行方不明

連喜

第1話

 昭和五十年代。俺がまだ田舎に住んでいた幼い頃は、近所の葬式さえイベントだった。誰が病気になった。あの家のおじさんは脳出血で麻痺が残った。同級生の弟が障碍児だった。〇〇の家には借金がある。誰それが不倫をしている。あの家は離婚した。家庭内暴力がある。息子が家出した、等々。近所の話は村中に筒抜けだった。


 人の不幸を喜ぶ風土が俺の地元にはあった。


 娯楽なんてものはほぼない。テレビのチャンネルは東京ほど多くない。というか、民法は1チャンネルしかなかった。みんなが同じテレビ番組を見ている。雑誌なんかは誰かが町で買って来るか、郵送で取り寄せたものを回し読みしていた。


 こういう地域柄のせいで子どもの数だけは多かった。

 おもな産業は農業と土木などだろうか。


 俺の実家は何をしてたかというと、村で一軒しかない商店をやっていた。父親が町まで仕入れに行くから、俺は人よりもいち早く色々なものを手に入れられた。しかし、商店だけでは食えないから農業もやっていた。うちのスーパーには腐った物が売っているとデマを流されたこともあるし、俺が子どもの頃はずっと〇〇の息子と呼ばれていた。


 俺は三人兄弟で、下に弟と妹がいた。


 どちらも好きじゃなかった。ほとんど遊んだことがない。しかし、性格の悪い者同士で、弟と妹は仲がよかった。


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