第8話 詐欺

 店長から呼び出しがあった。

「お前、いつも頑張っているな。その努力をかってということだが、これから、もう少し効率的な仕事をしてもらえるかな。これは秘密も大切だが、秘密は守れるか。」

「それはもちろん。どんな仕事ですか?」

「まず、俺が教えるお客さんと付き合え。バーで横に座って、誘うとか、夜歩いているときに、酔っ払っているって近づき、一緒に飲みませんかとか言って、まず、お前が素敵と思わせるんだ。」

「それで」

「そして、半年ぐらい、その人と、夜飲みに行ったり、遊園地に行ったり、友達になれ。そして、時々、結婚とか、してみたいなとか言ってみろ。その間は、毎日、1万ギャラを渡す。」

「それって、すごい。その後、どうするんですか。」

「しばらく経って、その男性は、自分の国に戻ることになったとお前に話すだろう。そしたら、あなた私と結婚するって言ったじゃない、私の青春をどうしてくれるの。あなたの会社に、結婚詐欺って訴えるって、泣きじゃくるんだ。」

「でも、結婚してくれるって言ってないんでしょ。」

「そんなことはどうでもいい。その男性は、会社でそんなことがバレたら困るから、お前が要求したお金は、すんなりと、お前にお金を支払うよ。(おそらく、少なくとも2,000万ギャラはな。)」

「それって、なんか騙してないですか。」

「いや、バレて困ることしてる人が悪いんだよ。お金持ちの人だけ紹介するから、その人にとってはたいした金額じゃないし、むしろ、その人もバレずに済んで嬉しいし、誰も困らないんだよ。」

「そうなのかな。でも、わかりました。やってみます。」

「じゃあ、まず、この人。」


<この世の中は、金、金、金。騙すっていったって、騙し合いなんだからお互いさまだ。騙される方が悪いんだって。この詐欺では、男だって、若い女をお金で買って、いい気分味わっているんだから、悪いとか思わなくていいんだよ。そんなこと言っているから、甘いって軽く見られちゃうんだ。>

<それは、ある程度、人生経験がある人だからわかるんでしょ。まだこの子は無理よ。誰も世話してくれずに、生きることで精一杯なんだから。

 でも、美奈も美奈。悪いことだからやめるとかいう考えないの。捕まらないでね。いつも牢屋の中の風景しか見れなくなったら、私、つまらなくてどうなっちゃうか分からないから。見た目、可愛いのに、なんか、性格はひんまがっちゃったわね。まあ、これまでのこと考えると、仕方がないけど。>


 指示されるまま、美奈は、男性と付き合い、前より、彼女のふりだけなので楽に対応して、結構、儲けることができた。男性は、外国企業が設置したギャガ王国の子会社の社長ばかりで、そこそこお金を持っていて、バレるのもリスクが大きいので、全てお金で解決と、どの案件も円満に解決できた。


「そろそろ、この会社にも借金は十分に返せたし、別れる頃かな。病院の先生には感謝だし、逃げるとお金を返せと言われるとか言っていたけど、もう大丈夫ね。じゃあ、明日にでも、日本大使館に行って、事故のことを話して、ひどい生活をして逃げてきたと言おう。病院にはお世話になったから、その名前は言わないわ。」


 翌日、大使館に行き、いろいろ聞かれた。分からないことも多いが、流暢な日本語を話すことと、もう忘れかけていたけど、東京に暮らしていた頃のこと話したら、なんとか日本人と信じてもらえて、日本に帰国できることになった。

 

 戸籍は分からなかったが、名字は、昔記憶にあり、なんだったか忘れたけど、伊東ということにして、伊東 美奈と説明した。でも、どんな生活が待っているかは分からないが、日本に帰れるのはワクワクしていた。


<やっと、生まれ故郷に帰れれるわね。遅いくらいだけど、おめでとう。私も日本に戻れる。ただ、女の隆は、この世の中に存在していないし、生きるだけで辛いかもね。でも、頑張って。>

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