第11話 犬猿の仲
『突然ですが、本日の正午から現世ステージの一~五のエリアでそれぞれのエリアに生息している魔物の一体のみ大量に増加させます! 名付けて多様性とは真逆の
「なんじゃそりゃ!」
俺が突っ込むが、誰も反応してくれない。
定食屋の前でだらけていた所に天からそんなアナウンスが流れた。人々が行き交う中でいきなりそんな突っ込む人がいたら。みんな見て見ぬふりをするだろう。
皆こちらを見て警戒している。
俺に対する色んな情報が錯綜しているからだろう。
このゲームを初めてまだ数日だっていうのに、俺は有名人になってしまったみたいなのだ。
「おぉい! ネムちゃん大好き侍君。めちゃくちゃ有名になってないかい?」
絡んできたのはチュウメイだ。
「そう……みたいだな」
「マセラさぁ、なんで寄りにもよって極一突なんだよ?」
もう俺の動きを知っている。
耳が早いなチュウメイ。
「俺な称号で【速さを求める者】っていう称号を得てるんだけどな? クランに入る条件がその求める者っていう称号がある人だったんだ。活動方針も自由! 俺の為にあるようなクランじゃないか! そう思ったんだ」
「なんかよぉ、俺が聞いた所によるとな。癖が強すぎて他のクランと揉める事もあるらしいぜ?」
極一突の人達を思い出す。
たしかにあまりガラは良くない。
バカラさんが一番ヤバい格好をしている。
でも、あの人達は基本的に仲間思いだし優しいと思う。表現の仕方が独特なだけ。この前の顔合わせも心地よかった。
「大丈夫だよ。あの人達はみんな優しいよ? なんかまずかったら抜けるよ」
「まぁ、自分から接触したんだろうから考え無しではないんだろうけどさ」
「うん。大丈夫。それより、イベントに参加するために来たのか?」
「あぁ。第五エリアにはエリアボスがめっちゃ出るらしいからな」
第五は俺はまだ行けないな。
「俺は第一で大人しくしてるよ」
「まだ第二をクリアしてなかったか?」
「いや? 第二はクリアしたから第三までは行ける。でも、俺は第一がいい気がしたんだ」
「そっか。ならまたな! 俺はクランのメンツと行くから」
「またなぁ!」
手を振って別れると俺は第一エリアに向かって移動する。
移動しているとぞろぞろと目立つ集団が近づいてきた。
「あっ! 皆さんも参加されるんですね!?」
「というか、マセラの戦い方を見に来た。見学ツアーだ。ギャハハハハ!」
目立つ集団はもちろん、極一突の面々であった。皆、俺の戦い方を見たいと言う。キンドさんが報告したのかな? そんなに変な戦い方かな?
「ワイは別に変に報告はしてないで? ただ、マセラは即戦力になるでって話したら見たいって言うからやな。連れてきたんよ。ちょうどイベント始まったからな。第一で狩るんやろ?」
俺が首を傾げたりしてたから疑問を抱いていたのが分かったんだろう。それに対して答えてくれた。
「はい! なんか第一で狩るのがいい気がして。経験値的には第三まで行った方が良いんでしょうけど、なんとなく」
「ほぉ。自分の勘ってやつだな? 良いじゃねぇの! 行こうぜ!」
バカラさんが両手を広げて大声で言う。
それを見ていた周りの人達はなんだがコショコショと話をしているようだ。
皆によく思われてないってのは本当みたいだな。
「あれー? バカラじゃなぁーい。相変わらず攻撃力馬鹿やってるのぉ?」
ちょっと挑発気味に近づいてきた人物を俺は知らない。だが、周りのざわめき具合を見るに有名人のようだ。
少し小柄だが、薄黄色の鎧を身にまとって輝きを放っている。心無しか一昔前の香水のような匂いがする。
その後ろにチュウメイがバツが悪そうにくっ付いているのを見つけた。あぁ。そういうことね。『白雷の空』のクラマスがこの人なんだ。
「あぁ!? チビがうるせぇよ! お前だって相変わらず、弱えのに前線に出張って死んでんだろ? ドMなの!? ギャハハハハ!」
「うるっせぇなぁ。お前らなんて前線にも来れてねぇだろうが!? 一人抜けて穴ができたからクランが機能してねぇんだろう?」
「ざーんねーん。コイツが新しい最速です。前のやつは半端だったが、コイツは別モンだから楽しみにしとけぇ! ギャハハハハ!」
「あんた、ホントにコイツらのクラン入ったのか? まともじゃねえぞ? やめておけよ?」
白雷の空のクラマスが俺に近づいてきてそう助言する。だが、俺は心が揺らぐことは無かった。
「お言葉ですが、俺の考えは揺らぎません。知っていると思いますが、俺は居酒屋のネムさんと結婚するつもりです。その話をした時、バカラさん達は笑ってイカレてるといいました」
「そうだろう? そんなヤツらと────」
「でも、無理だとはいいませんでした」
チュウメイが目を見開くのが視界に入った。
そう。親友であるチュウメイでさえ、俺に無理だから止めておけと言ったんだ。
「だから、俺はこの人達について行く。いや、一緒に進もうと思ったんです!」
俺はまっすぐ白雷の空のクラマスを見据えて宣言した。
しばらく見つめると目を逸らしため息をついた。
「はぁぁ。良い人材みたいだ。名前は?」
「マセラです!」
「僕はソラっていうんだ。また前線で会おう」
「はい!」
これは、マセラがクランランカーのクラマスに認められた瞬間で、この騒動を撮っていた動画は瞬く間に広まったそうだ。
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