ると、こちらをチラッとみて怪訝な顔をした。
「もしかして、ここに用ですか?」
そう聞かれた俺は違いますと言いそうになるが言葉を飲み込む。
「は、はぃ。ゲームのオフ会で……」
「ギャハハハハハ! おいおい! 待てよ! あれ!? 世良じゃね!? あの野球の! そうだよな!? えっ!? マセラって……あぁ! そういう事!? マジかよ!」
あぁ。この反応はバカらさんだなと思い口が引きつるのがわかる。知ってる人はそうなりますよね。
バカラさんはしばらく騒いで納得はすると手招きした。
「マセラ、いやぁ驚いた。そして納得したわ。あの速度で動けるのはお前の動体視力があったからだったんだな。有名だったもんな? 選球眼がいいって。そして、去年だったか? 事故にあったのは?」
「はははっ。よくご存知で」
「俺っち野球も見るからさ。付き合いで野球の話がよく出るだろ? だから、見るようにしてたんだ。ましてや、世界で活躍した人だもんな。多分みんないる。中で話そうや」
「はい」
少し縮こまりながらも中に入る。
ホントにこじんまりとした店で他にお客さんはいない様子だった。
「おいみんな! さっき店先であった。この人がマセラだ。知ってる人、居るんじゃないか?」
アロハシャツみたいなのを着ている小柄な人、ハンチングを被っているおじ様、高級そうな仕立てのいい服を着ているクルクルヘアの人、そして、奇抜な模様の服を着ている小柄な子。
その人達がテーブルを囲んでいた。
奇抜な子以外が立ち上がって目を見開き、アハロシャツは指をさして声を上げた。
「世良 真やん! WBC出てた人やん!」
「こりゃ驚くであるな。まさか本当にプロのアスリートだったとは……」
おじ様が口を開けて驚いている。
そして、おれも驚いたことがある。
式典で会ったことがある人が居たからだ。
「シルフィって、風花お嬢様だったんですか……」
「マセラ様が、世良様? あぁ。なんと……運命を感じてしまいます。神よありがとうございます」
なんだかよく分からないが、ちょっと変なスイッチ入ってる?
「えっ? みんな知ってるの? 僕知らない」
この子はアルトだな。
知らないのも無理はない。野球に興味なければ知りもしないだろう。
初対面はこんな感じだった。
まず席に座りそれぞれ自己紹介する。
バカラは
アロハのキンドが
おじ様のシルドが
お嬢様はシルフィ、
奇抜なアルトは
なんか合コンみたいだな。
そんな感想を抱きながら乾杯した。
「いやー、驚いたわ。まさか、有名人だとは」
「ちょっと躊躇ってた理由が分かったわ! そら、なんか気まずいやんな? 報道が結構あったし」
バカラとキンドが俺の話を振る。
話さない訳にもいかないものだから、当時の話一通りする。
「まぁ、これで皆マセラの大体の事情がわかったわけだ。じゃ、俺たちの話もするか」
バカラさんが仕切ってくれたから話がスムーズで、バカラさんはなんと社長さん、キンドさんは銀行員、シルドはバーマスター、シルフィは事務で、アルトは服飾関係の仕事らしい。
みんな凄いなぁ。
俺、今無職。
あれ? ネムさんを迎え入れるのに無職ってやばくない?
ネムさんが「無職な人とは将来が不安で結婚できない!」って言ったらどうする?
俺はゲームクリアする前に仕事を探さなければならないのでは無いか?
酒が入っていることもある急に突っ伏して絶望するのであった。
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