第5話 求める者

 俺は第一エリアの攻略をした後は一旦ログアウトしたのだ。

 不思議なことにリアルでも腹が減っているんだ。


 適当にカップラーメンを開けてお湯を沸かす。その間が暇だったので、スマホで現天獄の攻略情報を見ることにした。


 なになに?NPCの好感度を上げるとフレンド登録できるらしいだと?知ってるわ。

 やばいテンションの侍が定食屋の娘に迫っててわらったwwってか。誰だそいつは!?今度見つけたらぶちのめす!


 自分のことなのだが、それが分からないほどの天然である。


 情報が多いのは現世エリアの次の天国エリアだ。今は最前線がそこだからどのルートから行くと敵が弱いとか、熾天使が出てこないとかそんな話だ。


 地獄に関してはまだだれも行っていない。

 ただ、行った記録はあるんだ。

 行けない訳では無いから。

 ただ、例外なくデスペナルティを食らっているらしい。


 デスペナルティは死んだ時のペナルティで、所持金は三分の一、三割の確率で装備品が消滅してしまうらしい。恐ろしい。


 ────ピーーーーーーー


「おっ。お湯お湯」


 コンロを止めてカップラーメンにお湯を注ぐ。


「いやーそれにしてもまさかゲームの中に俺の運命の人が居るとはなぁ。そりゃいつまでも結婚できないわけだ」


 結婚できない理由は絶対違うところにあると思うのだが、誰にもそのことを指摘されないまま歳をとってしまったこの男は自分の考えを信じてやまないのだ。


 再びスマホで資金繰りの仕方を調べる。

 一個はギルドに登録して地道に依頼をこなす。

 一個は生産職に転職して作りまくって売りまくる。

 一個は魔物を倒しまくってドロップを売りまくる。

 これが一番現実的かな。


 ───ピピピピッ


 カップラーメンの蓋を開けてラーメンをすすりながらスマホで検索。

 NPCをリアルに連れてくる方法。

 出てきた検索結果は『現実を見ましょう』だった。


 俺は現実を見てしっかり計画してんだ。無計画なヤツらとは違うのよ。そんなヤツらと一緒にするんじゃねぇ。


 なんか攻略情報のところにクランのランキングと情報が出ている。

 チュウメイの入っている白雷の空はトップテンに入っていて、八位だった。

 この順位は人数と攻略状態と武器や防具のレア度等、総合的に判断して計算されるらしい。


 俺とは無縁だな。そう思いながらフラーっとクラン一覧を見ていると目に止まったクランが。


 名を『極一突ごくいっとつ


 なんか尖っててかっこいいなと俺の気持ちは鷲掴みにされた。

 クランの活動内容を見ると『自由』とある。いいな。ますますいい。

 入団条件がある。『何かを求めている者募集中』あれ? 獲得した称号のことじゃん。俺じゃん。


 メッセージを送ってみる。

『ゲームを初めて一日目の侍のマセラです。クラン名が気に入りました。速さを求める者の称号を所有しています。何を隠そう初期のステータスポイントは全てAGIに振りました。目標は定食屋 膳のネムさんをリアルに連れ帰って結婚することです』

 送信っと。


 ────ピロピロピロピロン


 えっ? 通話?


「もしも─────」


『ギャハハハハハッ! 噂の侍って君か!? ホントに宣言したらしいね! 結婚しようって! いやー、いいイカレっぷりだね! 面白いから今度ゲーム内で話そうよ。クランのメンバーも集めておくからさ』


「あ、ありがとうございます。そんなに面白いですかね?」


『いやー、いいイカレっぷりだね。NPCをリアルに……ね。どうやってやるつもりなの? 実際?』


「それはですね、現天獄をクリアしたら、報酬として願いを一つ叶えてくれるって言うじゃないですか!? それにお願いするつもりです!」


『ギャハハハハハハッ! なるほどなるほど! ブッ! いいねぇ! いいねぇ! あれは先着一名だから最速で攻略しなきゃだよ!?』


「AGIに全ブリしたんで大丈夫です!」


『ハハハッ! 潔くていい! 君のことを気に入ったよ。正式に入ることを考えよう。君は、まだ一日目だろう? レベルは?』


「今日第一エリアを攻略してレベルは9です」


『いいね。スキルはとった?』


「まだなにもとってません」


『ますますいいね。実はね、極振りした人達が集まってるクランだから、効果的なスキルの選び方とかを研究されてるんだよ。だから、それを考慮して一緒にスキルを取得しよう』


「ありがとうございます!」


『いやー、実際人材が欲しかったのよ。AGI特化。攻撃とかはどうしてるの? 火力足りないでしょ?』


「今日は攻撃回数でカバーしました」


『なるほどね。イカれてるけど、頭がキレるんだね。いいね。いい逸材を見つけたかも。明日時間ある?』


「あるっす。明日も休みなんで」


『じゃあ、定食屋さんで待ち合わせしよう? あ、予約とか取れんのかな? ネムちゃんとフレンドになったんでしょ?』


「あっ、聞いてみます」


『プッ! できたらマジすげぇわ。楽しみにしてる! じゃ、またね』


「はい! 宜しくお願いします!」


 通話は切れた。めちゃくちゃ笑われたけど、なんか良い人と出会えたかも。明日会うのめちゃくちゃ楽しみ。


 あっ、ネムさんに連絡してみよう。

 連絡してみたところ予約が取れたのであった。

 これは今までの常識を覆す大発見となった。


 あっ、ラーメンがグダグダ。

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