第2話 歌舞伎「3人吉座」「ちょっと待っておくんなせぇ。」
テレビ時代劇「木枯らし紋次郎」ではありませんが、「(入り婿ではなく)外部から来た私には一切関係のない話」で、妻にも義理の親父にも何も言われていませんでした。
たまたま、ある日の夕方、我が家の二階の窓を開けてみると、イケイケのお兄ちゃんたちは、1人がパワーショベルに乗り込み、もう1人が金槌のバカでかいのを持って「さーてやるか !」なんて、意気込んでいるところでした。
で、私は大学日本拳法的なる空の心で、無心にこう叫んだのです。
「オーイ、お兄さん方。これからぶち壊すの ?」と。
すると、パワーショベルの運転席にいた金髪小僧が嬉しそうに「ええ !」なんて大きな声で返す。
彼ら解体屋さんは、ぶち壊す・ぶっ潰すことに無上の喜びを感じる習性がついていますから、どんなに内気で・温和しくて・優しい人間であっても、一軒、家屋を解体して「破壊の喜び」を知ると、麻薬のように常習性を帯びてくるらしい。
で、私はアドリブというか、なんであんな言葉が口に出たのかわかりませんが、とっさにこう言ったのです。
「塀はあんたらのものだから壊すのは勝手だ。だが、塀のこちら側に健気(けなげ)に張り付いている何百本もの茗荷(ミョウガ)はウチのもんだ。一本でも傷つけたら、ただじゃおかねえぞ。」 → 今にして思えば、京都大徳寺の「一休さんのとんち話」みたいです。
「ただでは済まされない、というのは、裁判所に訴えるということだ。」
「人の所有物を意図して壊したり傷つければ、立派な犯罪だ。」
「オレは、今こうしてあんたらに警告し、その事実はテープレコーダーに録音している。」といって、たまたま足許に転がっていた、壊れて動かないカセットデッキを持ち上げて見せる(電源コードがないのに、私も気がついていませんでした)。
「こうして事前に警告しておいたにもかかわらず、人の所有物を破壊、若しくは持ち去れば、これは立派な犯罪だ。あんたらも・会社の社長も、そして不動産屋の親父も被告になる」と。
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