第3話

 外の空気は重く、じっとりと湿っていた。

 空は曇っていて星がなかった。

 季節は七月で、もうすぐ夏休みという時期だった。


 学校への道は木の電柱がいくつかあり、街灯もあったが、とにかく暗かった。

 俺は持っていた懐中電灯で、いろいろな方向を照らして遊んでいた。

 誰か出て来そうで怖かった。


 妹は妖怪にさらわれたんじゃないか。

 そしたら、俺も危ないじゃないか。


 俺はずっと外にいて妹を探し回ったけど、結局見つからなかった。

 多分、妹は見つからないと思っていた。


 見つからなければいいという願望もありつつ、なぜかもう生きて戻ることはないと確信していた。まるで、いなくなった犬や猫が、ほぼ戻ってこないようなものだ。


「栄子ぉぉぉ~!」


 誰かが遠くから叫びながら、懐中電灯を持ってこちらに向かって来た。


 親戚のおじさんだった。

 父から連絡を受けて一緒に探してくれていたようだ。

 俺はちょっとわくわくした。


「まだ、外にいたのか。もう十時だぞ。今度はお前が迷子になるから、家に帰れ」

 俺はやっと家に帰る許可をもらった気がして、堂々と家に帰った。

 父親に何か言われたら、叔父さんが帰れと言ってたと答えればいい。

 足がくたくたで疲れていた。


 外の空気がねっとりと、俺の服に覆われていない部分にまとわりついていた。

 都会では感じられない妖気のようなものだった。

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