第15話 魔物が強化されている!?

「はぁ、はぁ……くそ、一体どうなってんだよ!?」


 三人の戦士が鍾乳洞内を急いで入口に向かい移動していた。


「ローガン、しっかりして!」


「サマンサ、治癒魔法の効果は?」


 スネイルは斧を持ったローガンを肩で担ぎながら移動している。後ろからついてきているサマンサが魔法を唱え続けるも、ローガンの傷は戻らない。


「傷が深すぎて、全快は無理」


「どうなってんだよ、全く! 昨日と言い今日と言い、どうしてあんなヤバい奴が出る!?」


「……は、話が違うぜ。鍾乳洞を突破して、その先の森に自生する、ヤドゥークリ草を採取するだけの簡単な依頼のはずがよ」


「全くよ。何であんなヤバい奴らが……」


「しかも異様に強化されている、本来Bランクの魔物だぞ。あいつらは……」


「待って!」


 サマンサが声を掛けて止まった。


「どうした?」


「奴らよ」


「なに? まさか……」


「しゃあああああああああ!!」


 獣の雄叫びが鍾乳洞内に何度も響き渡る。天井を見上げたスネイル達は絶望した。


「もう追って来たのかよ」


「なんて移動速度なの!」


「くそ、どうする? このままじゃ……」


 天井を這っていた三体の巨大なトカゲの魔物がそのまま地面に降り立ち、スネイル達の逃走経路を塞いだ。


「サマンサ、霧隠れを!」


「もう無理、魔力が……」


「そんな。頼みの綱が……」


「しゃああああああああ!!」


 ジリジリと一体が近づいてきた。スネイルは覚悟を決めた。


「……おめおめと殺されるのを待ちたくはねぇ」


「おい、スネイル!」


 剣を両手で持ち、敢然と身構えた。


「どうせ死ぬなら、もろともだ! でやああああああ!!」


「スネイル、やめてえええええ!」


 向かってきた一体にスネイルが突貫した。力の差を痛いほどわかっていたサマンサとローガンは、ふいに目を閉じた。


「ぎええええええええ!!」


 トカゲの悲痛な鳴き声が響き渡る。サマンサとローガンが目を開けると、信じられないことにトカゲが血を噴き出しながら倒れていた。


「嘘……やったの?」


「うおおお! スネイル、よくやった!」


「……いや、俺じゃねえ」


「ぎぃやあああああ!!」


 二体目のトカゲの鳴き声が響く。今度は左側にいたトカゲが吹き飛ばされた。続いて、右側にいたトカゲも同じく吹き飛ばされる。


「なんだ? 一体どうなってやがる!?」


「……これは?」


 三人が呆然とする中、三体のトカゲは呆気なく倒れた。


 サマンサはふと地面に転がった物体に目がいった。ふと手に取り間近で見ると、豆粒ほどの大きさしかない小石だ。トカゲ特有の緑の血が付着している。


「まさか……この小石で?」


「おい、大丈夫か?」


 通路の奥から男の声が聞こえた。三人とも聞いたことのある声だ。サマンサが最初に気づいた。


「あなた……ゴーイチ!?」



 全くなんという偶然の巡りあわせだろうか。

 鍾乳洞の奥から、誰かの声と魔物の気配がすると思って駆け付けたら、昨日会ったばかりの三人の戦士がいるじゃないか。


「あぁ、おたくらだったのか。いや、その……奇遇だな。こんなところで何してるんだ?」


「…………」


 俺が話しかけても、三人とも固まったままだ。


「おい、大丈夫か? 一体どうした?」


「……あなたが倒したのよね?」


「あぁ、このトカゲどもか。レッサーリザードだから、大して強くないだろ。邪魔して悪かった」


「いや、邪魔なんかじゃねぇよ。あんたは……命の恩人だ!」


 先頭にいたスネイルが大げさにも俺に礼を言ってくれた。たかがレッサーリザードを倒したくらいで、なんでこんなかしこまっている。


「ん? その傷は?」


 俺は後ろにいたローガンの様子がおかしいことに気付いた。なんと血を流している。かなり重傷じゃないか。


「へへ、またあんたに助けられるだなんてな」


「どうしたんだ? 一体何にやられた!?」


 サマンサは俺の質問に答えず、倒れていたトカゲ達を見下ろして俺を見た。


「……冗談だろ?」


「冗談じゃない。本当にこのトカゲ達にやられたのさ」


 彼らが変な冗談を言うとは思えない。信じられないが、このトカゲ達がまさかスネイル達を苦しめるほど、強かったというのか。


「レッサーリザードなのは間違いないわ。私達も最初は油断したから」


「楽に勝てるだろうと思ったら、なぜかこっちの攻撃が全然通用しねぇ。明らかにこいつら、強化されていやがる」


「強化……本当なのか?」

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