第6話 顔合わせ
この日は定食屋の前に来ていた。予約するのも人数とか聞いてなかったから適当に一テーブルで六人予約したのだ。
少し待つとドレッドヘアーに革鎧をきて指輪をジャラジャラつけている人がやって来た。後ろにも四人引き連れている。
「うおーーー! 居たぜ! マセラか!?」
「はい。そうです。あのー昨日名前もお聞きしてなくて……」
「ギャハハハハッ! そうだったそうだった! 俺っちはバカラだ! ちなみに、STR特化。こっちは極一突のクランメンバーだ」
「ワレはシルドである。VIT特化である」
大盾を持って鎧を着込んだ白髪をオーバックにした美丈夫。
「僕はアルト。DEX特化」
ピンクの髪で目が隠れていて小柄な革鎧を来たボクっ娘。
「ワタクシはシルフィです。INT特化ですわ」
杖を持ち、黒いローブを着ている魔法使いのような女の人。シルフィという名の割に深紅の髪の色。
「最後はワイやな? ワイはキンド。LUK特化や。よろしゅう」
シルバーに近い金髪のウェーブパーマ。服装が作業着のようなものを着ている。職業は、恐らく鍛冶師。
「皆さん、マセラっていいます! AGI特化です! 宜しくお願いします! 立ち話もなんですから、中に行きましょう!」
頭を下げて挨拶すると目を見開いたまま固まるバカラさん。
「どうしました?」
「いや、ごめんごめん! なんかまともだったからさ!」
「どんだけイカレてると思ってんですか!?」
「ハハハハッ! いやいや、ごめん。行こうか」
極一突のメンバーを引き連れて定食屋に入っていく。食事をしているプレイヤーも居るようだが、あまり気にしないようにしよう。
「ネムさん、予約受けてくれてありがとうございます!」
「ううん。いいのよ? いっぱい頼んでね?」
「うん! いっぱい頼みますから!」
俺はネムさんに返事をするとなぜかバカラさんが笑いをこらえている。
「マセラ、完全にキャバクラにハマったヤバいやつみたいになってるぞ?」
「俺は、本気なんですよ。運命の人がネムさんなんです。電撃が走ったんですよ」
「ハハハハッ! NPCに恋すると大変だねぇ」
バカラさんが笑いながらシルバさんを見る。
「ワレには想像できない。NPCに恋したということであろう?」
「あー。俺は現地人のネムさんに惚れたんです!」
「なるほど、このゲームが異世界だと思ってる異世界派の人なのだな?」
異世界派と言うということさえ、教えて貰えなきゃ知らなかった。
危なかった。変に受け答えに詰まったら即殺される。
「異世界派……ですか?」
「例えばだけど、ネムちゃんをデータだと思うか?」
バカラさんが俺に問いかける。
目に力があり、嘘は許さないと言った念を感じる。
「俺は、ネムさんはこの世界を生きていると思っています」
「うん。この世界が異世界のようだということだよな? そういう考えのヤツらを異世界派っていうんだ。ちなみに普通にデータだと思っているヤツらをデータ派っつうんだ」
「そうなんですね。そんな派閥みたいになってるんですね」
ここが異世界のようだという考えは拭えない。みんなはどうなのかが気になるところだが、みんなの目は真剣で馬鹿にしている感じはないような気がする。
「まぁ、安心しろ。俺達、極一突はみんな異世界派だ。このゲーム、全部をデータだと言うには少しおかしい気がするんだ。いくら凄いAIを積んでいても、こんなに現地人が自然に話せるだろうか? おかしい気がするんだよな」
バカラさんが自分が感じたことを俺に訴えかける。その考えには俺は賛同したい。同じような考えで、どうもデータとは考えにくいんだよな。
「それで、マセラの目的はゲームクリアなんだろ? 実はみんなそれぞれ訳あってゲームクリアの報酬、願いを叶えるっつうのが目的なんだ」
俺だけじゃなかった。みんなそれぞれ叶えたい願いがあるということなんだな。
「そうなんですね。でも、皆でクリアした場合はどうするんですか?」
「ハハハッ。流石だ。頭が回るな。そうなんだよな。そうなった場合はジャンケンで決めることになってるんだ。一人しか願いを叶えられないからな」
あまり考えたくないけど、そうなって来ると裏切って自分だけ願いを叶えようって言う人が出てくるんじゃないのか? 本当に大丈夫なんだろうか。
「まぁ、そう構えんなよ。コイツらは信用出来る。裏切ったりしねぇよ」
俺が眉間にシワでも寄せていたんだろう。それを見て察したのかバカラさんが大丈夫だというが、まだ信用出来るわけが無い。
「はい。まだ信用出来ないですが、これから信頼関係を築いていきたいと思います」
「あぁ。正直で宜しい。俺達は今天国の入口、第一エリアに居るんだ。そこまで、ソロで来れるか?」
片方の口角をあげて挑戦的な笑みを浮かべるバカラさん。俺の実力を探ろうとしているんだろうか。
「元々ソロで行く気だったんです。そこまでは一人で行きますよ。少し時間をください」
「いいぞ。手伝いが必要な時は呼べ。みんなフレンド登録しておけよ? あっ、キンド付き合ってやれよ」
「了解や。沢山レアドロ出そうやないか」
皆でフレンド登録をし合って、口約束だがとりあえず入団することになった。
そんな中少し怪訝な表情の子が。
「アルトさん、どうしました?」
「僕、不思議なんだけど、ネムちゃんとフレンド登録ホントにしたの?」
「はい! 昨日も予約とってもらいました。それに、もうプロポーズもしています!」
「……れてる」
「えっ!?」
「なんでもない。ネムちゃんはどうなの?」
そのまま看板娘のネムちゃんに問いかける。
ネムちゃんははにかんだ笑顔でこちらを向くとモジモジしだした。
「それが、いきなりだったのでお友達からってお願いしたんです。恥ずかしい!」
あぁ。可愛いなぁネムさん。
「マセラさん。いけるかもね」
凄く冷静な冷めた目でそう言うアルトさん。
アルトさん、その目はなんか痺れる。
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