第2話

 あの時代、村で一番センセーショナルな事件が起こった。

 それが我が家に関することだった。


 ある時、妹が急にいなくなってしまったのだ。

 当時、小学校三年生だったと思う。


 平日の午後。学校から帰る道でいなくなったらしいということだった。

 母親が妹が学校から帰っていないことに気が付いたのは、日が暮れてからだった。

 兄妹が三人もいると、めいめいが何をしているかなんて把握しきれないものだ。

 母親が学校の先生や同級生に電話したが、誰も行き先を知らなかった。


 俺は両親と一緒に妹を探しに外に出かけた。

 父は家の近所を探すことにした。

 家の周辺は畑だったし、周囲に用水路もあった。

 道が暗いから懐中電灯を持っていた。


 母は妹が遊びに行きそうな空き地などを見に行った。

 空き地や空き家はところどころにあった。

 すごく寂れた場所だったからだ。


 俺は学校への通学路を歩きながら、大声で妹の名前を呼んだ。

 正直言って、真面目に探しているというパフォーマンスだった。

 そうしないと親が怒るからだ。

 俺の両親は怖かった。


 平坦な道で両側は畑。道は舗装しておらず、砂利が引いてあった。

 見通しはいいのだが、その作物は腰くらいまで高さがあり、いくらでも犯人が潜んでいられる場所があった。


 きっと性犯罪者に捕まったんだと両親は怒っていたから、そうだという前提で俺も探していた。妹がボロボロの格好で暗がりから出てくる気がしていた。

 しかし、俺は心の中でもっとかわいい子がいるだろうと思っていた。俺だったら、美雪にするな。妹の同級生にアイドルのようにかわいい子がいたから、その子のことを思い浮かべていた。その変質者は、たまたま妹が一人だったからという理由で襲っただけだろう。


 毎日退屈な生活を送っていたから、俺はちょっと嬉しかった。

 まるで、シャーロックホームズよろしく俺は推理を始めた。


 もし、変質者に襲われたんじゃないとすると、妹はランドセルを背負ったままどこかに遊びに行ったのかもしれない。あいつは何かに気を取られると、自分が今何をしてしまうか忘れてしまうような性格だった。転がったボールを追って、道路に飛び出すようなタイプだ。


 きっと何かを見つけて、それを追いかけて行ってしまったんだ。

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